秘密のハーブオイルと、木漏れ日商会
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
のんびりお付き合い頂ければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
商会の準備が急ピッチで進められている頃、レオンは続く快晴に胸をワクワク踊らせていました。
菜園の近くで何かアルベルトが発見したようで、色んな人が慌ただしく出入りしています。
その中には『ぴょんた』の姿と、前髪の長い青年もいます。
目が合うと手を大きく振って挨拶するぴょんたと、何故か泣きそうな目で訴える前髪の長い青年……。
「……?」
レオンはキョトンと頭を傾げ、もふもふと茂るミントをはじめ、爽やかなラベンダー、甘い香りのカモミールに、シャキッとしたローズマリーを小さな手で丁寧に摘み取っていきます。
ついでに大好きなレモンバームも、プチプチと収穫しました。
鮮やかな黄色のマリーゴールドもたくさん採取して、今日はこれらをオイルに漬け込み、特製の「保存用ハーブオイル」を作る予定なのです。
「土べちゃべちゃ。ほりほりまだ。……残念」
トコトコ、ペチャペチャ……。
まだ雨に濡れた地面を歩き、レオンはたくさんのやりたいことを考えていました。
トウモロコシはグンッと大きくて、 今のレオンはトマトと背比べ、星の花が胸の辺りに咲いています。
何より枝豆が白や紫の花が咲き、うぶ毛の生えたちっちゃなサヤが誇らしげに顔を覗かせていました。
「えだまめさん、いいこ、いいこ」
レオンは自分より背丈の低い枝豆に、優しくヨシヨシとして、トコトコとニコのいる厨房へ向かって歩き出しました。
侯爵邸の広々した厨房のテーブルの上には、レオンが菜園から摘んできたばかりのミントやラベンダー、マリーゴールドたちが、色鮮やかに並んでいます。
予備厨房で何をやらかすかわからない二人に、マルコはヴィクトールから監視をお願いされていました。
厨房のテーブルに頬づえをついてのんびりと、ニヤニヤしながら眺めています。
「ニコ、いっしょに、ちちんぷいよ!」
「はい、レオン坊っちゃま! 今日はハーブオイル作りですね。何から始めましょうか?」
ニコはエプロンの紐をきゅっと結び直し、レオンは短い指でハーブを優しく触りながら、のほほんとした調子で説明します。
【簡単ハーブオイル作り】
① ぱっぱっ、して、かりかり、なの!
ニコの解釈
ハーブに水分が残っていると、オイルが傷むので、洗った後はしっかり水気を取り陰干しで、完全に乾燥させることが一番の大事なポイント!
② ぽんぽん、ぎゅっぎゅ、なの!
ニコの解釈
煮沸消毒した清潔な瓶を用意し、そこに乾燥したハーブを瓶の半分から8分目まで、ギュッギュッに詰めて、何種類か混ぜても綺麗ですね!
③ オイルさん、どばー、なの!
ニコの解釈
ハーブが完全に浸るまでオイル注ぎ、ハーブが空気触れると傷まないように、完全に沈めるのがコツ!
④ おひしゃまに「おいしくなーれ」なの!
ニコの解釈
日当たりの良い窓辺に置き、1日1回瓶を優しく振って、約2週間後に清潔な布でハーブを「ろ過」してオイルだけを別の小瓶に移せば完成!
「……ん。これで、オッケー!」
レオンが満足そうに胸を張ると、ニコは目を輝かせて拍手をしました。
「素晴らしいです! これなら火も使わないので、レオン坊っちゃまでも安全おままごと気分で楽しく作れますね!」
「うん! ボク、まいにち、ふりふりよ♪」
レオンは嬉しそうに、ガラス瓶にオイルをトトト……と注ぐニコの手元を、じーっと見つめています。
「……でもろ過せず、そのままハーブ入れていても可愛いですよね?レオン坊っちゃま」
オイルを入れ終えて、中で揺れるハーブを見てニコは思いました。
レオンはテーブルに両肘をたて、頬づえをつきながらオイル中のハーブを眺めています。
その隣にはマルコも一緒にハーブを掲げて、揺らしながらハーブを眺めていました。
「ニコ、そのまま入れててもいいが、多分もって1ヶ月程度じゃないか?漬け込んだままだと濁るだろう」
「マルコ、せいかい♪まいにち、ふりふりで、ハーブさんに、ぎゅーってあげるの!」
「なるほどな。毎日振って対流を起こすことで、油にハーブの薬効成分を限界まで溶かし出すってわけか。レオン様、おままごとにしてはえげつない理論だな……」
手を叩いて喜ぶレオンに、ニコは「なるほど……」と、言って思案を始めました。
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夕刻の柔らかな光が、侯爵邸のテラスを琥珀色に染め上げてゆく……。
澄んだ空気を彩る光のグラデーションが、その美しい場にふわりと華を添えていました。
その場にいるのは、ヴィクトール、アルベルト、カトリーヌ、レオン。
そして、セバスとブルーノもいます。
「お前たちに知らせておく事があって、この場を設けた。まず近々、木漏れ日という商会が立ち上がる予定だ。ゼロン殿は先日紹介し、知り合いになったと思うが、彼はエレーナの知人でな。つまりその流れで、泥石鹸の事業に商会から関与して貰う事になったのだ」
ヴィクトールの後を引き継ぐようにゼロンは一歩前に出ると、流れるような動作で後ろに控えていた二人を促しました。
彼はこの商会の薬師兼相談役で、レオンにとっては楽しい知的な遊び仲間です。
「――本日は、我が『木漏れ日商会』の要となる二人が、立ち上げのご挨拶に参りました。わたくしの旧知の友であり、その腕は私が保証いたします」
ゼロンの落ち着いた声が落ちた後、静かに二人の人物が前に進み出ました。
まるで月光を織り上げたかのような銀髪を揺らし、優雅で柔らかな微笑みを称え、仕草の動作一つ一つに、王侯貴族すら凌駕する優美さと気品が伴っています。
「皆様、初めまして。シオンと申します。お目にかかれて光栄です」
低く心地よいバリトンの声が耳に柔らかに聞こえ、優雅に下げられたその美しい髪に、レオンは思わず感嘆のため息をつき、頬を赤く染めました。
「シオンしゃん、キレイ。ボクとおなまえにてるの」
キラキラした目で、自分と似た響きの名前を持つ美丈夫を見つめるレオン。
その無垢な称賛にシオンの微笑みは深みを増し、わずかに喉仏が動きます。
「確かに一字違いだがな、レオン。シオンは男だぞ? 綺麗でも、だ」
傍らで見ていたアルベルトが、弟のあまりの心酔ぶりに不安な表情で指摘を入れました。
するとカトリーヌが、呆れたようにアルベルトへ視線を向けます。
「お兄様、そんな事言わなくていいのです。逆に嫌味になりますわ。シオン様の美しさは、性別を超越した『芸術』ですもの!」
「俺はそんなつもりで言ったんじゃない!」
慌てて弁明するアルベルトに、シオンはそんな家族のやり取りを、柔和な微笑み一つで受け流し、「分かっております」と伝えるように静かに目を細めました。
その立ち振る舞いには、どこか浮世離れした余裕が漂っていて、レオンはシオンの美しさに圧倒されつつも、ふとその隣に立つもう一人の人物に視線を移します。
そこにいたのは、真紅のドレスを艶やかに着こなした妖艶なお姉さんこと、アルテミアでした。
彼女は先ほどまで鋭い視線で辺りを見回していたのですが、どこへ隠したのかレオンの前では完璧な「愛嬌」を振りまいています。
「フフフ……」
鈴を転がすような笑いを上げて、アルテミアはドレスの裾を翻して、レオンの目線まで腰を落としました。
微かに薫る鮮やかさが、彼女自身の持つ抗いがたい魅力に、レオンの鼻がピクッと動きます。
「レオン様、もふもふ好き?」
悪戯っぽく首を傾げて囁かれたその言葉に、レオンはその「もふもふ」という魅惑の響きで、瞳をいっそう輝かせるのです。
侯爵邸に集った「有能すぎる」面々が、平穏なティータイムを守りつつ、どれほどの「裏の顔」を隠し持っているのか──。
それをレオンが、知る由もありません。
なのでレオンは無邪気に「うん、だいすき♪」と、陽光そのもののような「にぱぁ」という笑顔を振りまいた瞬間───。
テラスの空気が物理的に揺れました。
「ぐふぅ……っ」「……くっ……!」
重なり合うような呻き声が、何処からか漏れ聞こえます。
近くには悶絶し胸を押さえるゼロンや、顔を背け震えるシオンと、「て、天使!」と上を仰ぎ見るアルベルトがいる為よくわかりません。
他の大人たちもシオンのように、顔を背けていました。
そんな周囲をよそに、当のレオンはのほほんと目の前の綺麗なお姉さんに夢中です。
優雅な貴族を装う彼らの防壁を、レオンの無邪気な一撃が粉々に粉砕しています。
アルテミアはその機を逃さず、どこに隠し持っていたのか、ふわりと大きな黒い犬のぬいぐるみを差し出しました。
「さあ、どうぞ。レオン様」
そのモフッとした大きな『黒い毛のわんちゃん』は、木々色の瞳と、片方の耳が銀色だったのです。
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