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第九十九話 海といえばBBQ2。


「ん? なんだあれ」


 美味しそうに串を食べている青年が砂浜の奥の方から歩いてくる集団を見つけて声を上げた。


「やっときたかな?」


 スープは半分近く残っているが、串の方はもう無くなりそうだ。ここでまた作らないといけなくなりそうだ。

 目立つからあんまりやりたくないんだけどなぁ。蛇の切り身が大きいせいでどうしても見世物になってしまうし。

 もう十分目立ってるのはさておき、ね。

 その方向へ目を凝らすと、それに気づいたのかアリスがいつも通りの顔で軽く手をあげ、小さく揺らす。


「珍しいこと」


 あの様子だとみんな連れてこれたのかな? ご飯抜きが免れて安堵してるのかもしれない。


「おまたせ」


「お疲れ様。ちゃんとみんな連れてこれた?」


「多分」


「多分じゃご飯抜きだな」


「じゃ、これた」


 現金な奴。


「どする」


「連れてきてなんだけど、勝手に食べて勝手にだらだらしてもらおう」


 未だに状況がわかってないような感じの子供達。まぁ、アリスがちゃんと喋って説明するとは思えないし、どうやって連れてきたのやら。


「こんにちわー。いきなり呼び出してごめんね。沢山あるから気にせず食べていってね」


 スープをよそってみんなに配る。


「アリスだとは任せた」


「ん」


 とりあえず暇人の偽善は終わりだ。

 後はあの子達が来てからなんか気まずくなったこの空気を感とかしないと。

 なんかあるのかね。まぁ、あんなところにいるくらいだしよくは思われてないんだろうが……。


「串ない」


 アリスが悲しそうに服の裾を引っ張りながら呟く。どうやら自分が食べる前に無くなってしまったみたいだ。


「今から切るしかないかな」


「切る」


 手を伸ばして何やら要求するアリス。これから作るからまだないって。


「包丁」


 あぁ、なるほどアリスがやるってことか。そんなに早く食べたいのかな。まぁ楽だからありがたいけど。


「はい。周り気をつけてね」


 いつもの中華包丁を渡してお肉を取り出す。これもうどっから出したとかの問題じゃなく不自然だよね……。


「え?」


「どっから出したんだ」


「おおきー!」


 みんな大きな蛇の切り身を見て、驚く。そりゃそうなる。


「じゃ、パパッとよろしく」


「ん」


 アリスの身体よりも大きいそれを目で追えない速度で包丁を振り回して、軽々とお肉を串用のサイズにカットしていく。

 驚く人達を横目に次々とお肉を串に刺していく。


「疲れた」


「おつかれさん」


 完成した串から順に焼き始める。


「早く」


「焼けるまでスープでも飲んでて」


 最後の串を作り終わる頃には、きちんとみんなに行き渡ってアリスが両手に串を持ち、美味しそうに頬張っていた。

 たまにはみんなでわいわいするのもいいものだ。ローゼだけじゃなくてアリスやキースさんとかが遊びに来るようになって、ひとりの時間の方が無くなったけど知らない人とこういうのも悪くない。


「スープあんなにあったのにもうなくなりそうじゃん」


「野菜抜き」


「アリスもしかして野菜抜いてないだろうな?」


「……ん」


 その反応は野菜を除きながらよそっていたみたいだ。どうりで少し具が多いと思った。


「嘘つく子はお肉1週間抜きです」


「それはずるい」


「健康は大事だからね」


「むぅ」


 アリスは渋々といった感じに残り少なくなってきたスープを、きちんと野菜も一緒によそい大蛇の串と一緒に口へ運ぶ。

 ちゃんと食べれるなら毎回食べればいいのに。そんなにお肉がいいのか? 今度嫌という程お肉祭りでもしてみようかな。それでアリスが懲りるとは限らんが。

 少なくなったスープを小さな鍋に移し替え、食後のデザートでもどうしようかと考えていると街の方から人が歩いてくるのが目に入る。


「足りる?」


 それを見て料理の量を心配するアリス。アリスのことだから自分の食べる分が減るって意味な気もするけど。


「なんかそんな感じじゃない雰囲気だけど」


「?」


 小さな口にこれでもかとお肉を詰め込みながら、不思議そうに首をかしげる。

 彼らがさぼりにきたのならいいけどね。

 こちらに向かって歩いてくる鎧を被った数人の男達。

 目の前で止まると、冷たい声で話しかけてくる。


「許可証は?」


「なんのですか?」


 営業してるわけじゃないから流石に大丈夫だろうと思っていたけどそうじゃないのかな。これはもしかしてめんどくさいやつ?


「出店の許可証です」


「ないですよ。別に売ってるわけじゃないので……」


「お金を取らずに配ってると?」


「はい。もしかしてダメでしたか?」


 あぁ、こんな時にローゼが欲しい。ほらこういう時にくると許されるんだよ? いや、なんかくる前提で言ってるけど……。アリス曰く、来そうらしいし。


「旅のものか。こういうのは厳しくてな、悪いが一緒に来てもらおうか」


 まじで? みんな気にせず集まってたのに。

 物を片付けながら鎧を眺めながらここで揉めても面倒だと大人しく従うことにする。


「わかりました。ちょっと待ってください」


 片付けを終わらせると不安そうに見ている人達に向かって一言告げる。


「すいませんデザートは今回なしみたいです。ありがとうございました」


 そして黙って鎧を着た衛兵らしき人たち囲まれながら歩いて行く。

 隣で小さな声でアリスが『倒す?』と物騒なことを言っていたので頭を撫でて制す。余計に面倒にしようとするんじゃありません。

 世の中うまくいかないもんだな。これに関しては何も考えないで動いた自分が悪いけどね。


「どしましょ」


 聞こえない声で小さにそう呟いた。



自分から平和を捨ててる気がするのです?

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