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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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後始末は迅速に……!

いつも応援ありがとうございます!

プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。

でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و

少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

 





 ──ヴァリエール領、田舎道の馬車留場で。



 前の馬車の警護しながら、荷馬車の上でのんびりと待機組の三人は、穏やかな風に身を任せて、あくびを噛み殺し待機していました。


 日が傾き始めた頃、馬車の扉が開きヴィクトールとマルクスが外へ降り立ちます。


「……レオンたちは楽しんでいるようだな」


「ですね。……何ごともなけりゃいいんですが」


「……お、 おまえは!」


 ヴィクトールが襟を掴みマルクスを威嚇しますが、目を逸らしどこか引き攣り気味です。


 その時前方からトコトコと駆けてくるレオンの姿と、その後ろをのんびりとついて来るアルベルトとニコの姿がありました。

 そのままヴィクトールに抱きつき、「とうさま! ボク、おともだちできた!」とレオンから嬉しい報告をされます。

 それを聞いたヴィクトールは我がことのように喜び、レオンを抱き上げて「よかったな、レオン!」と笑い合いました。


「父上、お待たせして申し訳ありません」


 アルベルトと少し後ろに下がったニコが頭を下げます。


「アハハ、楽しめたなら良い! それより話が聞きたい。レオン、何をしたんだ?」


 ヴィクトールがレオンを抱いたまま馬車へと戻ろうとすると、マルクスが「……後の三人は?」と尋ねました。


 ニコが領民からお土産を頂いた話をすると、アルベルトは子どもたちから貰った『落ち毛』の三袋を荷馬車に乗せ、『トウモロコシ』を持ってテオたちが遅れて来ることを伝えます。


 待機組の三人は通り過ぎる馬車から、アルベルトとレオンの楽しげな笑い声を聞きました。

 ヴィクトール達の乗った馬車はそのままのんびりと先へ進んでいきます。


「……レオン様たち、楽しんだようだな」


「お帰りってところか。じゃあ、俺たちもそろそろだな」


 待機組の三人が荷馬車を動かそうとすると、道の向こうから、別の馬車がガタゴトと重たげな音を立てて近づいてきました。


 ──そして乗っていたのは。


「おっ、お帰……り……って、うわっ!?」


 戻ってきた三人を出迎えた瞬間、待機組の一人が声を裏返らせます。


 祭り組の三人は淡々と、重いトウモロコシの麻袋を馬車から下ろしました。

 その足取りは鉛のように重く、表情は鬼よりも険しいものです。


「んじゃ、気をつけて帰りなよ。兄さん達! いや、今日は本当に楽しかった! ありがとう!」


 そんな三人に気負いなく握手をする領民は、のほほんと馬車を操り戻っていきます。


 そこに残されていたのは、お祭り帰りの楽しげな気配などこれっぽちもなく、まるで「敵国の精鋭部隊と泥沼の消耗戦を繰り広げてきた」かのような、凄まじい気を放つ男たちでした。

 ジャックの服には何故か羊の毛とニワトリの羽がびっしりと張り付いています。

 ガウリは魂が口から抜け出したような顔で、フラフラと歩いていました。


 そして何より異常だったのは、テオです。


 いつもなら冷ややかに目を光らせ、感情を完璧にコントロールしているはずの男が、今は髪を乱し、見たこともないほどのドス黒いオーラを全身から発しています。


「畑の再編……本店への連絡……買い取り予算の捻出……王都への流通網……フタ、フタ、フタ……」


 彼は呪詛のようにブツブツと呟き、完全に精神が臨界点を突破していました。

 余りの恐ろしさに待機組の二人は、素早くトウモロコシの入った麻袋10袋分を、荷馬車にバタバタと投げ入れます。


「おい、おいおい……一体何があったんだよ?」


 馬の手綱を握る男が引き攣った顔で、作業を終了した仲間に小声で尋ねました。


「ハァ……、わかんねぇよ。……ただあのテオの身にまとってる覇気、暗殺ギルドのトップだった頃よりヤバいぞ。下手に話しかけたら消されるかもしれない」

 

 祭り組の三人が乗り込んだ後、荷馬車はガタガタと出発します。

 荷台の上では静かな沈黙が落ちていました。

 しかし荷台にいる待機組の一人が耐えかねて、恐る恐る尋ねてみるのです。


「……なぁ、ジャックさん。本当、何があったんだ? 敵襲でもあったのか?」


 ジャックはギロリと血走った目で、荷馬車に積まれた例の麻袋を睨みつけ、地を這うような低い声で答えます。


「……襲撃なんて生易しいもんじゃねぇ。お前ら、明日から泥石鹸の他に、トウモロコシを『ポンポン』爆発させる仕事が増えるからな。……覚悟しておけ」


「は? ポン……え?」


 待機組が首を傾げたその瞬間、横からテオが、爛々と輝く目でグイッと詰め寄ってきました。そこには完全にイった目で、笑っていない笑顔が貼り付けられていました。


「驚くことはありませんよ、皆さん。レオン様が『ポンポン』と仰ったら、我々に拒否権など最初から存在しません。明日からは全員、一粒の無駄もなくトウモロコシを粒と芯に分離し、最高効率で弾けさせる『地獄のポップコーン兵団』になってもらいます。……ふふ、楽しい楽しい新事業の始まりです。ねぇ、ガウリさん?」


「ひぃっ! 頼むから俺を巻き込むな、俺はもういろいろと限界なんだよぉ!」


 ガウリの悲鳴が、静かな田舎道に木霊します。


 何も知らない待機組の三人は、ただただ冷や汗を流しながら、「まだ闇の世界にいた頃の方が、遥かに平穏な日々だったのではないか……」と、これから始まる「だるま式に増える仕事」への恐怖に、ガタガタと震え始めるのでした。





 ──その夜。



 コンコン……、カチャッ!


「……失礼します。旦那様、先程テオ殿より、報告書が届いておりますが、如何なさいますか?」


 セバスが困惑を隠しきれない声でそう切り出します。

 テオのあまりにも荒んだ様子に、何があったのかと気になるようです。


「……報告書?泥石鹸の件か?」


 しかし荒む理由のわからないヴィクトールは、敢えて泥石鹸から離したのに、また帰って修行し荒んだのかと心配しました。

 急ぎ報告書を受け取り詳細を確認すると、……そこに記されていたのは、泥石鹸とは全く別の内容でした。


 彼らの帰還が遅かった理由は、やはりレオンの『やらかし』が原因であり、荒んだ原因でもあったのです。


「……ア、アルベルトオォォォォ!!」


 頼りになると思っていたアルベルト(嫡男)からの報告は、未だ届いていません。


 ──そして翌日。


 追い討ちをかけるように、領民たちから大量のトウモロコシが届けられました。


 ――それも、次から次へと際限なく……。


  「旦那様、テオ殿から伝言がございました。『木漏れ日商会』のシオン殿にも、同様の報告書を送付済みとのことです」


「……そ、そうか。ならシオンにも共有されているのだな。テオには感謝しておかねば……後ほど、差し入れでも渡してやってくれ」


「差し入れなら、既に渡しております。今は何よりも休息が必要でしょうから、今日は休むよう伝えておきました」


 目の前にうず高く積み上がる、トウモロコシ入りの麻袋の山に、ヴィクトールは言葉を失い、ただ遠い目をして現実逃避を試みます。

 セバスもまた、こめかみに手を当て、深々と溜息をつきました。


 思い描いた平穏とは程遠く、すべてが混迷の渦中で停滞し、解決策ではなく「課題」だけが、まるでトウモロコシの入った麻袋のように、次々と積み上がっていくのです。


 ──ちなみにテオの報告書には。


 報告者:ヴァリエール領 テオ


 件名:領内での「ポンポン」事案に伴う損害報告および今後の対策について


 本報告書をもって、ヴァリエール領における我が「木漏れ日商会」の業務範囲の拡大(という名の業務強制追加)を報告する。


 結論から述べれば、レオン様による「ポンポン」と称された事案において、領内の一部が甚大な物的・精神的被害を被った。

 詳細な経緯は割愛するが、端的に言えば「乾燥トウモロコシを閉鎖空間で過熱した際の爆発反応」である。


 本件による被害概要は以下の通り。



 領内インフラ: 祭り会場の竈および調理器具の全損。家畜のパニックによる牧柵の損壊。


 風評: 現地の子供たちおよび領民による「ポンポン」への異常な熱狂。


 資産状況: 領内の経年の備蓄管理していたトウモロコシが、レオン様の一言により「破棄される戦略物資」から「嗜好品」へと変貌。

 結果、流通網の再構築を余儀なくされる。



 本部には、これより「ポンポン兵団(※現地民および一部メンバーによる揶揄であり、公式名称ではない)」と称される過酷な業務形態が常態化することを通達する。


 これ以上のレオン様による「やらかし」を隠蔽するためには、もはや小規模な工作では不十分である。トウモロコシの供給量調整を行い、「ポンポン(※小さな粒が白い花に変わり、サクサクとした食感を持つ。塩や味付けによる嗜好品)」を王都の市場へ合法的に流出させ、事態を経済活動として処理せざるを得ない。


 隠蔽工作の規模が大きくなりすぎている。

 これに伴う追加人員と、精神的ケアのための休暇、および「石鹸」の材料調達予算の増額を強く求める。


 ……追伸。


 ガウリが家畜の暴走でまた負傷した件、労災として処理できるか検討されたし。


 重ねて言うが、我々は「兵団」ではない。

 一介の配合員予定者である。


 以上。







読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しくネタになることも♪

誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)

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テオの報告書、領地名のヴァルエール (作者の)誤字? テオの(動揺による)誤字?
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