翌朝のサプライズ:ガォーさん、爆走発進!
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プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
レオンは泣いた影響か小さなアクビを「ふわぁ……」と漏らします。
小さな身体がユラリと揺れ眠気でトトト……とよろけ、ブルーノがそれを大きな腕でしっかりと支えると、その様子を見たリーダーのガツが、渋い声に優しさを乗せて言いました。
「……そろそろもう寝る時間だな。坊ちゃん、 明日の朝の菜園近くに、俺たちから名前のお礼に、プレゼントが置いてある」
「プレゼント……? なぁに……?」
半分目が閉じながらも尋ねるレオンに、イナリは目を悪戯っぽく細めて微笑みます。
「それは明日のお楽しみです。さあ、良い子はぶうちゃんと一緒に、おやすみなさいの時間ですよ」
「はーい……。ガツおいちゃ、シク、イナリしゃん、ぴょんた……おやすみしゃい……」
ブルーノの胸にすっぽりと収まり、スヤスヤと寝息を立て始めたレオンに、ブルーノは男たちに小さく頷くと、静かに闇の向こうの屋敷へと戻っていきました。
静まり返った、雨上がりの澄んだ夜の庭園。
雲から抜けた青白い満月の光が、さあっと地上を照らし出します。
その美しい月明かりに浮かび上がったのは、庭園の奥にうっすらと佇む、見たこともない形の大きな影でした。
「……ふふ、明日の朝が楽しみですねぇ」
パタパタと扇を動かしながら呟くイナリの声が、澄んだ夜の空気に心地よく溶けていきました。
小鳥たちがチュンチュンと歌い、お日様がキラキラと菜園を照らす、お散歩に最高の朝がやってきました。
パタパタパタ……!
レオンが元気に走ってきます。
その後ろをアルベルト、カトリーヌ、そしてブルーノが一緒に歩いていました。
暗闇にうっすらと月明かりにてらされたものが、菜園の入り口にたどり着いた瞬間、レオンは小さな手を口に当て、目をまん丸にして輝かせました。
「うわぁーーーーーーっっ!! ガォーさんだぁーーーっっ!!」
そこに鎮座していたのは、昨晩うっすらと影を潜めていた【連結式多目的三輪木馬】でした。
「わぁ──い!カッコイイ!うちろに入れ物、べんりよ♪いーっぱい、はこべるの♪」
前から見ればソテツの毛がフサフサなたてがみで、後ろ側に回り込んでみると……。
「あ、つるつるー♪」
竹ハンドルが握りやすいように、頭の後ろに毛を植えずな木肌(ハゲ部分)を見つけ、小さな手のひらで嬉しそうに何度も「つるつるー♪」と撫で回しています。
物陰から覗いていたぴょんたが「可愛いすぎない!? ハゲにして本当に大正解だったよぉ!」と音の出ない悲鳴を上げて地面を転がっていました。
「レオン、凄いな、これ……」
アルベルトは呆然と眺めながら冷や汗をかいてます。
「レオン、良かったわね!今度会った時ちゃんとお礼言うのよ」
カトリーヌがレオンに微笑み、レオンに乗るよう促します。
それを「ちょ、ちょっと待たないか?せめて、父上が来るまで?」とアルベルトが阻止しようとすると、カトリーヌがアルベルトの足を蹴りました。
「おい!淑女がする事じゃないだろう!」
「お兄様こそ、レオンのプレゼントなのよ!だから使う事を、邪魔しないでちょうだい!」
ブルーノからひょいと抱えられ、レオンはちょこんとサドルへ跨がります。
イナリの引いた設計のおかげで、レオンはムリなくゆったり跨り地面に足が届きます。
「ガォーさん、しゅっぱーつ! ガォー♪」
レオンが足でウンショと、地面を元気に蹴りました。
すると───。
『チリリリロ〜ン……♪ コロロ〜ン……♪』
気高く、澄んだ音が響き渡ります。
それは西国の人々が聴いたことのない、神秘的で美しい鈴の音でした。
「わあぁぁ……! ガォーさん、キレイなおうた、うたってるの! 」
レオンはキャッキャッと大喜びでハンドルをスルル~♪と軽く回し、頭の中の玉を転がし音を鳴らします。
――その瞬間を見ていたアルベルトとカトリーヌは「えっ!?」と目を見張りました。
「お、おぉ……!? なんだ、あの滑らかな動きは……!?」
「あんなに大きいのに凄く軽そうだわ!」
アルベルトとカトリーヌが、驚愕の声を上げます。
「ガォー♪ ガォガォー♪」
レオンはのほほんとドライブ楽しみ、周りの様子など知りません。
「お、俺、父上呼んで来る!」
バタバタバタ───ッ!!
「……坊っちゃま、楽しいですか?」
「たっのしいぃ───ッ♪ガォー……」
『チリリリロ〜ン……♪ コロロ〜ン……♪』
「……ようございました」
「……ブレないわね、ブルーノ」
カトリーヌは呆れた様子でブルーノを見ます。
気にもしないブルーノは、のほほんと眺め、レオンが楽しければいいのだと思っていました。
この乗り物をレオンから取り上げなければいいのです。
「「……」」
ヴィクトールとセバスは、今、目の前を元気に爆走するオーパーツを眺めていました。
『チリリリロ〜ン……♪ コロロ〜ン……♪』
美しい音色も然ることながら、普通ならガタガタと音を立てお尻に振動する泥道を、後ろの車輪に巻かれた「マツヤニ革張り」と樫の木の車軸が衝撃を吸収して、静かで最高の乗り心地の実現です。
さらに驚くべきはその曲がりやすさ。
「旦那様、素晴らしい光景でございますね。まさに未知と未知の遭遇……。レオン様に相応しい乗り物でございます」
悟り切ったセバスは、全振りで『レオンだから、ヨシ!』となりました。
そんなセバスをアルベルトは唖然とし、父ヴィクトールを見返します。
「ウ、ウムッ……」
ヴィクトールとてぶっちゃけ、『レオンだからヨシ!』な心境です。
前三輪の本体をモノコック構造で軽量にくり抜き、後ろ二輪のトレーラー箱を引き連れ、「5輪編成」という大作でありながら、3歳児の脚力でどこまでも加速していくのです。
「ガォーさん、はやーい! いっぱいつめるね!」
菜園の周りをガォーさんでスイスイと爆走しているレオンは、5輪編成が右に左に滑らかにカーブするたび、レオンの弾けるような笑い声が菜園に響き渡ります。
『チリリリロ〜ン……♪ コロロ〜ン……♪』
「……レオン様もお喜びだ。礼を言うぞ、イナリ」
ブルーノがレオンを見たまま呟くと……。
「フフ……、あれほど全幅と重量を削ぎ落としたのです。レオン様の『ガォー♪』の一言で、世界のどこへでも行けますよ」
パタパタと扇を仰ぎながら、優しく満足げに細めるイナリがいつの間にかいて、さらにその隣にはニヤついた顔のガツがいました。
「アイツ……」
レオンを見れば、シクがなにやらレオンと話をして、ぴょんたも腰に付けた飾りを見せています。
「……自分から前髪を上げると言いやがった。もうアイツは大丈夫だ」
ブルーノは何も言わずに、前髪の飾りを指差し話す穏やかな光景を見ていました。
「……すまない。教えてくれないだろうか」
突然あらわれた珍客に向かって、ヴィクトールはセバスを伴ってやって来ました。
もう何が起こってもどうでもなれ精神なヴィクトールは、技術的な好奇心とレオン安全確認のため問います。
「なぜあれほど滑らかに方向転換できるのだ?」
いきなり性能論に踏み込まれたイナリは、パタパタと仰いでいた扇をピタリと止め、眉間に深く皺を寄せます。
(……挨拶もなしに技術の話か。挨拶より構造に興味があるのか?)
苛立ちを隠そうともしないイナリに、ガツは宥めるようにポンと肩を叩き、一歩前に出て説明しました。
「……そう焦んなよ。あれはコイツが引いた設計図を元に、特殊加工を施した『軸受』を仕込んだのさ」
それはゼロンが丸薬技術を使い、練り上げて作成した小さくて硬い『玉、ワンボール』を、用いてペアリング加工し、首元の窪みを滑らかに転がり、3歳の弱い力でも指先ひとつでハンドルが「スルスル」回る仕様になっている。
非常に小さく加工困難なパーツだが、それゆえに常識を超えた動きを生む……。
そんな矛盾した技術に、ヴィクトールは唸るしかありません。
「しかし、これほどの代物を3歳児が重さを感じず動かせるとは……」
「それはねぇ。俺が無駄な贅肉を削ぎ落としたからさ。身軽な方が、人間も……動かし易いでしょう?」
ぴょんたがニンマリと嗤って説明しています。
ヴィクトールは納得しつつも、なおも困惑気味に尋ねるのは、彼の関心が技術以上に、終始レオンの安全面への考慮でした。
それを聞いたガツがヴィクトールと一緒に、レオンの方へ向かい、実物交えて説明します。
レオンはアルベルトとカトリーヌに、シクを紹介し、その二人も普通にシクに手を出し挨拶し、ぴょんたも一緒に笑っているようです。
「……ブルーノさんは、レオン様の傍へ行かないのですか?」
「……満員御礼だ」
「なるほど」
周りの人間と違う「東洋の顔」を持ち、瞳は「西洋の青」という、どっちつかずの異形と蔑まれ、誰とも手を繋げない天才大詐欺師……。
彼は小さな主のために、故郷の音を響かせるのです。
「祖国では、これを手の中で転がし万病を払うと言います。レオン様がどこへ爆走しようとも、この音色が邪気を払い、その居場所を報せてくれるでしょう」
『チリリリロ〜ン……♪ コロロ〜ン……♪』
切れ長の目をこれ以上にないほど優しく、誇らしげに細めて微笑むイナリに、ブルーノは「そっか」と短い返事をし、レオンを見つめ直します。
(やはりこの侯爵家は変ですね……)
イナリはハァと溜息ついて、穏やかな気持ちで目の前の温かな景色を眺めていました。
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