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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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レオンのひらめきと、秘密の工房

いつも応援ありがとうございます!

プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。

でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و

少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

 






 パカッ、と小気味いい音を立てて、マルクスが銀色のドームカバーを持ち上げました。


「ジャジャーン! 本日のメインディッシュでございます! 我がヴァリエール領が誇る港に、つい数時間前に水揚げされた特大の『緋色エビ』と『黄金ホタテ』、そして丸ごと一匹の白身魚のハーブ香草焼きでございます!」


 湯気がふわあっと食堂に広がった瞬間、磯の芳醇な香りと、焦がしバター、そして爽やかなハーブの香りが鼻腔をくすぐりました。大皿の上には、信じられないほど丸々と太ったエビや貝、そして見事な魚が美しく盛り付けられています。


「ほう……! 港からここまで、馬を飛ばしたのか。よく手に入ったな。相変わらずバルトたちの流通手際は見事だ」


 ヴィクトールが感心したように目を細め、アルベルトも「美味そうだ……!」と、お風呂上がりのお腹を鳴らして目を輝かせました。

 カトリーヌも、お魚の美味しそうな匂いに笑みをこぼしています。


 しかし――。


 マルクスと料理長が「どうです!」とばかりにドヤ顔を決める中、椅子の上でそれを見つめるレオンの脳内には、前世の光景がバシッシィィンと、激しくフラッシュバックしていました。


(……ま、まって。ここ、お山なのに、すぐそこに海あるの?)


 見たこともない海の広大な景色が、頭にぶわぁっと映ります。


(しかも、裏山にはシューシューがあるなら、ボコボコも近くにあるはず……)


 ピチピチの新鮮なエビに、殻のついた大きなホタテ……。


 これらをあの裏山の天然スチームに、カゴごとポイッと放り込んだらどうなるのでしょう?

 余計な水分を一切入れず温泉の猛烈な蒸気で、一気に蒸し上げられたカニやエビは、旨味と甘みがギュッと凝縮され、ぷりっぷりジューシーな仕上がりになるはずです。


 ──それだけではありません。


「おんせん何かしら?」と言われた温泉も、あの裏山のポコポコ(源泉)を使えば、お外にお風呂ができるのでは!!


(ナイナイしてない……! 楽しみ、むしろ大爆発してるの!!)


 さっきまで「楽しみナイナイした……」としょんぼりしていた3歳児の目が、一瞬で獲物を見つけた肉食獣のように「ギラリ」と輝きました。

 フンフンと再び鼻息を荒くし、椅子の上から身を乗り出します。


「マルクス!! 料理長!!」


「おや、レオン坊ちゃま。お気に召しましたか?」


 嬉しそうに首を傾げるマルクスに、レオンはビシッと大皿のエビを指差して力強く宣言しました。


「これ! あした、お山にもっていくの! シューシューの中に、ドボンするのーーーっ!!」


「「……え?」」


 せっかく厨房で完璧に焼き上げた料理長とマルクスが、綺麗にハモって呆然と固まりました。


 ヴィクトールとアルベルトは、そのレオンの「ギラついた目」を見た瞬間、「やっぱり始まったか……」と、揃ってこめかみをパシッと押さえ、カトリーヌは「フフフ……」と楽しそうに笑うのでした。



 そしてレオンと『叡智』は密かに、タッグをガシッと組みます。

 やっぱり温泉の匂いに刺激された『叡智』側にも、滾る何かがあるようです。









 ──翌日。


 カトリーヌはお留守番ですが、馬車の前でレオンにしっかりと念押しします。


「レオン、『おんせん』はまた今度よ。わかった?」


「あーい! また今度。今日は『泥だんご』の日♪」


 ニコニコ笑顔で可愛らしい返事をするレオンですが、大人たちは誰も信用していません。


「ニコ、レオンをお願いね」


「は、はい! 了解しました!」


 今回はニコも同行するため、嫌がるニコを半ば無理やり同乗させての出発です。

 みんなに見送られ、馬車は山の奥地へと進んでいきます。

 しかし隣に座るニコは、ヴィクトールの存在にガチガチになっていました。

 そんなニコの様子に首を傾げ、レオンは正面に座る父ヴィクトールの様子を見ると……。


 ペラッ……、ペラリ……。


 ヴィクトールは険しい顔で書類を読んでいます。

 そして常日頃のニコは物怖じせず、ヴィクトールに意見を述べますが、狭い馬車での同乗となると訳が違うようで、とにかく居心地が悪いんだとか……。


 (カチンコなニコはとうさまにビクビク、でもとうさまはお仕事中……)


 つまりニコがどれだけ緊張していようとも、父ヴィクトールはまったく気にしていないのです。

 ニコが慣れれば大丈夫とわかり、レオンはそんな二人を人間観察よろしく、時々のほほんと眺めるのでした。


 窓の外の景色は、空気さえも緑に染まり、苔だらけの岩とシダ、そして光を遮るように広がる「緑の天蓋」のようです。

 所々から木漏れ日が漏れて、柔らかな光が温かく大地を照らしていました。

 湿り気のある空気からは葉と土の香りが漂い、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてきます。

 のんびりと景色を楽しみながら、ガタゴトと揺られ、やがて馬車が到着したのは、ヴァリエール領の奥深い場所でした。


 清らかな湧水を湛える森の傍らに、マルクスが精魂込めて作り上げた「秘密の工房」が静かに佇んでいます。


 馬から降りると、表面は穏やかな微笑を浮かべつつ、レオンを守る騎士(あに)としての警戒を怠りません。

 ヴィクトールは言わずとも通じ合うその背中に、頼もしさと成長を実感していると、安全確認をヴィクトールへ報告を終えるやいなや、アルベルトは表情をふにゃりと緩めます。


「さあ、レオン。ここからは俺の背中に乗れ。特等席だぞ」


「あーい! にぃちゃ、おんぶうれしー!」


 レオンがアルベルトの背中に飛びつくと、彼は軽々と弟を背負い、わざと体を左右に揺らして駆け出しました。

 工房の入り口は周囲から分かりにくいように、あえて敷地の奥まった場所にあるからです。


「わあぁ! ゆらゆら、楽しいの! にぃちゃ、はやーい!」


「ははは! 落っこちるなよ、しっかり掴まってろ♪」


 二人のわちゃわちゃとした笑い声が森に響きます。

 厳しい訓練と重責に身を置くアルベルトにとって、弟の放つ「のほほん」とした空気は、何物にも代えがたい安らぎなのでしょう。

 工房の前では、腹心のマルクスが職人たちを従え、笑みを浮かべて待機していました。


「レオン様、いかがですか? 私の作った『秘密の工房』は?」


「マルクス、すごいの! ここでみんなと泥だんご?」


 そう言うと、レオンはまたあっちとこっちと指を差して、アルベルトにおんぶされたまま工房の周辺をウロウロと動き回り始めます。

 マルクスは後ろから、馬車を降りて歩いて来るヴィクトールの目を見て、言葉を交わさずとも「準備は万端、守りは鉄壁です」と視線で告げました。

 アルベルトの首にしがみついたまま、レオンはニコを手招きをします。

 ニコはそんなレオンに手を振った後、マルクスにペコリと頭を下げました。

 その隣にいるヴィクトールは、少し離れた場所ではしゃぎ回る息子たちを眺め、ヤレヤレと溜息をつきます。


「……まったく、じゃれ合いおって……。ニコ、疲れはないか?」


「は、はい大丈夫です」


 ヴィクトールは頷いた後、じゃれ合っている二人へ視線を戻せば、アルベルトはレオンを背負ったまま、レオンと賑やかに笑い合っていました。

 その横顔には、騎士としての誇りと、兄としての深い慈愛が混ざり合っています。


(……エレーナ、見てごらん)


 かつて静まり返っていたヴァリエール家は、この小さな末っ子が運んできた「のほほん」のおかげで、再び家族として動き出しました。


「レオン、アルベルト。あまり騒ぎすぎて職人たちの邪魔をするなよ」


「あーい! とうさま、いっしょにまぜまぜしゅるの!」


 駆け寄ってくる息子たちの笑い声が、太古の森で爽やかに響き渡ります。







読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しくネタになることも♪

誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)

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