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第百話 逮捕〜。


「ここで大人しくしてろ」


 石を削って造られた冷たい牢に案内されて、アリスと一緒に中に入る。

 中に入ると鍵を掛けられた。


「困った」


「ん」


「この世界の罰って何? 罰金? 体罰?」


「知らない」


「痛いのはヤダなぁ」


 かといってお金取られるのも困る。お金がなくなると作れる物も作れなくなってしまう。


「紙」


「紙?」


「ん」


 紙で何か請求されるのだろうか? 異世界物の小説とかだとどうなってたっけ……?

 大抵悪者をこちらに送る側で、捕まってる人なんて見たことない。使えないな。


「貰ったやつ」


「あー、あの紙か」


「ん」


「でも面倒なことになるじゃん」


「既に?」


 確かにこんなところにいるだけでもう手遅れなんだけどね。あーローゼ来てくれないかな。


「いつまでもここにいても仕方ないか。早く残りの海藻も集めないといけない」


「紙」


「そだね。せっかく貰ったし使わないのも悪いか」


 それっぽい言い訳をつけて自分を騙す。やることはまだまだたくさんあるんだ、許してくれ。

 誰に許しを乞ってるのか謎だけど。


「あのーすいません」


「なんだ?」


 見張り役ぽい人に話しかけて偉い人呼び出す。


「ここの偉い人って誰でしょうか。呼んでもらえませんか?」


「隊長は忙しい。お前らなんかに構ってる暇なんて……」


 そこまで言って彼は俺たちが入ってきた通路の方を見て一瞬黙った。

 なんだ? なんかあったのかな。こちらからは壁でよく見ることができない。


「よかったな。何の用か知らんが、その隊長がお見えになったぞ」


 なるほど凄いいいタイミングだ。異世界御都合主義万歳だ。


「お疲れ様です!」


「あぁ、楽にしろ」


「はっ」


 騎士のよくある先輩! みたいなやりとりだ。これも異世界、というよりかは中世ヨーロッパぽい。


「おまえが砂浜で食べ物を配っていたという奴か?」


「え、あはい」


「この国じゃ一応あんなのでも一言言ってくれんとダメな決まりになってるんだ。まぁ、かといっていちいち対応してたらきりがない。こちらも忙しいんでな」


「はぁ」


 お役所仕事は大変ということだろう。多分。これは見逃してくれる奴か?

 アリスは相変わらず俺の後ろに隠れて人見知りを発動している。

 子供達を呼ぶ時とかみんなで食べる時とかなんともないのに、アリスの中の基準はどうなってるんだろうか……。


「というわけでだ。この国の人ではないみたいだし、軽い罰金だけで済ませようと思うんだが?」


「おいくらでしょうか?」


「ざっと金貨5枚程度だな」


 金貨5枚!? いくらなんでもさすがに高すぎる。そんなの払ったら当分は水を飲んで生活しないといけなくなってしまう。


「……結構かかりますね」


「申し訳ないが決まりなんだ」


 こういうので収益を取れば税収を増やさずに賄えるのか。ニズリさんのところとはこういうところが違う。

 まぁ、納める規模が大きい分、そこらへんの決め事はしっかりとしないといけないんだろう。

 とはいえ金貨5枚は払えるといっても出来れば回避しておきたい。


「あの」


「なんだ?」


 払うのが嫌と駄々をこねると思われたのか少し面倒そうな声が返ってくる。


「これでなんとかなったりしませんかね」


 ポケットに手を突っ込み、そこから出したかのようにアイテムボックスから以前貰った紙を取り出して、渡す。


「紙か?」


 受け取った紙をなんの紙かと舐るように見た後に、目を見開き叫ぶ。


「おい! 今すぐ出して差し上げろ!」


「え? はい……!」


 訳がわからない顔をした兵士が急いで牢の鍵を開ける。

 なにやら紙の効力は絶大のようだ。こんな場面で使うものじゃなかったのか? かといって金貨5枚は少し高すぎる。必要経費必要経費。


「申し訳ございません。我が領主様から直々に許可を頂いていたとは……」


「それでなんとかなりますかね」


「はい。むしろこちらの確認不足ですなんとお詫びしたらよいか……」


「あー大丈夫ですよ。それが仕事ですし、そういうこともあります」


 払わなくて良くなったのと早くここから去りたい気持ちで、てきとうに受け答えをする。


「そう言っていただけるとありがたいです」


「それじゃ、俺らはこの辺で……」


「えぇ、本当に申し訳ありませんでした。こちらお返しします」


 紙を受け取り、一礼してこの場を後にする。凄い忠実な騎士って感じがする。ああいうキャラって乗っ取られるタイプだよねー。かませ犬的な。


「初体験」


「ん? 捕まるのが?」


「ん」


「そりゃ普通に生きてたら捕まらないでしょ? 俺も初めてだよ」


 そう何度もこんなことあってはたまったもんじゃない。捕まるのは悪党だけで十分です。

 まぁ、1回くらいはいい体験になったかも。あっちで刑務所は記念ですら嫌だけど……。


「こっちだと観光に来て昔使われてた刑務所に入った感じがする」


「ん?」


「こっちの話」


「?」


 たまにこう言う小言が伝わらないのがちょっと寂しい。


「さて、自由になったけどどうしようか」


「帰る?」


「んー。そーだなぁ、今から戻ってももう誰もいないだろうしなぁ」


 そーいや子供達はちゃんと帰れたのかな。


「そーいえばここに来たら挨拶に行くって言っちゃったんだ。社交辞令だったけど、この世界は社交辞令って存在するのか……?」


 機会があれば是非。

 社会でよく聞くセリフ。いや学生だけど……。行けたら行くわ〜! の方がそれっぽいかな。魔法の言葉だけどこれは相手も分かってるから成立する暗黙の了解だし……。


「ねぇ、アリス」


「ん」


「行くねって言われて来なかったら怒る?」


「んー?」


 人差し指を頰に当て首を傾げながら考えるアリス。いや、そんなに悩むような質問じゃないんだけど……。

 指で盛り上がった頰が凄く柔らかそう。こっちの人ってみんな肌が綺麗だよね。荒れてないというか。化粧とかするのかな?


「食べれないと怒る?」


「うん。アリスは食べ物以外どうでもいいもんね」


「む、そんなことない」


「食べること以外に何が好きなの?」


 アリスはまた考えるように唸って答えを絞り出す。


「……水浴み?」


「なるほど確かに食べ物以外だ」


「ん」


 得意げな顔をするアリスの頭を撫でながら今後の予定を考える。

 ここにいる間にやらないといけないことは。


「こんぶとか採るのと、牡蠣っぽい物を探すのと烏賊。後はできれば海藻の養殖させたい……」


 となると結局は寄らなければならないんだよね。養殖をニズリさんに頼むわけにもいかない。

 挨拶しないのもローゼ達的にもよろしくなさそうだしね。屋敷で言っちゃった事だし。


「じゃ明日ちょっと謁見してみる?」


「ん」


「それじゃちょっと準備しないといけないから一旦帰ろうか」


 養殖をしてもらえるように価値を証明しないといけないから何か作って持っていかないといけない。何を作ろうかな。



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