ポンポンバニック
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
黄金の雨が降り注ぐ中、家畜たちがその香ばしい匂いに理性をかなぐり捨てたのです。
「メェェェェェッ!!」
柵を突き破り、毛を逆立てた羊の群れが突進し、「ヒヒィィィィンッ!」と高らかな嘶きとともに、繋ぎ縄を引きちぎった馬が暴走します。
「コッコッコッ! ピーーッ!!」
空からは庭の異変を嗅ぎつけた野鳥たちまでが舞い降りて、バサバサと激しい羽音が頭上を覆いました。ポップコーンを巡ってニワトリと野鳥が激しい小競り合いを繰り広げます。
「カオスだ……! この世の終わりだ!?」
テオは降り注ぐポップコーンを受け流しながら、必死の形相で叫びます。
「ガウリ! 馬がパニックだ! 抑えろ!このままだと、周りの人が踏み潰されるッ!」
「やってられるかッ! 俺の鼻が疼いて、次は馬に蹴られる未来が見えるぞッ!」
アルベルトはその状況を呆然と眺めながら、全身に降り積もったポップコーンを一つ手にとり、口に放り込むと──。
「……む。案外、美味いな」
「「「今は感想を言ってる場合かァァァッ!!」」」
派遣組の男たちのツッコミが悲痛に空を切る中、お祭り会場の空気は一変します。
それを見ていたトトたちが、大興奮で押し寄せて来ると──……。
「うおおお! なんだこれ、めちゃくちゃ美味い!」
「それより見たか!? さっきの『ドオン』ってやつ! すげえ面白そう!」
「おい、あっちの空き鍋持ってこい! 俺たちもドオンやるぞッ!!」
わんぱく少年のトトを筆頭に、男子たち好奇心に火がつきました。
キャッキャッ喜ぶレオンが「火にかけるだけ!」と叫ぶと、男の子たちはあちこちで即席の火床を作り始めます。
――ドゴォォォォンッ!!
「うわあああ! 出たーーーっ!!」
――パラパラパラ、ドォォォンッ!!
「ひゃっほう! 俺の鍋の方が高く飛んだぞ!!」
会場のあちこちで、男の子たちの「蓋なしドオン」が開催されました。
ざわざわと困惑が広がる中、空からフワリと降ってきた真っ白な塊を、キャッチし――思い切って口に放り込む大人たち。
「……! ウソッ…、美味しーーいっ!!」
その歓声で、お祭り会場の引き金は完全に引かれました。
「本当だ! サクサクしてて美味いぞ!」
「これ、酒のつまみに最高じゃないか! おい、誰か麦酒を持ってこい!」
と大喜びで拾い集めるおっちゃんがいれば、
「ちょっとあんた! 羊に負けないで綺麗なやつを拾いなさいよ!」
家畜の群れに割り込んで我が子のためにポップコーンを死守するお母ちゃん。
お祭り会場はポップコーンを貪る家畜と、それを必死に抑える派遣組、そして「美味い!美味い!」と拾い集める領民たちが入り乱れる、文字通りの『大収穫祭』と化していきました。
レオンもトトト……とあちこち駆け回り、「わっしょい!わっしょい!」と掛け声をあげます。
トトたちも「ポンポン!わっしょい!」と叫びながら「ドゴォォンッ!!」とするので、掃除道具を手に、羊の頭を小突き追い払っているジャックは、もはや戦場に立つ兵士よりも必死です。
「……なぁテオ」
どうにか騒ぎを収めようと奮闘するも、あちこちで噴火が起きます。
「はい……なんでしょう、ジャックさん」
溜息をついて、気絶したニコを回収してホッとするテオ。
「俺たちの主は……お祭りを楽しく盛り上げているのか、それともヴァリエール領に新たな爆弾魔の軍団を育成しているのか、どっちだと思う?」
無駄なことを質問するジャックに一瞥をして、「……考えたくありません。今はただ、これ以上被害が広がらないことを祈りましょう」と答えました。
そんな二人のやり取り見たガウリも、鼻筋を押さえながら、深くため息をつくのです。
その間レオンは、「わあぁ! ポンポン、あっちこっちでいっぱい!」と全力で万歳し、トトたちと一緒になって「ドオン!」「ワーワー!」と狂乱の祭典を繰り広げています。
「……ねぇ」
そんなレオンの袖を、ちょんちょんと引っ張り、腰に手を当てて、少しあきれたようにレオンを見つめているのは、先程話したおませな女の子リリです。
「……ねぇ、それを爆発させない方法はないの?」
「ふぇ?」
レオンが首を傾げると、リリはフッ、と深いため息をついて、目の前で「次こそギガドオンだ!」と、鍋を火にかけているトトたちを冷ややかな目で指さしました。
「だって!あいつらバカだし、調子に乗って毎回あんな大爆発させたら、お家が火事になっちゃうじゃない。みんなワーワー騒いでるけど、普通に、静かに食べる方法を教えてよ」
「……あっ!」とレオンは手を叩き──。
「フタをするの! お鍋でポンポンだけよ。ドオンはしないの」
「なるほど、フタね」
リリは納得したように頷くと、くるりと振り返って男子たちを一喝します。
「あんたたち! 鍋にフタをしなさい! すれば安全よ! お母さんたちにフタを借りてきなさい!」
「えーっ!? フタをしたらドオンってならないじゃん! つまんねえ!」
「うるさいわね! 食べ物が勿体ないでしょ! 拾う身にもなりなさいよ!」
リリの圧倒的な正論(と物理的な威圧)により、お祭り会場の「連続大爆破事件」は一瞬で「安全なお菓子教室」へとシフトしました。
あちこちの屋台で領民たちが「蓋」をして、パチパチと楽しげな音を響かせ始めます。
子どもからお年寄りまで気軽に作れて、ポップコーンはまたたく間にお祭りの大好評メニューとなったのです。
日がだいぶ傾いた頃アルベルトは、介護されていたニコを連れて、レオンと合流しました。
──そろそろ帰宅の時間です。
「レオン様、ありがとー!楽しかった!」
「これ、お礼だよ! 綺麗な落ち毛、たくさん集めておいたから!」
トトやリリをはじめ、子どもたちがレオンのために、かき集めてくれた山盛りの「落ち毛」を貰い、レオンは満面の笑みを浮かべます。
すっかりお祭り会場が落ちつくと、子どもたちは家に帰る時間になってしまいました。
トトは名残惜しそうに、でも少しだけ照れくさそうにレオンの前に歩み寄ります。
「なあ、レオン。お前、貴族様なのに一緒に遊べて……その、すげえ面白かったぞ!」
「うん! ボクも、すっごく楽しかった!」
レオンも大喜びで返すと、トトは鼻の下を指でこすりながら力強く笑いました。
「また遊んでくれるか? 今度は俺たちの秘密基地を案内してやるよ!」
「秘密基地!? 行きたい!」
レオンが目を輝かせると、横からリリがトンとトトを小突います。
「ちょっとトト、レオン様を危ないところに連れて行かないでよね。――でも、レオン様。今度遊ぶ時は、静かなおやつの作り方も教えてね。あと絶対、また遊びましょうね♪」
「うん! 約束! またみんなで遊ぼうね!」
「「「「「うん、絶対約束だ!」」」」」
レオンは小さな小指を立てて、トトやリリ、集まった子どもたち一人ひとりと嬉しそうに「ゆびきり」をしていきました。
「じゃあな、レオン様! またなー!」
「ポンポン、ありがとー!」
大きく手を振りながら去っていく地元の子どもたちの背中を、レオンはいつまでも見送ります。
そして今までずっと傍にいたガウも、レオンに「ウォン」と別れを告げ、トトたちの方へと駆けて行きました。
その光景を優しく見守っていたニコはフッと顔を綻ばせ、アルベルトは微かに残ったポップコーンを払って、ふわふわなレオンの頭を優しく撫でます。
「よかったな、レオン。たくさんの仲のいいや友達ができて!さあ、みんながくれたこの『落ち毛』と『トウモロコシ』を持って帰ろうか!」
「うん、 にぃちゃ!ボク、とっても楽しかった♪」
お祭りの熱気と、新しくできた友達との約束を胸に、また明日から『たんけん』をするのです。
そして後ろからトボトボと派遣組の男たちは、顔を歪め涙が出るのを堪えています。
「……俺たち、明日から領地中のトウモロコシを『ポンポン』する仕事も加わるのか? とにかく、レオン様が仕事をだるま式に増やしていくということだけはわかったぞ……」
ジャックは青ざめ、ガウリは逃げ道を確保しようと周囲を見回しますが、テオがその肩をガシッと力強く掴みました。
「……逃げは不可能です。貴方だけ助かろうなんて、許せるわけがないでしょう。レオン様が『ポンポン』と言ったら、最高の『ポンポン』を披露するのです。……さあ、一緒に地獄へ堕ちましょうね」
テオはいろいろあり過ぎて、完全に吹っ切れた暗黒の笑顔を浮かべていました。
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