第百一話 わかめの料理。
「お、あったあった」
波が押し寄せる岩場の海岸を服を脱いで入っていく。
あの後一度、宿に戻ったのだが昆布が欲しくて探しにきた。乾燥させるのを考えると日が落ちる前に干さないといけないからね。
「アリスー。これ」
「昆布?」
「そ。美味しいダシが取れるんだよね」
単体の出汁だとあんまり好きじゃないんだけど、鰹節と合わせ出汁にした時の素晴らしさときたらすごい。
日本料理の基礎だからね。和食を広めるためにはこれは欠かせない。
「とりあえずてきとうに取ったから今日はこれくらいでいいかな。帰る時にでもまた取りに来ようか」
「ん」
「これなら別に一人でよかったね。アリス待っててもらってもよかったかも」
「気にしない」
「そうか。じゃ戻ろ」
食べ物のことなら行動力がある。ローゼと似てるところだ。
宿に戻ってまずは昆布を軽く洗って紐に吊るして干す。洗濯干しのやつ勝手に借りました。怒られないよね?
「わかめとテングサでなんか作りたいんだけど何があるかな」
「肉」
「それだと肉がメインになっちゃうよ」
「ん……」
出来るだけ魚醤や鰹節を使わないものがいいんだけど……。
「ちゃんとお肉もいれるよ」
落ち込むアリスにフォローをしつつ料理を決めていく。わかめといえばスープに酢の物に若竹煮だ。
若竹煮に鳥肉をいれればアリスも納得するだろう。今回はアリスが食べるわけじゃないんだけど……。
昆布は出汁を取って、ガラを佃煮にすれば良いかな? 別にレシピを教えるわけじゃないんだから大丈夫だよね。こういうものとかたくさん作れますよ! って宣伝するだけだしいけるいける。
「昆布は明日朝やるとしてわかめで作っちゃおうか」
「手伝う」
「特にアリスがやることないんだけどどしよ」
「テングサ……やる?」
「あ、おねがい。そればっかでなんか悪いな」
「暇だから」
素っ気なく言うと井戸の方へと行ってしまう。けど多分あれは尻尾があれば凄い振ってただろう。お肉に期待を寄せてるオーラが見なくてもわかる。
「子供だなぁ」
アリスに言ったら怒るけどやっぱり子供っぽい。
さて、すぐ出来るとはいえパパッと作っちゃいますか。
まずは鍋に貝を入れて火にかけて出汁をとっておく。その間にキュウリを薄く輪切りにして塩で揉んで味を染み込ませるのと同時に水分を出す。
「わかめを葉の部分だけカットしてっと。食べやすいサイズに切り分けて……」
そーいえばよくある乾燥わかめってわかめのどこらへんを食べてるのか気にしたことない人が多そう。茎は茎わかめでお菓子としてよく食べるけど別の種類って思ってそう。
そんなくだらないことを考えながら、先ほど塩もみしたキュウリの水分を絞ってわかめ と、砂糖とレモン汁を混ぜたものを和えて完成。
「普通なら和え物から作ることはないんだけど」
アイテムボックスが便利すぎて入れておけばいつでも出来立てなので水分が出る心配がないのはありがたい。多分アイテムボックスの空間をこんな使い方してるのは善意世界で俺だけだろうな。才能の無駄遣い万歳。
貝の出汁が取れたら若竹煮用に少しよけて、わかめと溶き卵を入れて最後に水溶き片栗粉でとろみをつけて完成。
「おわた」
「おつかれ。早かったね」
「なれた」
そりゃ何回もやれば慣れるよね。
でもまだアリスのお肉は出来てないんだけど、なんかしてもらうことも特にない。
「これでも食べて待ってて」
ローゼ作の煮干しをアリスの手に乗せて若竹煮を作り始める。
筍を大きめにカットして先程の出汁煮る。アクを取ったら魚醤、お酒に砂糖と塩を少し加えてさらに煮込む。
「しまった。これから作るべきだった」
煮込む時間があるからこの間暇になる。
しょうがないのでアリスと一緒に煮干しを齧りながら味が染み込むのを待つ。
「ん」
「どした?」
「ラーメン?」
「ラーメン? あーそう言えばそろそろ作れるんじゃないかな。アリスも食べたいの?」
「お肉たっぷりの」
「チャーシューメンね。帰ったらローゼとかルネさん達と一緒に作ろうか」
あとは麺さえあれば作れるはずだ。麺が問題なんだけど……。灰は用意したからアルカリ性の水を作って? 加水を……まぁ最悪生パスタ麺でいいか。そんなトントンと上手くいくはずがないだろうし、俺以外は美味しいと言うだろう。
「そろそろいいかな」
いい感じに煮詰まってきたらわかめと鳥肉を加えて鰹節を少し。鳥肉に火が入ったら火を止めて完成。
「終わったよ」
「食べれる?」
「少し多めに作ったからね。食べる?」
「ん」
酢の物とスープとお肉入りの若竹煮をアリスに渡す。しっかりと野菜入りです。
「いただきます」
「どうぞ」
酢の物に若竹煮と結構渋いチョイスになってしまった。なのにスープは中華という。アンバランスな献立になってしまった。
「美味しい」
アリスの口にもあったみたい……お肉だけ食べてる。そりゃおいしいよ。
「わかめとかも一緒に食べてみて」
「ん」
言われた通りに筍とわかめを一緒に口に運ぶアリス。お肉とはセットにしないんだ。
「おいしい……」
「アリスが野菜美味しいっていうの珍しいね」
「ユウタは天才」
若竹煮を完食してキュウリの酢の物にフォークを突き出していっぺんに口に運ぶ。あぁ、そんなに一遍に食べたら酸っぱそう。
「酸っぱい」
顔をしかめながら酸っぱそうに食べるアリス。
「でもちょっと甘い?」
「砂糖入ってるからね。そんなに入ってないんだけどそんなに甘い?」
「ちょっと。でもあんまりおいしくないかも」
「本当? ちょっとちょうだい」
アリスから少し貰って食べてみる。レモン汁で作ったからか少し味が変な気もする。美味しくないってほどじゃない気もするけど……。
「ちょっとスープでも飲んで待ってて」
もう一度キュウリを切ってわかめと和えて今度は酢を入れてみる。こっちならどうだろうか。
「はいアリス。こっち食べてみて」
「何が違う?」
「酸っぱさが違うかな?」
上手く説明ができないけど……。レモンからとるか穀物から作るかの違いなんだけど、よくわからない。家に戻れば本に書いてそうだけど。
「こっちのが美味しい」
「ならこっちにしようか」
レモン汁じゃだめだったか。そーいえばこっちのお酢は何から作っているんだろうか? というか地球の穀物酢の穀物ってなんなんだろう。米酢があるくらいだから米じゃないとは思うけど……。
「スープはいつもの」
「まぁ大差ないよね。スープは」
だいたいこんなもんだろう。後は明日昆布をちょちょいとやってしまえばひとまずは大丈夫かな。





