木漏れ日の中の柔らかな光
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
じゃがいもを収穫した次の日の朝、レオンは『ガォーさん』の後ろのカートにじゃがいもを山積みし、爆走していました。
『チリリリロ〜ン……♪ コロロ〜ン……♪』
厨房では、だんだんと近づいて来る音に気づいたマルコとニコが、顔を見合わせて「ハハハ♪」と笑い合います。
ドアを開けると、そこにはニコニコ笑顔のレオンがいました。
なにか楽しいことを思いついたようです。
厨房に着くとさっそく『ガォーさんスモッグ』を着込み、秘密の調理がスタートです!
「レオン坊ちゃま、お芋が茹で上がるまで、お肉を切りますか?」
「……じゃあ、ちきんさんトントンしよ?」
マルコが見守る中、袖をまくったレオンが鼻息を「フスン」と鳴らします。
その横でニコが手際よく鶏肉を細長いスティック状に切り分けました。
「ここに『お魚のバーム』ですか?」
「お魚バーム、ポイしゅる」
ビターオレンジとタイムが香る魚バームを落とすと、レオンは小さな両手でウンショウンショと揉み込み始めます。
ニュゥチャ、ニュゥチャ……。
少し首を傾げたレオンは、塩を少し加えました。
「お塩、少し……モミモミ……。よし、ちきんさん、ちょっとねんね」
レオンの鋭い感覚に、マルコが感心しながら小麦粉をまぶし、鶏肉を馴染ませている間に、お鍋からたっぷりと湯気が上がりました。
「坊ちゃま、お芋が茹で上がりましたよ。皮は熱いから俺が剥きますね」
「ん! お芋さんツルンね」
ニコが手早く皮を剥く間、レオンは採ってきたミントの葉を「プチプチ、プチプチ」と千切ります。
マルコがそのミントを刻み、程よく冷めたじゃがいもがレオンの前に置かれました。
すりこぎを握りしめていたレオンは、じゃがいもをウンショと押し潰し、『中間バーム』をポイッと投入!
熱でじわっと溶けたオレガノと唐辛子の刺激的な香りが鼻腔をくすぐります。
「ホクホクの、マゼマゼ~♪」
陽気に歌いながら混ぜ、仕上げに緑鮮やかなミントをパラパラと散らしました。
「できたの!」
「よし、仕上げは俺に任せな!」
マルコがフライパンを引き継ぎ、バームが揉み込まれたチキンスティックをジュワワッとカリカリに揚げ焼きにしていきます。
おいしい匂いが厨房いっぱいに広がり、レオンとニコが作った特製の『チキンスティック&ミントマッシュ』が、可愛らしく紙包みへと詰められていくのでした。
レオンはニコを伴って『木漏れ日商会』へやって来ました。
塀を隔てた隣にあり、侯爵の庭でなにやら共同計画がある為、塀越しに出入り出来る扉があるのです。
『木漏れ日商会』の裏側の庭には、レオンが遊べるように様々な遊具がありました。
カラフルな色使いの滑り台に、縄が3本繋がりった空中リングイス、リングみたいな樽の中に入り、くるっくるっに移動するモノなど、楽しいものがいっぱいです。
「ニコ!それおねがい」
そう言うとレオンは滑り台で遊び始めます。
たぶん初めからレオンは、遊具が目的だったのでしょう。
「……レオン様、一人遊び危ない」
シクと名乗る青年がいつの間にか、ニコの背後にいました。
ニコはビクッとしますが、ホッとしました。
一人レオンを置いて商会へは行けず、かといってアツアツは食べて欲しい。
それに明日の領地旅行用に、いくつか頼みたいものがあったので、ニコはシクにレオンをお願いしました。
ニコの後ろ姿を見送ったシクはレオンを振り返ると、ぴょんたの作った滑り台を反対側から登ろうと頑張っています。
横には微妙に届かないため、4つ這いになり登ってはズベーを何回も繰り返し、そんなレオンにシクは拳を握り、「レオン様ガンバ」と応援していました。
そんな長閑に過ごしていると、商会開店前の根回しで王宮から戻ったゼロンがやって来ます。
「……だいぶ足腰しっかりされたようだな」
「ん!レオン様、日々成長……」
ムンと腕を組み我が事のように言うシクに、ゼロンは「お前もな」と言い、微笑みました。
そしてレオンに声をかけると、手を振り返しトコトコとやって来ます。
「ボク、まだムリみたい」
ちょっと頬を膨らませて言うレオンに、ゼロンは苦笑を浮かべ頭を撫でました。
フワフワの柔らかな髪が指をくすぐり、なんともすり減った気力が癒されるようです。
「少しづつですよ、レオン様。何でもすぐに出来てしまうと、楽しみがなくなってしまいます」
「……ないのヤダなの」
ションボリと言うレオンをゼロンは抱き上げ、「さてレオン様、ちょっと面白い話がございます」と、ニヤリと笑い言いました。
どうやら王宮で何やらあったようで、レオンはキョトンとしそのまま商会へと連れ去られました。
今まで一緒にいたシクは、いつの間にか消えています。
商会へ入ると、皆からお礼と褒め言葉をたくさん貰います。
だからレオンは「バームポイッしたの」と話すと、今度はニコが「やっぱバーム様々だな」と「あんた神だぜ」と言われ、ニコは「マルコさんに手伝って貰いましたから」と慌てふためくのでした。
レオンとニコはそのまま2階へ上がり、シオンの部屋へ入ります。
そして言われたのは、『失敗作ベタベタ』の話でした。
「あのベタベタさんをですか?」
レオンとニコは訝しげな表情をし、『悪魔なデトックス液』を、シオンたちが買い取りたいと言う意味が分かりません。
実験したい事があるそうで、まるでイタズラな落書き絵を、高値で買い取ると言われたような気分……。
「……ダメかしら?」
だからアルテミアがウルウルした目で二人を見ても、理解できずキョトンとするのです。
「レオン様~♪あのベタベタくれたら、裏庭の遊具を持って帰ってもいいよ~♪物々交換しよぉ?」
ぴょんたが明るい声で言った内容に、レオンはぱあっと明るい顔になりました。
それはニコも同じで、レオンが楽しんでいた遊具は是非ともほしい!
あの失敗作にこだわりのない二人は、ニコニコ笑顔になって帰って行こうとします。
しかしゼロンが呼び止めて、以前レオンの言ってた『モヤモヤ2つ』を聞いてきました。
「モヤモヤ?……フク、べちゃべちゃ、イヤね。おへや、ピカピカしゅるの。ボク、う~んしてた。にいちゃの、クサイさん、せいばい、しゅるの」
レオンの「せいばい」という言葉に、「ブハッ!」と吹き出すゼロン、ぴょんた……。
そして必死に笑いを耐えるシオンとアルテミアなのです。
ドアが開きシクが二人を促し部屋から出て行くと、耐えた二人は「プ──……ッ」と吹き出し笑うのでした。
みなが食堂でレオンのチキンスティックとマッシュポテトを食べた後のまったり時間中、レオンたちを屋敷まで送り届けたシクは、『悪魔のデトックス液』を持ち帰りました。
「レオン様は明日から領地ですね」
「あぁ。『木漏れ日商会』開店当日の混乱に巻き込まれないためだな」
ゼロンとガツはコーヒーを片手に、のんびりと話します。
「明後日はプレオープン♪『レナシリーズ』のお客様中心の招待客!でその次の日が騎士・医療関係者!で最後に商業ギルド、教会関係者だっけ?3日ってスゴいよね!」
「えぇ……、その分招待客を分けたおかげで、混乱はほぼありませんし、こちらも商品を展開する内容や状況を変更出来ます」
ぴょんたとイナリは商会のレイアウトを、細かく詰めている真っ最中です。
「フル展開、準備大変……。レオン様に『おやつ』笛チャーム渡した」
防犯を兼ねた笛は、いざっと言う時以外とは普通の笛、思いっきり吹くと甲高い音が鳴り、騎士たちも動員する優れもの……。
「レオン様、喜んでくれたかな?クフッ、もふもふリュックに木製の『にんじん笛』がプランと揺れる。絶対可愛いよー♪」
「ん、ピロー♪って吹いてた。レオン様はニコニコ」
「フフ……、裏社会の根回しは済んでます。レオン様にはのほほんと、吹いて貰いましょう」
『木漏れ日商会のオヤツ笛チャームを持つ子らは『死神』のテリトリー、手を出そうとした者は死あるのみ……』
すでに裏社会へ回されたその通達は、絶対的なルールとなり、反する者は、裏社会全体の敵と見なされて文字通り“排除”されるのです。
「……これからは忙しくなる。今のうちしっかり自由を楽しめよ。我々が動けば世界も同じ。……この意味、わかるだろう?」
ガツが挑むような眼差しで口角を上げ、周囲の者たちも同じように鋭い表情でニヤリと嗤い返す、そんな緊迫した空気の中、シクだけが──。
「……ねぇ、僕のチキンスティックとマッシュポテトは?」
「「「「……」」」」
全員の動きがピタリと止まり、気まずそうに、そっと目を背けました。
(だって、あのビターオレンジとミントのめちゃくちゃ良い匂いを前にして、残しておけるわけがないだろう……)という大人たちの心の声が筒抜けです。
シクはぷうと頬を膨らませ、不満げに背を向けて抗議する若い『死神』の姿に、皆は温かく、優しい眼差しで見つめました。
レオンと関わりを持つようになった『木漏れ日商会』は、世界の縮図を握りながらも、常に穏やかな笑いの絶えない、愛おしい日常を過ごすようになっていったのです。
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