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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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ひと匙で一流の味!? 失敗作から生まれた奇跡

いつも応援ありがとうございます!

プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。

でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و

少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

 





 ──実は、せっかく作った【調味料バーム】のスゴさを解って貰うため、配膳の仕方から料理の演出まで、マルコとニコは考えぬきます。


 ──まず!

 極厚ステーキ & じゅわっとガーリックパン!

 ※肉バーム(ローズマリー・セージ・にんにく・唐辛子・粗塩)を使用。


 演出: 肉を豪快に焼き上げたフライパンの「極上ハーブ肉汁ラード」を、厚切りのバゲットにこれでもかと吸わせ、表面をカリッと香ばしい焼き色につけたガーリックパン。

 一口噛めば口の中で、濃厚な香りと旨味が大爆発です!


 ──次に!

 旬の野菜と白身魚の『追いバーム』コンソメスープ!

 ※魚バーム(タイム・ローズマリー・にんにく・ビターオレンジ皮・粗塩)を使用。


 演出: ヴァリエール邸伝統のすっきりコンソメスープを、ワザとお皿に注いだあと、仕上げに「魚バーム」をポトンと落とします。

 スープの熱でじわぁ……と溶け出す瞬間のバームから、タイムの清涼感とビターオレンジ皮の爽やかな香りが、湯気と共にぶわっと香りが立ち、スープ全体に極上のコクがプラスする見た目も楽しいスープです!


「どう思う、この演出は?」


「最高です!バッチリですよ、マルコさん!」


 二人の料理人は厨房の片隅で、綿密な計画を立てていたのでした。






 ─実食! 襲いかかる香りの暴力!


「お待たせいたしました。本日の料理でございます」


 マルコとニコが恭しく皿を並べると、先ほどまで「ただ美味しいだけの平和な料理」と信じてホッとしていたヴィクトールお父様の目が、一瞬で丸くなりました。


 お皿の上には食欲をそそる焼き色のついたステーキと、横には脂を吸い込み香ばしく色づいた肉厚のパンが添えられています。

 さらに黄金色の馴染み深いスープからは、嗅いだこともない華やかなオレンジとタイムの香りが立ち上っていました。


「マルコ、……これは一体どういうことだ? スープの上に、淡い柔らかな膜が張っているぞ。それにこのパン!脳を揺さぶるような暴力的な香りは何なんだ!?」


 ヴィクトールがごくりと喉を鳴らすと、カトリーヌも優雅な所作でスープを一口、そっと口に含みました。


「……っ!?」


 その瞬間、カトリーヌの美しい目がカッと見開かれます。


 いつも落ち着いた様子で気品を兼ね備えた彼女ですが、本日はあまりの美味しさに、スプーンを握ったままピタッと固まってしまいました。


「お、おい、カトリーヌ!? 大丈夫か!?」


「……お父様、お兄様、これ!もの、スゴッく美味しいですわ……! スープなのに、お口の中で爽やかな果実の香りと、お肉に負けない深いコクがじゅわっと広がって……!」


 我慢できなくなったアルベルトとヴィクトールも、たまらずステーキとガーリックパンを口に放り込みます。


 バリッ、ジュワァァァ……!!!


「うッ?!──……ッ、な、なんだこの旨味の爆発はっ!? パンを噛んだだけなのに、極上の肉料理を食べてたような満足感が押し寄せてくるぞ!?」


「美味い、美味すぎる! マルコ、お前いつの間にこんな!神がかった技法を身につけていたんだ!?」


 ヴィクトールとアルベルトが大絶賛でステーキとパンを貪り食う中、レオンだけはのほほんと自分のスープをふーふーし、二人に向かって小さくパチッとウインク(両眼を瞑った)してみせるのでした。

 そんなレオンにマルコとニコは、密かにお返しのウィンクをするのです。







 ──種明かしの料理。


 追撃!骨付きラムチョップ(羊肉)の直塗りロースト & 追いバーム・ディップ!


 ① ラム肉の臭みが完全に消え去る魔法!


 骨付きのラム肉を焼く際、仕上げにこの「中間バーム」を肉の表面にたっぷりと直塗り。


 ラードが肉の熱で溶け、オレガノとミントの成分がラム肉の繊維の奥まで染み込むことで、羊独特の野生的な臭みが一瞬で消え去り、爽やかで上品な「極上の赤身肉」へと変貌。

 アクセントのピリッとした唐辛子の辛味が、食欲を増進。


 ② 食卓での演出:小皿に盛った「追いバーム」!


 お皿に盛られたラムチョップと、中間バームの入った小皿を添えて出します。


 それを口に運んだ瞬間──


「な、なんだこれは……!? 羊肉特有のクセが一切ないどころか、鼻に抜けるこの清涼感とハーブの気品は! 止まらんぞ!」


 と、さらなる大衝撃を受けるはず!


 ……料理人二人はニンマリと笑いました。




 ── 現場は戻って。


「マルコ、……肉の近くに置かれたこの小皿の中身は何だ?」


「『調味料バーム』にございます。そのままでも味がついておりますが、お肉に()()()()してお試し下さい」


 聞いていたアルベルトが熱々のラム肉にポテッと載せると、余熱でバームがじゅわぁ……と目の前で溶けていきます。


 そして、それを口に含んだ瞬間──


「ッ?!」


 アルベルトの目が大きく見開かれ一瞬止まりましたが、ハッと気づいたように物凄い勢いで咀嚼しました。


 そして────。


「な、なんだこれは……!? 羊肉特有のクセがないどころか、鼻に抜けるこの清涼感とハーブの気品は!」


 ガツガツ、ガツガツ……!


 さらに猛烈な勢いで食べ始めたアルベルトの姿を、ヴィクトールは呆然と眺めます。

 カトリーヌもいつもならこの辺で控えますが、本日は優雅に、そしてスピーディーに食べていました。


 ふと先ほど聞こえた「不穏な単語」が気になり、ヴィクトールはハッと動きを止め、視線の先……、マルコの持つ小さな瓶が気になります。

 ──目線を下げ、もう一度小皿の中身を確認すると、()()()で似たものを見たような……。


(ハッ……!!!)


 ヴィクトールは息を飲み、思わずレオンを見ました。

 しかし、渦中の小さな天才はといえば……。


「…………?(もぐもぐ、もぐもぐ)」


 両頬をリスのように膨らませキョトンとした顔で、ひたすら美味そうに肉を咀嚼していて、可愛いお口の周りはラードと肉汁で、ギトギトのベトベトです。


「もう、レオン。お口の周りが大変なことになっていてよ? 仕方ないわね……」


 隣に座るカトリーヌが、10歳とは思えぬこなれた手つきで、困った顔をしながらレオンの口元をナプキンで拭ってあげました。

 その横では料理人見習いのニコが、自然な動作でレオンの前に「ミント水」を差し出し、カトリーヌのグラスにも注いでいます。

 あまりにもいつもの平和で微笑ましい姉弟の光景……。


(……考え過ぎか? アルベルトの予知夢のせいで、神経質になっているだけか? しかしあの瓶の佇まいといい、質感といい……、()()()()酷似しているのだが?)


 ヴィクトールの眉間に深い皺が寄り、ジィ────ッと獲物を狙う鷹のような目で瓶を凝視していると、マルコがその視線に気づき、不敵な笑みを浮かべて瓶を持ち上げました。


「──旦那様。これぞ我が厨房で作成した最高傑作、その名も『調味料バーム』にございます!」


 マルコはワハハと豪快に笑い、緑の瓶をこれみよがしに、ヴィクトールの目の前で振ってみせます。

 しかし「バーム」という単語が飛び出した瞬間、ヴィクトールの肩はビクン! と大きく跳ねていました。


「ば、バームだと……!? お前今、確かにバームと言ったな!?」


「ええ言いましたとも! レオン様がニコと一緒にハーブオイル作りをした後、ニコが『これを料理に使えないか』とラードに漬け込む事を思いつきまして、それを聞いた俺がさらに一工夫加えました!」


 マルコはドヤ顔で胸を張り、スプーンで瓶から緑のバームをすくい上げます。


「油に香りを移すだけでは、ただの薬で料理じゃねぇ。なら熱々に溶かしたラードを火から下ろし、ニンニク唐辛子を入れ、香りをつけた後にハーブを入れる。そしてもったりしたところで粗塩をぶち込み混ぜる! 火から下ろした余熱だからこそ、素材は焦げず香りも最高に引き出される。さらにラードが冷えてもったり固まる性質を利用すれば、粗塩が底に沈まず、どこをすくっても塩気があるから、肉に絡むって寸法です!」


「まぁ!お肉にハーブの香りが良かったのは、火から下ろしたラードの余熱を使ったからなのね。とても素晴らしい工夫でしたわ」


 10歳のカトリーヌは、ミント水で口を潤しながら、深く感心したように頷きます。


「レオンの……ハーブオイル……」


 マルコの熱い解説を聞きながら、ヴィクトールは目の前がクラクラと目眩を覚えます。

 レオンは関わっていない(ボクちらない)と言いました。

 確かにバームを作り、料理を作ったのはマルコとニコで、嘘はついていません。

 しかし間違いなく、──その源流は我が最愛の末っ子次男坊です。


(……まただ。またレオンの何気ない行動が、預かり知らぬところで侵食し大きくなって、全く新しい概念を生み出している……!)


 もはや恐怖すら感じる緑色のバームを恐る恐る肉に載せ、熱々の肉の上でじゅわぁ……と美味しそうに溶けていくのを見つめながら、ヴィクトールはお決まりのジレンマにまたしても陥ったのはいうまでもありません。


 もちろん食べた肉がすこぶる美味かったのも、……言うまでもありませんでした。


 その横でレオンは……。


(コレ、ちっぱいさく、へんしんね。マルコ、ニコ、がんばったの。ボク、満足♪)



 自分が「美味い!」と絶賛して食べた料理が、実はあの禍々しい『悪魔のデトックス液(失敗作)』の工程をベースにして作られた『調味料バーム』のおかげであることを、ヴィクトールはまだ知らない……。




読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しくネタになることも♪

誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)

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