幸せなプルルンと、月夜の『人生ガチャ』
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
その頃レオンたちは────。
モグモグ♪モグモグ♪モグモグ♪
ダイニングテーブルで、アルベルト、カトリーヌ、レオンは、夕食に出された鷄のソテーを、無心に食べていました。
「……うまい!ミントが隠し味になってるな」
ひと口食べたアルベルトは感嘆の声を上げた後、すぐに料理を前に眉間に皺を寄せ、ふむ、とプロのように吟味し始めます。
「ホォ……、後味がスキッとして素敵だわ」
カトリーヌも頬をほんのり染めて、しみじみと料理を味わっていました。
そして────。
「うまうまなの!」
誰よりもとっても美味しそうに食べているのは、レオンです。
自分が採取したミントとオレガノの個性が、お互いをいい感じに譲り合って、最高のお友達関係を築いたようでした。
「生き生きしたハーブをレオン様が下さったので、早速使いました。お気に召して何よりです」
料理長のマルコが満面の笑みを浮かべ、手を胸に当てて優雅に頭を下げます。
それに倣うように、助手のニコも嬉しそうに微笑んで頭を下げました。
それを聞いたアルベルトとカトリーヌが、一斉にレオンへと振り返ります。
モグモグ♪モグモグ♪
「……?」
レオンは二人に見つめられてキョトンと首を傾げましたが、その小さな両頬はリスのようにパンパンに膨らんでおり、一生懸命に顎を動かしていました。
そんなレオンの様子を見たアルベルトとカトリーヌは、顔を見合せクスッと笑います。
さすがのほほん天使レオン、どこまでもマイペースです。
「それでお願いがあるのですが、レオン様のハーブをいくつか採取してもよろしいでしょうか?料理の研究に使いたいのです」
マルコがレオンに申し出ると、ニコも期待を込めた目でレオンを見つめます。
レオンはモグモグとしっかり飲み込んだ後、コクコクと果実ジュースを飲んで、フゥッとひと息つきました。
そして小さな人差し指を顎に当てて、「うーん」とゆっくり考えます。
レオンのハーブは雨の日続いた後、爆発的に増えた状態です。
(ハーブさんたち雨の日に、みんなで『おしくらまんじゅう』して、いっぱい増えてる。マルコとニコに、ハーブさんをいっぱいおすそ分けしたら、もっと『うまうまなの』ができるの?)
ならばレオンの答えは、最初から決まっています。
「いいよー。おいちーの、いっぱい、おねがいねー♪」
両手をパタパタさせて元気にそう言うと、またレオンは次のモグモグTime♪へ突入しました。
そんなレオンに「ありがとうございます!」とマルコとニコが言うと、レオンの前に、とっておきの美味しそうな一品が新しくサーブされます。
「レオン様、これは私たちからの感謝の気持ちです♪」
マルコからのプレゼントは、真っ白で丸い、プルンとしたお山のようなデザートでした。
上からは綺麗な黄色のソースがとろりとかかっており、てっぺんには小さなミントの葉がチョンと可愛らしくのっています。
目の前のプルプル揺れる白お山に、レオンはスプーンを恐るおそるさすと、中からミルクを吸ったふっくらした干しりんごとレーズンが顔を出しました。
綺麗なオレンジ色のソースをたっぷりと絡めて、小さなお口へハムッと咥え込みます。
「……んんーっ!」
レオンはパッと目を輝かせました。
アーモンドのコクが口いっぱいに広がり、鼻からカモミールのリンゴに似た甘い香りと、オレンジの爽やかな風味が優しく抜けていきます。
牛ゼラチンの匂いなんて、カモミールとオレンジの香りで消え去っていました。
「おいちい! お口の中、プルルンなの!」
レオンはスプーンを振り回して大喜び♪
すぐ隣のアルベルトとカトリーヌは、ジ──ッと熱い視線でマルコに訴えます。(僕たちの分は!?)
それを見たマルコは、涼しい顔でニコに向かって言いました。
「ほらな!カモミールにはビターオレンジを合わせるのが一番だって言ったろう?」
ニコへフフン♪と得意げに、マルコはウインクしてみせたのです。
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侯爵家の広大な庭園では、昼間のうららかな空気とは一変し、肌を刺すような不穏な空気が立ち込めていました。
「……なんだ?」
月明かりの下、深黒の木陰に蠢く者たちが集っていました。
「……なんだとは、ご挨拶じゃねぇか?」
「まったくですよ。用がないならいませんよ」
静寂を破って現れたのは、渋い声のガタイのいい男と、切れ長の目の男です。
数メートル先には、仲間らしき者が二名待機しているようです。
ブルーノは全身の神経を研ぎ澄ませて、静かに警戒しつつも、目の前の男たちをジッと見つめていました。
そんなブルーノの硬質な警戒ぶりを面白げに眺めた後、ニヤリと不敵に嗤い、切れ長の目の男はゆったりとした動作で、扇を広げてパタパタと仰ぎながら、退屈そうに夜空の月を眺めます。
「用件を言え」
無駄な言葉を一切省くブルーノに、首の後ろをガシガシと掻きながら、どこかのんびりとした様子で切り出しました。
「……実はな。ウチの者がレオン坊ちゃんから名を賜ってな。それなら俺たちも名を賜わろうかという話になったんだ。だから一応レオン坊ちゃんの守護者たるお前に、筋を通しておこうと思ってなぁ?」
気楽な調子で軽く言うガタイのいい男に、ブルーノの眉間が皺を寄せていきます。
まるで「坊ちゃんに近づくな」と言わんばかりの威圧感を放ち始めたブルーノに、扇をパチリと閉じて、切れ長の目を眇めて言いました。
「……独占欲が強すぎやしませんか?ブルーノさん」
「……」
世界を震撼させる死神のトップが、「3歳の幼子に名前をつけてもらうから、邪魔をするな」と交渉にきている──。
そのあまりにも公私混同だが、実力だけは本物な奴らに、ブルーノは深く、深く、心の底から溜息をつき冷ややかに言います。
「……あなた方はレオン様を知らな過ぎる」
「そりゃ、オカン役なお前らに張り合おうなんざ思ってねぇよ」
「……」
即座に言い返されたセリフに、ブルーノはジトリと不愉快そうに睨み返しますが、睨まれたガタイのデカい顔に傷のある男は、これっぽっちも気にしません。
「……フフ、ぶぅちゃん。そんなに目くじら立ててはいけませんよ。せっかく可愛い名前を賜ったのですから」
切れ長の目の男が愉しげに嗤っています。
「……それはぬいぐるみの名だ。それを知ってなお、レオン様から名を賜りたいと?」
ブルーノの睨んでいた目が、一転して「わけがわからない」と言いたげに、呆れ果てた眼差しへと変わりました。
しかし男たちは不敵に笑います。
「おもしれーじゃねぇか。どんな未知の世界が開くのか」
「まるで人生ガチャではありませんか?名は一生ついて回りますから」
心底この状況を楽しんでいる奇人たちを前に、ブルーノは「理解できない」とばかりに小さく頭を振りました。
……彼らが望んでいる事は、当たりくじが存在しない、ある意味究極の罰ゲームみたいなものです。
「……わかった。後ほど落ち合おう」
ブルーノはそう言い残すと、翻って背を向けた瞬間、闇の中へ消えました。
案外あっさりと了承したブルーノに、ガタイのデカい傷のある男は、片眉を上げて傍らにいる切れ長の目の男を見ます。
切れ長の目の男は優雅に扇を広げながら、可笑しそうに言いました。
「……お前らも、ぶうちゃんになれ。とでも思っているのでしょう」
パタパタと扇を仰ぎながら気切れ長の男は愉しげに笑うと、ガタイのいい男は肩を竦めて目をクルリと回しました。
ふと遠くの方をみれば、名を賜わったぴょんたと前髪の長い青年が、何やら微笑ましいやらかしをしているようです。
「……まぁ、いいじゃねぇか」
「そうですねぇ。のんびりと待っていましょうか」
ガタイのデカい傷のある男と切れ長の目の男はは、遠目で年若い二人(やらかし組)の気配を感じながら、のんびりと月夜の庭園を楽しみ始めます。
「……いい夜ですねぇ」
切れ長の目の男はパタパタと優雅に扇を動かながら、白く輝く月を眺めていました。
「雨上がりの空気は澄んでいるからなぁ」
連日の雨に洗われ尽くした漆黒の空に、青白い月暈を滲ませた満月が、世界の境界線を照らすようにくっきりと浮かび上がっています。
まるで彼らの門出を祝うような──穏やかで、どこか鋭さを秘めたそんな月のある夜でした。
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