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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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84/116

領地への旅立ちの朝─

いつも応援ありがとうございます!

プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。

でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و

少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

 






 ─翌朝。


 ヴィクトールは、揺れる馬車の窓から外を眺め、静かに息を吐きました。

 最愛の妻を亡くしてから、この屋敷を離れて家族全員で出かけることなど一度もありません。

 寒々しく凍りついた我が家が、再び動き出したことを、馬車の中に流れる空気で実感します。


「とーさま、お外、きらきら♪ お馬さん、パカパカ、ガンバ!」


 膝の上でレオンが跳ねるように喜び、窓の外を指さし、初めての遠出に、賢者(レオン)は年相応に目を輝かせ楽しんでいます。

 その重みと温かさに、ヴィクトールはホッとした心地よさを感じていました。


 ――王宮での一件が脳裏をよぎります。


 あれからヴィクトールは蚊帳の外となり、侍従長のガランを伴い セバスが戻って来ると、部屋から退出する事になりました。


「ヴィクトール、今回の件はたまたま起こった事だとわかっている。それでも言いたくなるのは、それだけレオンに及びそうな危機感があるからだ。エドワードが言わなければ、たぶん俺が言っていただろう」


 アルフレッドに肩を叩かれ言われた言葉に、申し訳なさと情けなさで、ヴィクトールは落ち込みます。


「……情けない顔は今だけにして下さいよ。レオン様の『やらかし』をなかった事にする。それが私たち、『木漏れ日商会』の本来の仕事です。なにが起きようと、木漏れ日商会私たちがしっかり対処します。だから安心して下さい」


 シオンに慰められ、報告待ちとなるようです。

 ゼロンも早々に退出し、現場に向かっています。

 ヴィクトールにする事は何一つなく、溜息をつき深々と頭を下げて部屋を退出しました。


「旦那様、我々が関わるのはここまでです。仕事もある程度目処はついてますので、一旦帰宅いたしましょう」


 辺りはにわかに騒がしくなり、バタバタと忙しく動き回っています。


「……詳しくは帰宅後、説明させて頂きます」


 それっきりセバスは口を噤み、その横顔には疲労と焦燥感が滲み出ていました。


(……レオン、アレは掃除用品じゃなかったのか?)


 ヴィクトールは眉間に皺を寄せながら、屋敷で罠液(アレ)を清掃液として使っていた為、一抹の不安を抱えたまま帰路に着きます。






 それから数刻した後、シオンが屋敷にやって来るのです。


「……さほど経たないうちに老けましたね。ヴィクトール様」


 執務室に通されていたシオンは、ヴィクトールの顔を見て言いました。


「……結果はどうなんだ?うちの屋敷も含めて……」


 クスクスと笑うシオンを意に介さないように、答えを求めるヴィクトールに対し、シオンは目を細めて笑い「……問題ありません」と静かな声で言います。

 傍に控えていたセバスはそれを聞き、ホッと胸を撫で下ろしました。


「では報告いたします。『脱け殻』の状態ですが、表面に乾燥はなく、ほぼヌチャッとした粘着質な状態でした。構造も歪で隙間が多く、当初懸念した自然爆発の即時性はございません。ただ、夏の高温下では危険なため、ヴィクトール様が領地へ出立する明日、焼却処理いたします」


 シオンはアルフレッド(陛下)と練り上げた計画を淡々と告げます。

 この『脱け殻』は騎士訓練所のすぐ近くにあり、密偵たちには「騎士たちがツンツンして遊ぶ、臭くて気味の悪いお笑い道具w」でしかありません。

 シオンはニヤリと唇を吊り上げ、ヴィクトールにウィンクをしました。


「ヴィクトール様方を追う密偵の目は、我が商会の開店で釘付けにします。ですが、陛下からは『移動当日に派手にぶちかませ』との特命も頂いております。……続きは明日のお楽しみです♪」


 シオンはそこで一度言葉を切ると、悪戯っぽく視線を巡らせました。


「そうそう、それと。我が商会は先ほどレオン様と交渉し、『悪魔のデトックス液』を頂きました」


 ヴィクトールは目を剥き、あの「デトックス液」まで関わるのかと悟り、クラリと目眩がします。


悪魔な液(アレ)も爆発するのか?」


「いえ、爆発はいたしませんが……、コレが何かお判りで?」


 シオンがおどけて見せたのは、くしゃくしゃな黒い布で、それをあろうことか手近なピッチャーの中に捩じ込みました。


「なっ……!」


 ヴィクトールとセバスが呆然とする中、シオンは花瓶から薔薇を一本拝借し、それを使い黒布を沈めて離すと、瞬間に布は撥ねるように浮き上がります。

 シオンは愉しげに、その動作を何度も繰り返していると、思考が追いついたヴィクトールたちは、驚きで愕然としました。


「さすがレオン様です。未完成だと思っていた『防水布』の完成品が、こんなところにポイッとあるとは。ちなみにこれ、レオン様たちがデトックス液を拭き取っていた『雑巾』ですよ?」


 ゴミ同然の布から放たれるオーパーツの真実に、ヴィクトールとセバスは、禍々しい現実を受け入れ難い拒否感を抱き、今すぐ燃やして証拠隠滅したい衝動に駆られました。


「あ、ちなみにあの『脱け殻』は着火剤や研磨剤にもなるようで、騎士団の剣はツルピカです。……少し臭いますけどね」


 シオンの無邪気な報告に、ヴィクトールは天を仰ぎます。

『防水布』は王家特別管理品となり、『木漏れ日商会』が責任持って商品化すると、王家と話がついているようでした。






 ******************






 ──王宮、総合演習場



 朝の爽やかな陽光が、訓練所のベタ古布で出来た「円錐状の塔」を鋭く照らしています。


 周囲には朝の訓練を終えたばかりの騎士たちが、興味と恐怖が入り混じった顔で20メートル圏外からゾロゾロと集まっています。

 騎士団長のギルバートは、確認作業をする『木漏れ日商会』のイナリとぴょんたの隣にいました。


「準備はいいか」


 エドワードが白い騎士服に身を包んで現れ、その手に持つマスケット銃が朝日に反射して鈍く光り、彼が足を進めるたびに、近くの騎士たちが敬礼しその場を即座に退避します。

 これから起こる事は通達済みで、みな遠巻きに見守りました。


「いいですよ。観客(他国の密偵)も程よくでね。……フフ」


 エドワードはフッと冷笑を浮かべ、マスケット銃を構えます。


 ──狙うは塔の頂点、特製火薬の芯!


「……掃除の時間だ。さっさと終わらせるぞ!」


 ――ズドォォォォンッ!!


 乾いた銃声が王都の朝を切り裂きます。


 弾丸が塔の頂点にある「炎上強化コア」を正確に射抜いた瞬間――。


 ボゴォォォォォォォッッッ!!!!


 訓練所が轟音に包まれ、塔の中心で黒色火薬が爆発し、ラードとマツヤニの油分が熱膨張が起こりました。


 塔の中心の空洞から「煙突効果」による猛烈な上昇気流が発生すると──。

 爆発というより、天へ向かって突き抜ける光の柱が現れたのです。


 横幅6メートルに膨れ上がった紅蓮の爆炎は、黒煙を纏わず、15メートルの高みへと垂直に噴き上がります。


「なっ……!」


「黒煙は?い、いや、熱量か……!?」


 観客の騎士たちが呆然と立ち尽くします。

 それ以上に、物陰で見ていた諜報員たちは、顔面を蒼白にして震えるのです。


 (バカな……あの汚物を、一瞬……、で消滅させた……? しかも、なんと、火柱の禍々しさよ……っ!)


 エドワードは銃口から立ち上る薄い白煙を吹き飛ばすと、満面の笑みを浮かべます。


 その視線の先で、火柱は消えゴォォォと高熱で燃やし、黒煙が上に立ちのぼり、そこにあったものは粉々に燃え、白い灰だけが残されていました。





 *****************






 王都の門に近づいて来ると、ヴィクトールはようやく肩の荷をおろそうとしました。


「ふぅ……。王宮での一件も、ここまで来ると、夢のような……」


 そう呟いた直後に───。


『ゴォォォォォォンッ!!』


 背後から王都全域を揺らすような、低い轟音が響き渡ります。


 ヴィクトールは慌て馬車の窓から首を出すと、王宮から青空に向かい「赤い火柱」がゴウゴウと、渦を巻きながら立ち上っていました。


「……っ!? ……こ、これは!」


 『木漏れ日商会』から報告は受けましたが、あまりの規格外なド迫力に意識が飛びそうになるも、ヴィクトールは「あのまま放置していれば、この惨状が騎士訓練所なっていた」と思うと、必死になんとか正気を保てます。


 膝の上のレオンは窓の外の火柱を見上げて、パチパチと無邪気に手を叩いて喜びます。


「わあぁ! とーさま、見て見て! お空に真っ赤なグルグル! スゴいの!」



「……そうだな、レオン。あれは、きっと『王宮は偉いんだぞぉ』の合図だ」と、ヴィクトールは魂が半分抜けかけた顔で窓を閉めました。


 御者台のセバスが落ち着き払った様子で門兵とやり取りを終えると、馬車は何事もなかったかのように王都の門を抜け、背後で繰り返されるどよめきを遠ざけていきます。


 王宮では、エドワード殿下が「完璧な掃除だ」と満足げに訓練所を後にしていました。

一方、事の一部始終を目撃した他国の密偵たちは、震える手で絶望的な報告書を綴ります。


 『あの国とは争ってはならない。……彼らは、人ならざる悪魔を飼い慣らしている』


 彼らの目を王都の狂乱に釘付けにしたことで、ヴィクトール一行を追う者はいなくなりました。

 かくして侯爵家は、国家権威を誇示する巨大な火柱を背に、のどかな領地へと馬車を走らせます。


 車内には、窓の外の喧騒とは無縁の穏やかな空気が流れ──……。


 レオンの愛らしい笑い声に包まれながら、ヴィクトールは深く息を吐き出し、ようやく父親としての平穏を取り戻すのでした。








読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しくネタになることも♪

誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)

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― 新着の感想 ―
黒布が沈んでいるのはピッチャーの中なら花瓶から薔薇を抜いたのは唯の格好つけ?なら抜いた薔薇をどうしたっていう次の動作を書き入れてもらわないと何のために薔薇が出てきた??ってなると思う。
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