万能すぎ! 厨房に爆誕した悪魔
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プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
ヴァリエール邸の広々とした厨房は、肉の焼ける猛烈に香ばしい匂いと、弾けるようなハーブの香りに包まれていました。
レオンと作った「ハーブを入れたオイル」に触発され、ニコは自分なりに新しいモノを作ろうと試行錯誤していました。
初めは上品に香りをラードに移すため、ハーブを『麻布に入れる』バームと同じ方法を取ろうとします。
───しかし。
「違う、ニコ! それじゃあ薬だ! これは食うもんだぞ!!」
マルコの豪快な怒声が響き渡りました。
料理長であるマルコもレオンとニコが様々な作成を横目で見ていくうちに、ニコ同様やはり触発され、ニコと一緒に作成しカタチにするようになったのです。
ハーブやニンニクをそのまま中に入れっぱなしをするように言われたのです。
そして出来上がったものは大正解!
美容と料理は違う。ならばやり方も変わる。
さらに二人は完璧なクオリティと保存性を求めて、調理手順の工夫に乗り出します。
熱々に溶けたラードを火から離し、ニンニクと唐辛子を入れて、香りと辛味がついたところで乾燥したハーブをバサッと入れました。
そして最後に、もったりしたら大粒の粗塩を投入するのです。
火にかけたままでは焦げて香りも飛んでしまうので、火から下ろしたラードの余熱を使い、素材そのものの瑞々しい香りや旨味をじわじわとラードへ移していくのでした。
乾燥を使えば余計な水分も出ず、カビる心配もありません。
そのまま清潔なガラス瓶へと詰め、ラードが冷えてもったりと固まっていく(バーム状になる)過程で、粗塩やハーブが底に沈むことなく、全体へ均一に美しく閉じ込められます。
「……この手順なら、ハーブの香りが一番美しく引き出されますし、ガラス瓶に詰めた時の見た目も圧倒的に可愛いです……! 何よりフライパンに入れた瞬間、香りの爆発力がまるで違う!」
「だろう!それに肉と一緒に噛んだ時、ラードの中に閉じ込められた粗塩のパンチとニンニクの旨味がダイレクトに脳に響くんだよ。と言っても、コレお前らの失敗作の工程だぞ」
レオンとニコの『おつかれバイバイ』の過程を、好奇心を丸出しで材料から工程まで、マルコはずっと見ていました。(監視です)
対応は気安いものの、料理に関しては絶対的味覚と腕のあるマルコの助言に、ニコは目を輝かせます。
二人はそこから肉や魚のジャンルに合わせた『調味料バーム』の黄金比率を割り出すべく、さらに試作を重ねていくのでした。
① ガツンと濃厚!【肉バーム】(牛・豚用)
配合: ローズマリー、セージ、ニンニク、唐辛子、粗塩
マルコの太鼓判: 「豚肉や牛肉の脂に、セージとローズマリーの爽やかさが完璧に調和する。唐辛子のピリッとした刺激とニンニクで、手が止まらなくなるぞ!」
② 奇跡の手懐け!【中間バーム】(鶏・魚・羊用)
配合: オレガノ、ミント、ニンニク、唐辛子、粗塩
ニコの驚き: 「マルコさん、すごいです! 単体だと料理に使いにくいミントが、オレガノと合わせることで、嘘のように大人しく馴染んでいます! 独特のクセがある羊肉にこれを塗って焼くだけで、臭みが消えて極上の旨味に大化けです!」
③ 棚の奥の偶然!【魚バーム】(魚・白身用)
配合: タイム、ローズマリー、ニンニク、粗塩 +『冬収穫の乾燥ビターオレンジ皮』
たまたまの奇跡: 「マルコさん、棚の奥に冬に余った乾燥オレンジの皮を見つけました」
「いいじゃねぇか、ニコ。試しにそれもブチ込んでみろ! ……って、うおぉお美味い! タイムの清涼感にオレンジのほろ苦い酸味が重なって、パサつきがちな白身魚が、社交界の高級魚料理に変貌しちまった!!」
「……できちゃいました。とんでもないものができましたね、マルコさん!」
ニコはスプーンですくい上げたきらきらと輝く調味料バームを見つめ、香りでゴクリと唾を飲みます。
見た目はまんま、レオン坊っちゃまのバーム。
しかしその正体は、フライパンに一匙落とすだけで、誰でも一瞬で一流料理人になれる「究極の万能調味料」です。
「ああ。レオン坊ちゃまの『ハーブ入れっぱなしオイル』からヒントを得て、まさかこんな化け物調味料が生まれるとはな……。おいニコ、さっそくこれを瓶に詰めて、旦那様たちの晩飯に出してやろうじゃねえか!」
「はい! 旦那様たちの驚く顔が楽しみです!」
幼児のピュアなひらめきと、料理人見習いニコの工夫、そして料理長の本気の監修……。
たまたまの奇跡が重なり合って爆誕したこの【調味料バーム】が、木漏れ日商会のもう一つの大黒柱になることは、もはや確実でした。
その日の夕食。
厨房での試作を終えたマルコとニコは、完成した『調味料バーム』を使った料理を、早速メインディッシュとして食卓へ運ぶことにしました。
始めは何も言わず、いつもと変わらぬすまし顔で給仕を始めるマルコとニコ……。
しかし運ばれてきた皿から立ち上る食欲を刺激する香ばしい香りに、いち早く反応したのはレオンです。
「……う?」
レオンは小さな頭をコテンと捻ると、スプーンを握ったまま、ジィ──ッとマルコたちの様子を観察し始めました。
(この匂い、ニコがちょうだいって言ったハーブさん……? ニコたち、なにか「ちちんぷい」したの?)
何か言いたげな瞳で、騒ぎ立てずにだまって大人しく配膳を待っています。
それがレオンの何よりの、賢さと優しさの表れでした。
そんなレオンの様子に気づき、アルベルトが笑顔で話を振りました。
「……なぁ、いつもに比べて一段と美味そうな匂いだな。レオン、お前何か関わったのか?」
アルベルトの問いかけに、レオンは一瞬だけニコと目を合わせると、小さな首を左右にフリフリして否定します。
「……ボク、ちらない」
「そっかー、なら今日はマルコの創意工夫なんだな! 本当にとても美味しそうな香りだ!」
レオンの返答にアルベルトはマルコへ言い、ヴィクトールはそれを聞きながら、胸の内で深い安堵の溜息を吐きました。
(良かった……本当に良かった……!)
アルベルトの『予知夢』という超ド級のやらかしに直面したヴィクトールは、いまや完全に疑心暗鬼状態です。
しかしこれにはレオンが関わってなく、純粋に料理長の腕前という「ただ美味しく無害で平和な料理」とわかり、ようやく肩の力を抜けます。
「……お前たちに以前伝えていたが、近々領地に行く。なので今のうちから、少しづつ準備しておくようにな。ニコ、すまないがレオンの準備、お願いできるだろうか?」
「もちろんです!もう大体準備は整っています。ですね、レオン坊っちゃま!」
「ボク、ちゃんと、じゅんびしたの」
ニコニコと笑顔を見せる二人に、父ヴィクトールの引き攣った顔に、カトリーヌは呆れたように見ていました。
(まったく!何をそんなにピリピリと警戒しているのかしら?レオンの『やらかし』はいつも素敵なことなのに……)
カトリーヌはレオンの『やらかし』肯定派です。
目の前に置かれた美味しそうな料理を、ワクワクと楽しみに待ちわびるのです。
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