閑話─「ガォー」の魔法を縫い込んで─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
【ニコ視点】
(……困ったな。あんな目をキラキラさせて頼まれたら、作るしかないじゃないか)
僕ニコは、料理人見習いなんです。
しかし現在……、使用人たちの休憩室で、山のように積まれた生地や糸に囲まれています。
きっかけはレオン坊っちゃまが僕の袖を引いて、「スモック、ボクも、ほしい」と仰ったことでした。
いつものほほんな坊ちゃまの珍しいおねだりを聞きつけた使用人たちが大騒ぎです。
「ニコ、このリネンを使いなさい! 一番肌触りの良い上質な生地だから」
「左右に大きなポケットがあると便利よ。レオン坊ちゃまが、お庭で拾った石ころを入れられるもの」
「ゆったり腕を動かし易いようにね」
メイドたちが口々にアイデアを出します。
そこへ通りかかった年配の使用人が、オレンジ色の鮮やかな刺繍糸と布を差し出しました。
「……坊ちゃまにこの糸で『ガォーさん』は刺繍するのはどうだ?」
「それだ!」と、その場にいた全員が頷きました。
僕も胸が熱くなります。
侯爵家の使用人ら、レオン坊っちゃまが大好きです。
「よし……、任せてください。僕が責任を持って仕立てます!」
僕は針を手に取り、まずはレオン坊ちゃまのお腹を締め付けないように、ゆったりスモックを作り、大きなポケットを左右に縫い付けました。(手先器用なんです)
そして一番大事な胸元の刺繍!
どこかユーモラスなガォーさんを、一針一針丁寧に布を縫い刺繍してくれました。
やっぱり刺繍は難しく、メイドさんにお任せです。
「ニコ、 マルコさんも『粉まみれになってもいいように、首元はガバッと大きく開いて着せ替えやすい形にしてやれ』って、厨房から叫んでたわよ」
メイドさんが笑いながら伝えます。
「はい、それなら首元を紐で絞る形にしたいんですが……僕にちゃんと綺麗に作れるか……」
僕が型紙を前にうーんと頭を抱えていると……。
「フフ、ならその首回りは私がしてあげるわよ。ニコは身頃と大きなポケットを仕上げちゃいなさい」
そう言って、お裁縫が得意なメイドさんが頼もしく微笑みました。
「レオン坊ちゃまが着たときにね、首元がクシュクシュっとなって――ほら、ライオンさんの『たてがみ』みたいに可愛くなるお襟にしてあげるわ!」
「わぁ、ありがとうございます! よろしくお願いします!」
みんなに見守られながら、素朴で柔らかい生成色の生地に、オレンジ色のライオンが吠える特製スモックが、見事な連係プレーで出来上がりました。
刺繍したメイドさんも、お襟を仕立てたメイドさんも、出来ばえに満足げです。
(頑張ったけど、刺繍もお襟もやはり僕一人ではムリでした)
これを見たレオン坊ちゃまはどんな顔になるだろう?
「ホニャ~ン」と、幸せいっぱいな顔で笑ってくれるかな?
不安な気持ちになる僕は、出来上がったスモックをもう一度眺めました。
どうかレオン坊ちゃまが、喜んでくれますように!
───そんなニコを微笑ましげに、侯爵邸の使用人たちは眺めています。
さっそく僕は出来上がったスモックを抱えて、レオン坊ちゃまのお部屋へ……。
僕の後をなぜかスモックに関わった使用人たちが、ソワソワしながらついてきます。
「レオン坊ちゃま、お待たせいたしました。お願いされていたスモックですよ」
お部屋に入るとちょうどお昼寝から起きたばかりで、頭をコテコテしながら座っていました。
でも僕の腕の中の布を見た瞬間、お目めがぱあぁっと輝いたんです。
「……あ、……ガォーさん!」
「フフ、出来ましたよ。さぁ、お首に通してみましょうか」
僕が紐を完全に緩めて、首元をガバッと大きく広げると、レオン坊ちゃまがお顔を近づけて……。
「……んんーっ、……ずぼっ!」
勢いよく潜り込みました。
「……ぷはぁ。……でた!」
首元からぽこんと可愛い顔が飛び出します。
「よし、仕上げですよ。この紐を、きゅ〜っと……」
僕が左右の紐を優しく引っ張ると、首回りの柔らかい白い布が、きゅきゅっと縮んでくしゅくしゅのフリルに早変わりしました。
フワフワで柔らかい、まるで『ライオンのたてがみ』のようなお襟です。
その首元から飛び出したオレンジ色のライオンさんを、レオン坊っちゃまは自分の胸元をじーっと見つめて、小さな指で「ツンツン」と触れました。
「……ガォーさん!」
「ええ、レオン坊ちゃまのお友達ですからね」
レオン様はさらに首元のフワフワした白いお襟をちっちゃな手で触ると、とっても嬉しそうに、立ち上がりました。
「……ガォー。……ボクも、ガォーよ」
小さなライオンさんになった気分のレオン坊っちゃまは、お部屋中スモックを着て、クルクル歩き回ります。
トコトコポテポテ……♪
左右につけた大きなポケットには、さっそくお気に入りのネコちゃんハンカチを自分自身で「ぽいっ」と入れられました。
「……あ。……おちない!」
ポケットの便利さと、ライオン襟の可愛さに感動しているレオン坊ちゃまを見て、後ろで見守っていたメイドたちが「可愛い……!」「似合いすぎるわ!」と、一斉に身悶えしています。
「ニコ、みんな、ありがと、ボク、うれしー」
レオン坊ちゃまはみんなの顔を順番に見て、最高の笑顔を見せてくれました。
そしてそのまま勇ましく、トコトコと廊下の方へ向かっていきます。
「……マルコに、見せにいくの。……ガォー、だぞ!」
「あ、レオン坊ちゃま! 走ると危ないですよ!」
僕は慌てて追いかけますが、レオン坊ちゃまは今日はコケることなく誇らしげに、厨房へ突き進みました。
バタン、と厨房の重いドアを一生懸命に開けて、レオン坊ちゃまが顔を覗かせます。
「マルコ、みて。……ガォー。……ボクも、ガォーなの」
「おお、レオン様! 厨房のドアを開けたと思ったら、その格好は! 最高の仕上がりじゃないか! 首元もバッチリだな!」
マルコさんは豪快に笑って、大きな手でレオン坊っちゃまの頭をたくさん撫でてくれました。
「あはは、これなら粉まみれになっても安心です。さあ、その強そうな『たてがみ』をブルーノの奴にも見せてやりましょう、レオン様!」
大好きなマルコさんにたくさん褒められて大満足したレオン坊っちゃまは、「うむ!」と嬉しそうに頷き、誇らしげにお庭へ向かって、トコトコと歩いていきました。
****************
【レオン視点】
お庭に出るとオレンジ色の「ガォーさん」のお顔を、小さな指で「ツンツン」した。
(強そうだ♪ガォーだぞ!)
「……ふふ、レオン坊っちゃま。お似合いですよ。今日はこれを着て、お庭のパトロールですね?」
ニコに背中をポンと優しく叩かれて、ボクはこっくりと頷いた。
今日はのんびり、一人でお庭を一周するんだ。
トコトコポテポテ……♪
足が芝生の上をおイッチニ、おイッチニ♪
前はお空を見上げ過ぎると、すぐに「ストン」ってなったけど、今日はこの「ガォーさん」が一緒だから大丈夫!
「……あ。……だんごむし、コロコロ♪」
下を見たら石の近くにうごうごしてる。
ツンツンしたらまん丸になった。
上を見たらヒラヒラと、黄色いちょうちょを見つけて、慌ててたちあがったら、頭の重さで後ろに引っ張られる。
(……あわ、わ……!ダメだ! ……ガォー!)
ボクは一生懸命に足に「ぎゅっ」て踏ん張って、踏ん張って、目をつぶって踏ん張ったら───。
「……あっ!……ボク、たってる!」
近くまで来たブルーノが、驚いたような目でボクを見てる。
「……坊っちゃま!よくぞしっかりと、踏ん張られましたな。……お見事です。」
ブルーノの優しい木々の目が、良くやったと褒めてくれた。
さらに厨房の窓がガラッと開き、マルコが笑いながら嬉しげに褒めた。
「レオン様、足腰しっかりしていましたな!」
後ろにはニコが、涙ぐんでいるんだ。
「レオン坊っちゃま、大きくなって……」
なんか大騒ぎじゃない?
「エヘヘ……、ガォーさんの、おかげ、かな」
ボクは胸元にいるガォーさんをなでなでして、もっと遠くまでトコトコと、パトロールに行けるかも……。
ミントの香りがする風に乗って、新しいスモックの白くて柔らかいライオン襟が「ふわっ」と踊る。
夏に近づく季節は、とっても風や景色が穏やかで気持ちいいよね!
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
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