平和からの『負けられない戦い』
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
エドワードは最近「平和だなぁ」と思いました。
連日の雨で国周辺の情報や穀物状況など、政務としてバタついていて、決して『平和』ではありません。
──ですが、なぜ『平和』と感じるのか?
その理由はもちろん、エドワードは知っています。
「……なんか平穏だな。エドワード」
ダイニングルームで、食事の後のまったりした時間に、王であるアルフレッドがコーヒー片手に言いました。
やはり思っていることは、同じなようです。
「あら?平穏でよろしいじゃ有りませんか」
面白そうに笑いながら、メイドからなにやら受け取る王妃イザベラは、テーブルの上に黒いビロードの生地で、ネコのカタチにした物を置きました。
「……それは?」
口元をニンマリとして、持ち上げた手らしい部分を使い、「ニャンニャン♪」と言って動かします。
そんなイザベラの様子を呆れたように、アルフレッドとエドワードは眺めていました。
「コホン!……私も考えましたの。どう?可愛いでしょ?」
笑った後そのネコでポーズをとり、「ニャンニャン♪」と楽しげに遊ぶイザベラ……。
アルフレッドとエドワードは顔を見合わせ、首を傾げ困惑します。
「……もう、ノリが悪過ぎますわ!最近巷で流行りになってますのよ。カトリーヌも白いもふもふ犬のポシェットを持ってるのに!」
そう言うとまた「ニャンニャン♪」と楽しそうに遊び始めました。
エドワードは眉間に皺を寄せ、冷や汗をタラリと流します。
まさかこれは世にいう『嫁姑問題』というものだろうか?
まだ結婚もしていない14歳の身で、それを体験させられるという地獄……。
ちらりと父アルフレッドを見ると、同じように眉間に皺を寄せ、深刻な表情をしています。
──ゴクリ。ここに負けられない戦いが勃発しました。
まず大切なのは初めの一手です。
そこから一気に攻め落とす!
──先手必勝!!!
「……母上、もし宜しければ、手に取って見せていただいても?」
「いいわよ。お気に入りなんだから、大切に扱ってちょうだい」
片眉を上げてチラッと見たイザベラは、目の前にいるエドワードに、クロネコのポーチを渡しました。
手に取ったクロネコは、ビロードの手触りが滑らかなポーチと、煌めく青い瞳(たぶん宝石)の華やかさで、可愛さの中に愛嬌と気品を秘めています。
なにより───。
(クタッとした握り心地が、なんとも気持ちいいな?)
初めて体験する質感と可愛らしさに、エドワードはじぃ────っとポーチを見つめます。
(……触り心地がまるでレオンみたいだな。それにネコ俺が持ってもいいのでは?)
なにげに使い心地の良さそうなサイズ感のポーチに、従来の目的など忘れて、もの欲しげにポーチを見つめるエドワード……。
そんなエドワードの不穏な空気に、不信感を抱いたアルフレッドは声をかけます。
「……エドワード、どうかしたのか?」
しかしネコポーチを手に取ってから、微動だにしないエドワードは、声をかけても返事をしません。
不安になりイザベラを見ると、同じ気持ちで心配そうな顔をして、エドワードを見ていました。
「イザベラ、アレをどうするつもりだったんだ?なぜ私たちに見せた?」
アルフレッドはイザベラに、ことの真意を聞くことにしました。
するとウフッと笑い話します。
「別に対したことじゃないのよ。ただドレスのハギレで出来上がったものをお披露目したかったの。アレポーチだけど、中に羊毛が入っていて、クタッとした実感をだしたのよ」
──ただの出来上がった商品自慢でした。
木漏れ日商会から、もふもふの話を聞いたイザベラが、欲しくなり、ならば作ってしまいましょうと、その場にいたメイドたちを巻き込み出来上がったんだとか……。
「今度ヴィクトールが来たら、これも『レナシリーズ』として、売り出してもらおうと思ったの。だって若い子ばかりズルいじゃない。可愛いは永遠不滅よ。淑女にも胸に密めた可愛いがあってもいいじゃない!」
全力でそう象徴するイザベラに、隅に控えていたメイドたちが、一斉に頷き手を叩いて肯定します。
それを聞いたアルフレッドは頭痛を覚え、肘をつき頭を抱えると、エドワードがハッとしたように顔を上げ、椅子から立ち上がりました。
「なぜ女性限定にするのですか!コレは確かに可愛い。しかし可愛いだけじゃなく癒しもあるではないですか!つまり、癒しを求める男性にもコレは必要!ということなのです!」
どやぁ顔で突然主張し始めたエドワードに、部屋にいた全ての者たちは、『何言ってんだコイツ』と、唖然した表情になり戸惑います。
「……ですので、母上。コチラを癒しの必要な私が頂戴しても、よろしいでしょうか?」
「……ハイ?」
突然エドワードから話しかけられたイザベラは、意味もわからず曖昧な返事をし、それを聞いたエドワードは、極上の微笑みを顔に浮かべて言うのです。
「ありがとうございます!では、私は仕事が残っておりますので、……これで失礼致します」
深々とアルフレッドとイザベラに礼をした後、周りを見回して、フッと笑います。
そして……。
ツカツカツカツカ……、カチャッ、パタン!シィィ───……ン。
「「「「「……」」」」」
余りにも迅速な撤退に、部屋にいた者たちは皆、……思考が止まりました。
しかしそこからすぐに復活したアルフレッドは、もし国に危機が及んだ時、常に迅速に行動し瞬時に治めることが、王としての務めであり力量なのです。
残されたアルフレッド、未だフリーズし困惑しているイザベラに向かって言いました。
「……すまないイザベラ。もしよければ、私専用もお願いできないだろうか?私も癒しが欲しい。特に今は……」
そう……、事態を治めてこそ、王なのです。
アルフレッドの言葉を聞いたイザベラは、ギ、ギ、ギと顔を動かし、目を合わせて言いました。
「……わかりましたわ。『淑女の可愛い』だけじゃなく、『メンズ仕様(癒やし用)』も追加でお願いしますわ……」
控えていたメイドだけじゃなく、使用人全てがとりあえず深々と頭を下げ頷きました。
雨の日の王宮は、今日も平和なようです。
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連日のジメジメとした雨が続き、王宮の騎士訓練場から、スーっと鼻の通る匂いと、廃油の胸焼けする匂い、そして雨特有のカビや湿気の嫌な匂いが、重なり合い手を繋ぎ、悪臭となって放っています。
横を通るずぶ濡れの騎士が、ふと|その塊に目を留めました。
「……ん? なんだあの布は?相変わらずクセェが……」
鼻をつまみながら、その塊に恐る恐る近づきます。
一ヶ月前、賊をパッキンするために使用された古布は、誰も触りたがらなかった『呪いのベタベタ布』の残骸として、未だグショグショのベタベタのまま、その塊はありました。
───しかしよく見ると、違和感があります。
この連日の雨の中、あの塊が乗っている荷車下の地面が濡れていないような……?、というより、塊は
ずっとベタベタで、粘着がず──っと続いて、乾くことなんて不可能かもしれません……。
雨が降っていようとも、悪臭は治まることなく健在です。
嫌々、人差し指でツンと触ってみると、ネチャネチャッとして、指にミョー…ンとひっつき離れません。
「うげぇぇ?!ベタベタが取れん!というより広がって、最悪じゃねぇか!」
騎士は身体を翻し、元来た道へ戻って行きました。
不気味な『その塊』は、今も訓練場の片隅に放置されているのでした。
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