レオンの極上天国への誘い
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
のんびりお付き合い頂ければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
あれから数日が過ぎ、いっぱいストックもできたことだし、みんなに使って貰おうとレオンは考えました。
しかしニコが言うには、使う時にはヴィクトールからの、許可が必要だと言います。
さて……、どうやって許可を貰えばいいのでしょう?
う~ん……と考えていると、ちょうど向こうからヴィクトール、セバス、そしてカトリーヌが、こちらへやって来ました。
レオンがジィ──ッと見つめると、その視線にヴィクトールたちが気づきます。
「どうした?レオン」
見ているレオンに尋ねると、レオンがトトト……と膝元へ近づきました。
そして小さな手で袖を、そっと柔らかく掴み……。
「みんなの、おやすみ、ほちぃ、な……」
涙目でうるうると潤んだ上目遣いに、トドメとばかりに首を、コテッと可愛らしく傾げます。
「おねがい……」
――ズサァァァン!!!
ヴィクトールの胸に、凄まじい衝撃が走りました。そして……。
「っ……!! いいだろう!! 何でも持っていきなさい! みんなにおやすみでも、何でもあげようではないか!!」
尊さのあまり我が子をぎゅーっと抱きしめ、二つ返事で大量休暇の許可を出してしまったのです。
(……ん、大成功♪)
ヴィクトールの広い胸の中に抱かれながら、レオンは思い通りになり、たいへん満足げな笑みを浮かべました。
ヴィクトールの完全なる「可愛いからヨシ!」というガバガバな承認に、カトリーヌが呆気にとられる中、セバスまでもが「ただちに手配を!」と動き出そうとしています。
「――お待ちになって、お父様、セバス」
振り返れば、腕を組んだカトリーヌがジト目で二人を鋭く睨みつけます。
「レオンの『おねだり』が可愛いのは認めますわ。……ですが使用人全員を、同時にお休みだなんて、無理に決まっているでしょう!?」
お姉様のド正論のツッコミに、完全に理性を失っていたヴィクトールとセバスは、ハッと正気に戻りました。
「あ、いや、カトリーヌ、それは……」
「旦那様、私としたことがレオン様の尊さに脳を焼かれ、侯爵家の維持という基本を失念しておりました……」
狼狽え翻弄される男二人をフンと鼻で笑いました。
さらにカトリーヌがレオンへ視線を移せば、「やったぁーっ♪」と満面の笑みで、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶレオンの姿がありました。
その無邪気な様子にカトリーヌはフニャッと一瞬気を緩めます。
「コホン!……ちょ、ちょっと待って、レオン。みんなを労いたいという気持ちは素敵よ。でも……、全員が一度に休んだら、ご飯や掃除、レオンのお着替えだって出来なくなるのよ」
カトリーヌはレオンの前にしゃがみ込み、優しく言いました。
「だから……そうね。日にちをずらして、順番にお休みを取る形ならいいわよ。それならお屋敷も困らないし、どうかしら?」
それを聞いたレオンは、再び「やったぁーっ!」とぴょんと跳ね、その無邪気な可愛さに、カトリーヌは(妥協してあげて良かったわ)と、密かに口元を綻ばせるのです。
───ということで、使用人たちが使用前の安全確認(という名のお試し)をする事になりました。
ここで成果を見せなければ、今までの努力は水の泡です。
レオンとニコは互いに小さく頷くと、ムンと拳を固めて気合いを入れました。
「あら、2時間もかけるのね。かなり本格的じゃない」
「左様でございますね……」
カトリーヌとセバスは椅子に腰掛け、ゆったりと足を伸ばします。
レオンは基本バームに黒い粉を入れます。
カトリーヌにはラベンダーと野いちごの葉を、動き回るセバスにはミントとカモミールをセレクトしました。
ペタリ……。
二人の足裏に貼った後は、のんびりと心地よさを体験します。
「まぁ……。なんだか足のダルさが、なくなっていくようだわ」
「おお……、ひんやりとした感触が疲れを癒して、……痛みも治まっております……」
うっとりする二人を見届け、レオンは満足げに頷き、次の手を繰り出しました。
トテトテトコトコ……。
「ねえさま、どーぞ。おめ目よ♪あい、セバスも!」
次にレオンが手渡したのは、ラベンダーとカモミールを使ったホットタオルです。
目元に乗せた瞬間、じわぁっと心地よい熱が広がり、お目々の疲れもおさらばです。
「……しみ、渡るわぁ~」
「……天国です 」
……数分後、二人はスー、スー……、と寝てしまいまいました。
レオンは「……寝ちゃった」と小さく呟き、そっとタオルの位置を直してあげます。
レオンはもう一つホットタオルを準備して、ソッと首の後ろにセットしました。
二人分はレオンにとって、なかなかの重労働です。
……レオンが砂時計を見ていると、肩をトントンと優しく叩き、ニコは口元に「シー……」と人差し指を立てて微笑みました。
二人にブランケットをかけ終えたニコは、レオンと手を繋いで、静かに部屋を出ていきます。
砂時計の砂はすべて、……落ちていました。
二人はヴィクトールに会いに、執務室へ向いました。カトリーヌとセバスが寝てしまったことを報告するためです。
扉を開けて中を覗くと、そこにはなぜかブルーノいました。
(アレ……?)
レオンが不思議そうに首を傾げていると、「レオン様……!」とブルーノが駆け寄り……。
「お体は大丈夫ですか? お怪我はっ!?」
レオンはパチクリと目を丸くして戸惑います。
けれどぎゅっと抱きつかれたレオンは、のほほんとした調子で小さな手を伸ばしました。
「よしよし、だいじょーぶ。ブルーノ、ボク、とってもげんきよ?」
あまりに平和な三歳児の対応に、執務机に肘を付いていたヴィクトールは、静かに頭を抱えます。
(どこの世界に、父親と変わらぬ男の頭を撫でる三歳児がいる。……というかブルーノ、お前も大人しく撫でられおってからに!)
裏社会を震え上がらせる凄腕の元隠密が、レオンの癒やしペットのようで、ヴィクトールのツッコミは限界突破です。
一方レオンの隣にいるニコも、目の前の光景に、パチクリと目を瞬かせていました。
( ……変よね?変じゃない……? いや、やっぱり変だ)
「死神」の異名を持つ男は、謎の包容力で手懐けるレオンに、すっかり大人しくさせられています。
そのあまりなシュールさに、ニコの常識メーターは完全にバグを起こしていました。
レオンはカトリーヌのタオルを、そーっと優しく取ると、長い睫毛がかすかに揺れ、ゆっくりと瞳が開かれました。
どこかぽやぽやとした表情で、レオンをぼおっと見つめます。
「……あら?……私、いつの間に……」
気づけば体には心地よいブランケットがかけられており、ふと隣ではあのセバスが寝ていました。
「ねえさまとセバスに、いいジュース、つくるね」
トコトコポテポテ……。
部屋の片隅でレオンとニコが、温かいジュースを作っていると、セバスが目を覚まし、ゆっくりと身体を起こしています。
「フフフ……、珍しいモノを見せてもらったわ」
「まったく……、不覚にございます」
苦味潰したような顔のセバスがいました。
砂時計の砂がサラサラと流れていく中、部屋にシトラスの香りがフワッと広がり、甘酸っぱいリンゴとほんのりスパイシーな香りが漂ってきます。
レオンは両手でそっとカップを置きました。
「はい、どーぞ♪」
「ありがとうレオン。まぁ、なんて良い香りかしら。 ……!美味しいわ、じんわりとくるわね」
「いただきます。……フゥ、素晴らしい。お腹の中からポカポカと温まり、疲れが消えていきます」
サラサラと砂が落ちる音を聞きながら、ゆっくりと二人は至福のデトックスタイムに溺れていくのでした。
そこへ執務を終えたヴィクトールが、ブルーノを伴って部屋にやってきました。
「二人とも、レオンのケアの効果の程はどうだ? 体調は大丈夫か?」
ヴィクトールが尋ねると、カトリーヌとセバスは思い出したようにうっとりとした表情を浮かべます。
「ええ……本当に、しみじみと幸せな時間でしたわ」
「まさに天国でございました……」
余韻に浸る二人の姿を、ブルーノは冷ややかな非難めいた視線で見つめています。
ヴィクトールは「そうか」と微笑みながら、隣に立つブルーノの足を力任せに踏みつけました。
「……っ!」
突然の激痛に震えながら、俯いて耐えるブルーノを無視し、ヴィクトールは二人に効果のほどを尋ねます。
「野いちごの葉とラベンダーのおかげかしら、足のむくみがすっかり消えて、羽が生えたみたいに軽いの。それに血の巡りも良いわ♪」
「私の方はミントとカモミールでございます。付けた瞬間スーッと爽快感が駆け抜け、そのあと血流が押し寄せ、ガチガチの足裏のコリが消え去りました。今や胃腸の底からポッポと熱を帯びるように温まり、全身の疲れが猛スピードで燃焼しております!」
カトリーヌとセバスは、二人の攻防を華麗にスルーして、感想を伝えました。
カトリーヌは、「使用人たちに使ってよし」と太鼓判を押します。
そしてブルーノのはいつの間にやらレオンの隣に移動し、ヴィクトールの睨みも気にせず、のんびりとレオンとの会話を楽しんでいます。
「ハァ……、となればゼロンが適任だろう。……ブルーノ、後は頼むぞ」
「──……、御意……」
ヴィクトールの言葉を受けて、隠蔽の要となるゼロンを、この屋敷へ呼び寄せることになりました。
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