レオン次回のやらかしは……。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
のんびりお付き合い頂ければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
用事を終えて帰宅したアルベルトは、使用人の報告に耳を疑いました。
「……今朝、父上が二度も大絶叫しただと?」
原因がレオンだと察したアルベルトは、真相を確かめるべくヴィクトールの執務室へ向かいます。しかし重厚な扉の向こうから漏れ聞こえてきた父とセバスの会話は、あまりにも不穏すぎるものでした。
『……あの粘着力は凄まじいぞ。激痛には参った』
『皮膚から離れないとは、恐ろしいですね』
壁に耳を押し当てるアルベルトの背中に、冷たい汗が流れます。
『一気に剥がした瞬間、皮ごと持っていかれる……』
『真っ黒なドロドロに変貌し、体内のものを引きずり出すとは、レオン様は未知数ですな』
『全くだ。根こそぎだぞ。……ハァ、参った』
アルベルトの脳内で、最悪のパズルが完成してしまいました。
(体内のものを根こそぎ引きずり出す激痛!?)
セバスが「レオン様の壺は寝室の机に置いております。ブルーノ様に治験を……」と聞き、アルベルトの恐怖は限界を迎えます。
(まだ使っていないモノが、寝室にあるのか……!)
彼は静かにその場を離れると、父の寝室へ忍び込み、机の上の壺を強奪。それを懐に深くねじ込み、脱兎のごとく廊下を駆け抜けました。
目指すは、あの「死神」のいる地下牢です――。
****************
ヴィクトールに「ゼロンを連れて来い」と命じられ、ブルーノは地下牢へと足を運びました。
しかし、地下への階段を降りた瞬間、元隠密であるブルーノの耳に、尋常ではない泣き叫ぶ声が飛び込んできます。
(……何事だ? 何故あんなに泣き叫んでいる?)
警戒しながら奥へと進むと、そこにはアルベルトとエドワード、そしてベネディクトの姿がありました。彼らの手元にあるのは、アルベルトがヴィクトールの寝室から持ち出した例の壺です。
どうやらその中身を使って、勝手に「治験」を行っている真っ最中のよう……。
「うっぎゃぁぁ! ゃ、やめてくれ、お願いだから……来ないでくれぇ!!」
狂ったように首を振る男の足を、目の細い男と顔に傷がある男が、力ずくで押さえつけています。
そこへゼロンが容赦なく黒いペーストを「ペタリ」と貼り付け、観察を始めました。
「ぎ、ぎゃぁぁぁあああ!! 身体の中に何かが入り込んでくる!! 抜ける! 魂が抜けるぅぅ!!」
ゼロンは「ブツブツ……」と呟きながら、紙に凄まじい勢いで記録を書き記していました。
気配を殺して近づいたブルーノに気がつくと、エドワードが声を潜めてきます。
「ブルーノ。実は……ベネディクトに、レオンのことがバレてしまったんだ」
その言葉に視線を巡らせれば、アルベルトが「すまない……」と言わんばかりの、実に申し訳なさそうな顔をして縮こまっています。
ブルーノはため息をつきつつも、内心で笑っていました。
(どちらにしろ、そろそろ大司教には、こちら側に立って頂きたいと思っていたしな……)
ブルーノは新たな「協力者」を巻き込むべく、静かに微笑みを浮かべ歩き出します。
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小執務室のさらに奥まった、高い防音性を誇る隠し密室───。
集まった数名の視線が交錯する中、ベネディクトは本日何度目かも分からない深い溜息をつき、目の前のヴィクトールをジッと見つめました。
泥石鹸の件から始まった世界を揺るがす大騒動……。
それがようやく下火になったかと思えば、レオンは次の新たな「仕掛け(やらかし)」を繰り出してきているといいます。
しかも王家と侯爵家は総出でそれを必死に隠蔽していたのです。
すべては亡きエレーナの願いを叶えつつ、幼子レオンの安寧を守るために――。
さらに話を聞けば、彼らは事態を揉み消すために「国際規模の隠蔽工作団」まで組織し、暗躍しようとしています。
事態のスケールが自分の想像を遥かに超えてていることに、ベネディクトはもう一度、肺の空気を全ての吐き出すように、溜息をつきました。
「……すまん、強めの酒を頼む」
ぽつりと溢れたその言葉に、部屋の一角に控えていたセバスが、表情ひとつ変えずに極上のアルコールを準備し始めます。
グラスを受け取ったベネディクトは、聖職者にあるまじきことに、心の中で盛大に神を呪いたくなりました。
(エレーナ……。お前の血を引いたレオンは、一体どれだけの国を巻き込むつもりだ……ッ!)
毒を煽るように強い酒を喉に流し込む大司教の姿を、ヴィクトールやアルベルトたちは、複雑な表情で見守るしかありません。
「……とにかく、今回の『デトックス液?』とやらもレオンの『やらかし』か。……しかしあれは失敗作だと聞いていたが?」
ベネディクトは、先ほど地下牢で見た被験者のこの世の終わりのような絶叫と、ゼロンから得た報告を基に尋ねました。
あれほど悲鳴を上げる代物が、まともな完成品とは到底思えません。
しかし問い詰められたヴィクトールは、気まずそうにふいと目を逸らしました。
「いや……、その後完成している」
「はい!皮膚の汚れのみならず、体内に溜まった日々の疲れや老廃物まで排出し、極上の癒しを堪能出来るのでございます。……皆様も、是非一度ご体験されてはいかがでしょうか?」
セバスが優雅な微笑みを浮かべながら、有無を言わせぬ無言の圧を放ちます。
その笑顔に、エドワードとベネディクトは「体験しろってことか……」と、顔を引き攣らせました。
「もう、完成してるのかよ……」
アルベルトにいたっては、今にも泣き出しそうな顔をしています。
自分の早とちりで「暗殺兵器だ」と怯え、壺を強奪したのだから無理もありません。
「素晴らしい、本当に素晴らしいです!!」
一方でゼロンだけは大興奮で目を輝かせていました。あの凄まじい吸着力と効果を誇る液体に、研究者としての魂を完全に奪われています。
そしてレオンの守護者であるブルーノは、(さすがはレオン様。今回も素晴らしいものをお作りになられた)と、胸を張らんばかりに一人ご満悦な様子で佇んでいました。
そして一同の視線が集まる中、エドワード、ベネディクト、そしてゼロンの三人は、ついに完成したという「基礎バーム」と対面します。
ゼロンは待ってましたとばかりに蓋を外し、さっそくスプーンを手に取ると、緑色のバームを少しだけ掬い取り手の上に乗せます。
「ほう……、これは……!」
じっくりと肌に馴染ませながら、その質感や体温に馴染んでいくねっとりとした重厚な密着感、そしてどこか懐かしい濃厚な薬草の香りを、鋭い目付きで一つ一つ確認し始めました。
(おい、本当に大丈夫なのか……?)
(あの『毒師』がこれほど慎重に見極めねばならんほどの代物なのか……?)
エドワードとベネディクトは、それが本当に安全なものなのか、息を呑んで見守っていました。
その横でセバスはカゴの中から、特製「カスタマイズパウダー」を取り出し、テーブルの上に並べていきます。
パウダーの登場でゼロンの目の色が変わり、先ほどまで以上に真剣な表情になり、小瓶を一つ一つ手に取って、光に透かしたり匂いを嗅いだりと、徹底的な確認作業を始めました。
ひと通りの検品を終えたゼロンは、ゆっくりと顔を上げ、深い意味を込めてヴィクトールを真っ直ぐに見つめます。
「この小瓶の中身はハーブですね。素晴らしいセレクトです。……ところで、この黒いものは炭で間違いないですか?」
ゼロンは尋ねながら、その黒い粉の小瓶を持ち上げました。デトックスをその身で検証した彼は、老廃物を吸い出す効果の核が、この黒い粉であると察したのです。
ゼロンの問いに、ヴィクトールは頷きました。
「それは竹炭だ」
それも、この屋敷の庭で、竹炭を焼き上げたといいます。レオンが使用人にお願いして、大人の知らぬ間に出来上がっていたというから驚きです。
ヴィクトールは遠い目をしながら、ポツリと言いました。
「私はただのゴミ燃やし兼調理場とし……」
「――コホン!」
ヴィクトールの口から意味不明な単語が飛び出した瞬間、セバスがわざとらしいほどの咳払いを響かせます。
笑顔のまま目だけ、それ以上は余計なことを口にされるな、という忠臣からの無言の圧力がありました。
「……調理場?」
ゼロンが不思議そうに首を傾げます。
炭を焼く場所が、なぜ調理場なのかと……。
当然、エドワードとベネディクトも、「ゴミ燃やし」と「調理場」という不可思議な組み合わせに、一斉に訝しげな視線をヴィクトールへと向けました。
(まさか炭と一緒に何か危険なものでも燃やしたのか? いや、燃やしながら怪しげな煮炊きをしていたのか……?)と、彼らはまたレオンがとんでもないモノを生み出したのではないかと戦慄したのです。
「あ、いや! 今のは言葉が足りなかった! ただの、その、効率的な熱利用の話でな……!」
セバスからの無言の叱咤を受け、ヴィクトールは慌てて言葉を修正しますが、それが逆に怪しさを増しています。
そんなカオスな空気を察し、事情を知るアルベルトは、額にパシッと手を当て、ハァ……と溜息をつきました。
(……父上、また余計な言葉を言うから……!)
アルベルトは自分のことを棚に上げ、「もう勘弁してくれ」と、途方に暮れるのでした。
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