レオンは従犬を手に入れる
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
会場の喧騒から少し離れた場所で、ニコは領民の羊飼いに声をかけました。
「すみません。羊と触れ合えるような場所はないでしょうか」
羊飼いはニコの横に立つアルベルトの姿に気づき、ハッと息を呑んで頭を下げます。
「こ、これはアルベルト様!……気がつかず申し訳ありません」
「いや、こちらこそすまない。弟が羊をもふもふしたいらしくてな。どこか良い所はないだろうか?」
「それなら、すぐ裏手に私の牧場がありますよ。ちょうど子羊や子ヤギもいますので」
羊飼いの者らから牧場へと案内されると、のどかなのんびりとした空気が流れていました。
牧場には牧羊犬、子羊、ヤギに子ヤギ、牛、馬、そして鶏までいて、レオンは目を輝かせます。
中でも群れの中心には、一頭の牧羊犬が凛とした姿勢で座り込んでいました。
訓練の行き届いた優秀な犬ですが、小さなレオンの姿を認めると、ゆっくりと立ち上がり、様子を見るように歩み寄ります。
犬はレオンの周りをぐるりと歩き、丁寧に匂いを嗅いでいました。
周囲の大人たちにも一瞥をくれた後、レオンの指先をペロリと舐め、警戒を解いてその場に座り緩くシッポを振ります。
レオンは小さくしゃがみ込み、おずおずと鼻先に手のひらを差し出しました。
「……ボク、レオン、3歳よ。もふもふ、いい?」
それを見ていた羊飼いは、驚いて目を丸くします。
「おや……? あいつが自分から近づくなんて、珍しいこともあるものだ」
犬はレオンの匂いを再度確かめるように鼻先を触れさせ、ふわふわの頭をレオンの手のひらにぐいと擦り付けました。
ブンブンと揺れる尻尾が、犬なりの承諾の合図です。
「ふふっ、くすぐったい!」
レオンが嬉しそうに犬の首に抱きつくと、先ほどまで遠巻きにしていた子羊たちが恐る恐る近づき、小さなヤギも興味深そうにレオンの背中をツンツンと突きます。
「……おい、嘘だろ。牧羊犬が初対面で一発で懐くなんて」
「しかも他の動物まで……。レオン様、一体どんな力を使っているんだ?」
アルベルトとニコは、レオンが動物たちと戯れる絵本のような光景に、目を細めて微笑みました。
レオンが牧羊犬の頭を撫でて笑い合っていると、遠くからこちらを伺っていた牧場主が、慌てた様子でやってきます。
その傍らには好奇心旺盛そうな地元の子供たちが数名、興味津々といった様子でついてきていました。
「アルベルト様! まさかいらしているとは気づかずに、誠に申し訳ありません!」
牧場主が深々と頭を下げ、それに続いて子供たちも真似事のようにペコリと頭を下げます。
「いや、気にしないでくれ。弟がすっかり羊たちを気に入ったようでね」
「もふもふ、とってもきもちいいの!」
レオンの言葉に、子供たちは目を輝かせました。
「なぁ……、今からヤギの乳搾りするんだぜ! 一緒にどうだ?」
「こ、こらっ!申し訳ありません。ちょうど今からヤギの乳搾りの大会を始めたところでして、もしよろしければ、……参加されませんか?」
その言葉に、地元の子供たちも「おーい! こっちだぜ!」とレオンを手招きしました。
レオンはパッと顔を輝かせ、アルベルトに「にいちゃ、いっていい?」と視線を送ります。
アルベルトが「ああ、楽しんでおいで」と許可を出すと、レオンは嬉しそうに駆け出しました。
───すると。
先ほどまで様子見に徹していた牧羊犬が、スッと立ち上がり、走り出したレオンの背中を静かに見つめ、レオンの足元に寄り添うように着いて行きます。
「ありゃ?! あいつレオン様の番犬になっちまってるな」
羊飼いが苦笑を漏らし呟きました。
レオンが時折振り返って「いくの?」と首を傾げると、牧羊犬は「ワフッ」と頼もしく応えます。
まるで長年の相棒のように、二人は並んでのんびりと、賑やかな乳搾り会場へ向かうのでした。
そんな会場へ向かう途中、馬小屋の近くを通ったレオンが、ふと足を止めます。
隅の方に、ずっしりと重たそうな麻袋がいくつも積まれていたのです。
「んぅぅ?」
レオンはそれに興味を持ったのか首を傾げて、トコトコと近寄りました。
後ろから牧羊犬も油断なくレオンに付き添っています。
「……レオン坊っちゃま? そんな埃っぽいところへ行ったらお洋服が……」
「どうした、レオン。何かあるのか?」
「あれ?何してんだ?」
ニコとアルベルトが呑気に声をかけ、地元の子らも不思議そうな顔をしています。
しかし元闇の住人たちの「生存本能」が激しく警鐘を鳴らしました。
「……オイ、ありゃやべぇぞ。あの目の色は、獲物を見つけた時のヤツだ」
ジャックが戦慄し、ガウリは鼻をさすって顔を歪めます。
「鼻がいてぇ……。鈍痛が『やらかし』の匂いと言っていやがる……!」
「……あの、フラフラしては危ないので、手を繋いで止めた方が?」
テオが冷や汗を流しながら、「常識的(生存優先)」な提案をしました。
今のうちにレオン様を物理的に拘束すれば、『やらかし』を食い止められるはず……!
派遣組の全員が「ナイスだ、テオ!」と心の中で叫びましたが、保護者二人の反応は絶望的でした。
「いや……。たぶん、何かあるんだろう。レオンには何かが見えているんだ」
「ですね、アルベルト様。レオン坊っちゃまは自由ですから」
(((お前ら、やらかし推奨派かよッ!!!!)))
テオ、ガウリ、ジャックが心の中で全力のツッコミを入れました。
──この親にしてこの子あり!
ストッパーになるべき保護者らが、今度は「何を見つけるんだろう!」とワクワクしています。
レオンは背伸びをして、袋の口から中を覗き込むと、爆裂種のトウモロコシが入っていました。
「トウモ、ロコシさん、カチコチなの」
レオンは袋から取り出し、指でポロポロと外します。
「レオン坊っちゃま、それは馬や家畜たちのご飯ですよ」
ニコが優しく教えると、レオンは「えー!」と驚いたように目を丸くします。
「これ、たべられないの?」
「馬たちだって嫌がる餌だぜ。だから小屋に残っちまう。それに硬すぎだろ」
そうだ、そうだと地元の子らが囃し立てます。
試しにレオンはトウモロコシを牧羊犬に見せてみると、「フン……」と鼻を鳴らしてそっぽを向いたのです。
「う~ん……」
レオンは外した粒を摘み、目の高さまで持ち上げてじっと眺めました。
その様子を見守る牧羊犬は、静かにその場へ伏せます。
「……なぁ、早く乳搾り行こうぜ!」
地元の子らに急かされレオンは顔を上げますが、未練がましげに麻袋を見つめました。
その視線に気づいた羊飼いが、恐る恐る尋ねます。
「あの……もしや、これが欲しいのですか?」
アルベルトが申し訳なさそうに「いいのか?」と問いかけると、羊飼いは「どうせ持て余しているものですから」と苦笑いして、山のようにあった麻袋をいくつも差し出しました。
その瞬間、元闇の住人たちの背筋に走ったのは、危機感とはまた別の……もっと物理的に過酷な衝撃でした。
「「「……はっ?」」」
ジャック、ガウリ、テオの三人は、ずっしりと肩に食い込む麻袋の重みに、同時に引きつった笑みを浮かべます。
レオンは「えへへ」と満足げに笑い、これにて一件落着とばかりに、ようやく乳搾り会場へトコトコと向かいました。
……重い袋を抱え、悲壮な面持ちでトボトボとその後を追う三人の背中には、哀愁という名の影が色濃く差すのでした。
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