紫紺のテラス、極秘任務の『哀しい丸投げ』
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
プライベートでバタつき、投稿ばばらつきます。
申し訳ありません(´・ω・`)ショボ-ン
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
のんびりお付き合い頂ければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
「ブルーノ、かわいいの♪」
レオンがニコニコ笑顔で呟くと、傍らに立つブルーノの鉄面皮はどこへやら、所在なげに視線を泳がせて、自分をモデルにしたアルテミアを殺気交じり視線で睨みます。
しかし当のアルテミアは、「ウフフ……」と妖艶に微笑むばかりで、どこ吹く風です。
「……坊っちゃま、申し訳ございませんが、違う名前にお願いします。ややこしいので……」
黒髪に右側の月光を思わせる銀のメッシュと、フォレストグリーンの瞳のブルーノと似た『犬のぬいぐるみ』を、見比べるレオンは「……ブウちゃん」と呟きました。
── 一斉に生暖かい視線がブルーノに集まります。
「ブウちゃん」というあまりにも愛らしい響きに、誰もが笑いを堪えるのに必死です。
「……コホン! とりあえず話を詰めたいので、アルベルト、カトリーヌ、レオンと一緒に一度下がりなさい」
ヴィクトールはこのままではレオンの「観察会」で一日が終わってしまうと判断し、慌てて場を軌道修正しました。
それに対しシオンは、ゆったりと深みのある微笑みを返します。
アルベルトとカトリーヌ、そして大きなブルーノぬいぐるみを大事そうに抱えたレオンは、ブルーノに伴われてテラスを退出していきました。
子供らが去ったテラスに、再び琥珀色から紫紺の静寂へと、夜の帳が下りてゆきます。
「……レディ、アレはまたなぜ?」
ヴィクトールは椅子の背にもたれかかり、先ほどのぬいぐるみを思い出して呟きました。
するとアルテミアは肩を小さく竦めて、ただ愉しげに「ウフフ」と笑うばかりで煙に巻きます。
ヴィクトールは本日何度目になるか分からない深い溜息をつくと、椅子の背から身体を起こし、傍らに音もなく立つゼロン、そして目の前に佇むシオンとアルテミアへ、視線で着席を促します。
セバスがランプを静かに持ち運び、辺りをほのかに照らしました。
「座ってくれ。……さて、ここからは大事な話をしよう」
カチャリ、と上品な音を立てて、セバスが流れるような手際で淹れ立ての紅茶を各席へと配っていきます。
温かい湯気と共に、華やかな紅茶の香りがゆったりとテラスに広がりました。
「……大水源の件、すでに知っていますよ。古代遺構のプラントを引き当てるとは……おめでとうございます、と言えばいいのでしょうか?」
シオンは長い指先で優雅にティーカップの持ち手に触れ、形の良い唇を滑らかに動かしました。
「……全くです。我が事ながら、空いた口が塞がりませんね」
ゼロンは腕を組み、やれやれと首を振って椅子の背にもたれかかります。
「アルベルト様も、本当に退屈させない面白い殿方ですわね♪」
アルテミアは扇で口元を覆い、肩を揺らしてクスクスと笑いました。
今後木漏れ日商会を運営する要のシオン、ゼロン、アルテミアの三人が、アルベルトの規格外の『やらかし』を、心底楽しんでいるようです。
(──ならば、このまま彼らに『丸投げ』してしまってもいいのではないか……?)
ヴィクトールは、背後に控えるセバスと一瞬だけ鋭い目配せを交わしました。セバスは無言のまま、静かに一度だけまぶたを閉じます。
よし、とヴィクトールはゴクッと唾を飲み込み、意を決して身を乗り出しました。
「……ならば、そちらにすべてお願いしてもいいだろうか。レオンの菜園の隣を、これ以上騒がせたくはないのだ」
そう告げるヴィクトールに、シオンは「待ってました」と言わんばかりに笑みを深めました。
「もちろんにございます。どうぞ、私どもに『丸投げ』して下さい」
シオンはカップをそっとソーサーに戻すと、月光の髪をさらりと揺らし、美しいお辞儀と共に極上の笑みを浮かべ返事をします。
「ウフフ……! 悩みから解放された晴れやかなお顔も、レオン様に似てとっても可愛らしいですわ。クスクス……」
「っ、……!」
あまりの安堵感から、ヴィクトールは思わず顔を「パァーッ」と輝かせて満面の笑みを零してしまいました。
しかしそれをアルテミアから、容赦のない妖艶なツッコミで弄られてしまいます。
ハッと我に返ったヴィクトールの横から、冷ややかな視線が突き刺さりました。
セバスがわざとらしくコホンと小さく咳払いをした後、ヴィクトールのカップへ手際よく紅茶を、無言の威圧とともにゆっくりと注ぐ入れるのです。
ここからいよいよ本題の商談へと移ります。
ゼロンがまず、懐から一つの小さな容器を取り出しました。
「こちらがレオン様が考案されたバームをベースに作成した『美容バーム』です」
蓋を開けると、美しい緑色のバームの中に、キラキラと輝く繊細な粒子が見えました。
ヴィクトールがそれを指ですくい、手の甲に塗ってみます。
「……素晴らしく伸びがいいな。すっと肌に馴染み、ベトつき感もない」
パッと顔を上げてゼロンを見ると、口の端をニヤリと上げ、満足げに腕を組んでいました。
「……では、我が商会がすでに現地を調査し、構築を進めている『大水源地下プラント』の構造図をご覧いただきましょう」
シオンが流れるような手つきで、懐から一枚の羊皮紙を取り出し、テラスのテーブルの上へ広げました。
仄かに光るランプの下、そこには細密な線で描かれた、驚くべき地下工場の図面が記されていました。
ヴィクトールとセバスは思わず、身を乗り出してその図面を見ます。
「これは……小麦の水車小屋の構造をベースにしているのか?」
「はい、一言で申し上げれば、古代遺構のポテンシャルをフルに活かした『自動型パウダー製造ライン』にございます」
シオンから澱みのない怒涛の説明が始まりました。
その内容は、『大水源の遺構』を『噴水の遺構』とし、表をレオンの水場にカモフラージュ。
地下では豊富に湧き出る水の勢いを利用し、水車で自動粉砕機を動かして、「雲母パウダー」を生産するというものです。
それだけの施設でありながら、使う予定の水量は1割は水場、2割が地下(週2動かす程度)と、周囲の環境や全体の水量に不自然な変化は、さほど感じられない計算でした。
「……この、横長(6m×10m)のワンフロアだけで、美しく無駄のない製造ラインが完結いたします。これなら限られた人数の管理・隠蔽も極めて容易にございます」
シオンが説明を終えると、テラスにはしばしの沈黙が流れ、ヴィクトールに至っては、驚愕のあまり愕然としています。
「……そ、その、計画自体は素晴らしいのだが、我が庭園に無害な『キラキラ排水』とやらで夜な夜な発光するようになる?、という……」
ヴィクトールの声が次第に震えていく中、その後をセバスが引き継ぐように、言葉を紡いでいきました。
「そのようでございますね、旦那様。……手作業で雲母を擦る必要がなくなったのは、文字通り快挙なのではないかと……?つまり希少性の高い雲母パウダーを、自動で大量生産ができる、ということじゃございませんか……」
セバスが悟りきった菩薩のような顔で笑っています。
ヴィクトールは思わず、ガシッと両手で頭を抱えました。
ただののやらかし現場である大水源の隠蔽をお願いしたはずが、なぜ我が家の敷地内に「国家機密レベルの!お宝製造工場」が爆誕するという話にすり替わるのだ?!
セバスがこれ以上ないほど穏やかな顔で紅茶を注ぎ足すと、アルテミアが「ウフフ……」と楽しげに小悪魔のように首を傾げます。
「これでレオン様の秘密の菜園の隣は、いつでも静かで安全な『ただの美しい噴水庭園』になりますわ。ね、旦那様?」
ヴィクトール父上は再び、激しい胃の痛みと、「このままコイツらにすべてを丸投げすべきか、せざるべきか」という究極の選択を迫られ、引きつった顔で胃を押さえるしかありません。
――しかしヴィクトールにもはや拒否権などなく、隠蔽工作を得意とする彼らにお願いする他ないのです。
こうしてすべて『丸投げ』することを、涙目で決意したヴィクトールの受難は、これからもまだまだ長く続いていく予定のようです。
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