この戦争について
さて、話を続ける前にこの戦争について確認しておきたい。
俺が思うに、おそらくこの戦争はニ国間の領土紛争である。いつかは国境線を定めて安定化させ、なんなら国交すら再開できるようにしたかった筈である。
少なくとも俺が学んだ歴史からはそう見える。
しかしあまりに長く戦争が続き、報復の報復が目的化し、イデオロギーや宗教観の差異が糾弾され、相手を悪魔と呼ぶようまでになってしまうと、もう、どちらかが滅びるまで終わりようがないように思うのだ。
そもそも、この戦争が何のための戦争なのか、誰が始めて、どうなれば勝利条件を満たすのか、もう国民は誰も興味を持ってすらいないだろう。
というのも、数十年前までは人と人が戦い、血を流し、戦士は敵とはいえ人を殺した苦しみを抱え、親は子を亡くした悲しみがあった。戦争がまだ戦争であった。
それがどうなったか。
今では魔獣たちが人の代わりに戦い、人間の犠牲者はもう何年も出ていない。
そもそも犠牲者の出ない戦争を戦争と呼ぶに相応しいのか。人類はまだその答えを見つけ出してはいない。
あるのは、無駄に広大な緩衝地帯としての戦地と、ずっとのし掛かり続けていく戦費負担だけだ。
これが俺が暮らすこの世界の現在の状況である。
さて、俺のような「灯台守」は奪取した土地に住んで占領を成立させることが仕事だ。
ただ補給を受けながら拠点に座し、そこをずっと維持するのが任務だ。
そこに「国民」がいるのだから、そこは我が領土なのだ、という理屈を成立させるためだけの存在だ。
そこに居るだけ。これで中々の兵士報酬を得ることができる。
その暮らしぶりが絶海の孤島で灯台を点検保守して暮らす灯台守と似ていたので、いつからかこの仕事は「灯台守」と呼ばれるようになったのだ。
ところで、昨今俺は「戦争魔獣師」とか呼ばれている。何故か。
通常、灯台守に課されるミッションは後方から送られてくる魔獣の種苗を孵化させ、前線に送り出すというものだ。
特に教育は必要ない。彼らは疑問を持たず前線に赴き、同種と合流して戦い、雑草や昆虫を食いながらその地に根を下ろす。その場を守り続ける。少しながら繁殖もする。
だが、それらを遂行するだけでは他の灯台守と一緒だ。魔獣師とは呼ばれない。
ではなぜ俺が魔獣師と呼ばれるようになったか。これからその話をしていこう。
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