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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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夢の啓示と、石の記憶

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

間違えて投稿ミスしてしまいました。

ひとときのほほんとよろしくお願いします。

のんびりお付き合い頂ければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)

 







 レオンは持っていた小さなスコップをそっと脇に置き、もっさりとしたミントの1株を両手でソッと持ち上げました。

 それを遠目で見たアルベルトは、こみ上げる悪夢の光景を必死に抑え込み、努めてにこやかな声をかけます。


「レオン……そのミントをどうするつもりだい?」


 レオンは一瞬……、不思議そうにキョトンとし、すぐに花が咲いたような笑顔で答えました。


「お引っ越し♪」


 元気いっぱいのその言葉により、アルベルトの脳裏にあの忌まわしい光景がよぎります。

 庭一面を覆い尽くし、屋敷の壁まで這い上がる無限のミント、ミント、ミント……。

 見ればレオンが手に持つミントには、まだ鉢がなく剥き出しの根が、今にも庭の土に飛び込みたそうに揺れている……。


「……あ。……ああ……っ」


「おにいちゃん? どちたの? ……ごめんちゃーい、しゅる?」


 レオンが小首を傾げミント()()した事を思い出し、目を細めてニンマリと笑いました。


「そ、そのミントさんのおウチは、兄ちゃんが作ってやる。 だから今日のお引っ越しは止めようか?」


 レオンの考えたのと、様子が違うアルベルトに、レオンは「うっ?」と短く声を漏らし、首をひねって兄の顔をじっと見つめます。

 アルベルトは引き攣りそうな頬をなんとか持ち上げ、本日一番のニッコリとした(しかしどこか懇願するような)笑顔を浮かべていました。


「……わかった」


 なんかよくわからないけれど、レオンは素直に頷くと、ミントをぽいっとアルベルトの手に預けます。


(これでいい。あの悪夢のような未来は、……未然に防がれた)


 安堵の溜息をつくアルベルトですが、レオンはちゃんとニコに用意してもらった「鉢」に、お引っ越しする予定でした。







 アルベルトはレオンの立ち去る後ろ姿を見ながら、ホッと胸を撫で下ろしました。

 そして悪夢で「水が異様に溢れていた場所」に向かいながら思案します。


(……気になるな。試しに掘ってみるか?)


 最近もトラップ用の穴掘りをしたばかりです。

 アルベルトは納屋に向かい、道具を取りに行きました。

 手には無骨なスコップが握られています。

 さっそく狙いを定めた地面へガッと突き立て、掘り始めました。


「……アルベルト様、手伝いましょう」


 少し経つと、庭師のブルーノが声をかけます。

 彼はアルベルトの奇妙な行動には黙って、自分専用スコップを土に突き立てました。


「ブルーノ。笑わないでくれよ。夢を見たんだ。レオンのミントが……ミントがテロのように増殖して、世界を埋め尽くす夢をね。その時ここから水が溢れて、ミントが無限増殖するんだ。単なる悪い夢だとは思うんだが、どうしても()()が気になって……」


 アルベルト自身、今の自分がわかりません。

 ただ安心したい気持ちはあるのです。

 ブルーノは真面目な顔で頷き、アルベルトが示した場所を掘り下げていきます。

 レオンの菜園に近い場所は、柔らかく湿った土で掘り進めるのは容易でした。

 やがて数分も経たないうちにアルベルトの持つスコップの先が、土の中で「カツッ」と硬い感触に当たったのです。


「……? 石か?」


 アルベルトの手を止めると、ブルーノが跪き石の周囲の泥を払いのけました。


「……アルベルト様。これはただの石じゃありませんよ」


 泥の下から現れたのは精巧にカットされた白灰色の石材の角、しかもその表面には長い年月と、泥に晒された柔らかなレリーフが刻まれていました。


「ブルーノ、……これは?」


「石組みです。しかもかなり大規模な……。アルベルト様、あなたの夢はあながち間違いじゃなかったのかもしれない」


 ブルーノはさらに周囲を広げ掘り進めると、石組みの隙間から、まるで呼吸をするようにプクッと澄んだ水が湧き出てきます。


 地中深くに眠っていたモノが、再び脈打ち始めました。






 ****************






 ──会合があった夜。


 視線の先では幼いレオンが、雨の中をポテポテパシャパシャと必死に駆けていた。

 バランスの悪い足取りで一生懸命に前進し、のほほんとした風貌に似合わず、どこか妙な使命感に燃えているようにも見えた。


 あまりにも平和で、のどかな光景……。


 自分たちが手にする冷たい鋼の感触が、この場所では酷くひりつき、異様な違和感を放っている。


「はぁ……、これを壊そうとしたのか、俺たちは……」


 深く、重い溜息がこぼれる。

 仕事とはいえ、この温かな光景を蹂躙しようとしていた自分たちが、ひどく情けなく滑稽に思えてくる。


「……騙されたな」


 後ろに控えていた渋みのある声が鼻で嗤い、深く深呼吸をした。

 まるで腹の中に溜まった濁った怒りを、すべて吐き出すような仕草だった。

 実際、その一言を境界線にして、──場にいた者たちが、一瞬で冷酷非道へと意識が切り替わる。

 依頼主たちが並べ立てた「大義名分」という名の二枚舌に呆れ、それがどれほど欺瞞に満ち溢れ、我等を馬鹿にしたものなのか、この光景を見れば一目瞭然だ。


「ククッ……」「アハッ……」


 さらに後ろに控えていた二人の口から、抑えきれない忍び嗤いが漏れ出した。

 それは自嘲であり、同時に、明確な殺意の転換点でもある。


「報復は必要……。 礼儀大事」


 もう一人は短刀の刃を指でなぞる。

 自分たちを使い捨ての駒として、この平和な庭に送り込んだ不届き者たち……。

 彼らには、いや、……彼ら周辺の連なる者すべてに、決して癒えることのない()()()()()を教える必要がある。


「……よし!方針変更だ。この庭を荒らす奴は俺たちの敵だ」


 そう言うと男たちは音もなく闇に溶け込んだ。

 後はただ、レオンのおぼつかない足音だけが、庭園にのほほんと響いていた。









 「……ブフッ、クックックッ。ねぇ、フッ、フヒッ……!」


「……レオン様、最強。よくやった……!」


 深夜の廊下、レオンのミント襲撃を見送った後、派手な髪の男は床にうずくまり、必死に笑いを堪えていた。

 前髪の長い青年は、普段の死んだような目に、珍しく生き生きとした喜びの感情を宿している。

 そんな彼らの様子を、扇を手にした切れ長の目の男が、呆れたような顔で見下ろす。


「まったく、勝手にレオン様に接触などして……ブルーノさんに知れたら、本当に殺されますよ?」


「……レオン様、可愛い。ホワホワで、やわやわ。気持ちいい……」


「おっ! 珍しく長文だねぇ。でもね、俺なんてレオン様から直々に『お名前』を貰っちゃったもんね♪」


「……名前?」


「「ハッ?!」」


 皆が驚愕きょうがくする顔を見られたのがよほど嬉しいのか、派手な髪の男は満面の笑みを浮かべて胸を張った。


「俺、これから『ぴょんた』だから!」


「「「はぁ? ……ぴょんたァ?!」」」


「なぁーに?」


「呼んでねぇよ!」


 顔に傷のあるガタイの大きい男が、渋い声ですぐさま鋭いツッコミを入れる。


「……僕も、ほしい」


 ジィ─────ッと羨ましげに「ぴょんた」を凝視する前髪の長い青年に、当の本人はケラケラと笑いながら言い放った。


「なら、おねだりして貰えばいいじゃん!」


「た、確かに……」


「「確かにじゃない!!」」


 思わず同時に声を荒らげ、年齢的には上の男たちは余りにも自由な二人に呆れ果てる。

 しかし──、確かに新たな名を冠するというのは、今後の隠蔽活動において「正解」かもしれない。

 これから「木漏れ日商会」として表舞台をウロウロすることも増えるだろう。

 今さら血塗られた過去の名前など必要なく、あの幼い主から新たなコードネームを授かるというのは、隠蔽工作としても非常に筋が通っている。

 ──大人二人は視線を交わした。

 どうやら考えていることは同じのようだ。


 ──久しぶりに戻ってきた光のある表の世界。


 あのおチビちゃんは、自分たちに一体どんな名前をつけてくれるのだろうか。


「……悪ふざけが過ぎるか? なぁ?」


 渋い声で、まるでおもちゃを前にしたかのような、不敵な雰囲気を漂わせる顔に傷のある男が嗤う。


「……最高にスリリングなルーレットなのでは? 『当たり』が一本も入っていない気はしますけどねぇ」


 切れ長の目の男も楽しげに忍び嗤いを漏らし、目の前で「ぴょんた」と名付けられた男の、その由来となったであろうぴょんと跳ねた髪を見つめた。

 当のぴょんたは、髪をユラユラと揺らしながら、おどけた態度で前髪の長い青年をからかい続けているのだった。






読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しくネタになることも♪

誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)

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