ブルーノは断言する。レオン様は必ずやらかす。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。(次は11:00です)
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
のんびりお付き合い頂ければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
執務室は重苦しい沈黙の中、皆思考の波に漂っていました。
「……提案がある」
珍しくブルーノが、ヴィクトールを見据えて口を開きました。
「……捕らえた者たちを、私の配下にしたい」
あの彫像と化した刺客たちは、確かに敵ですが一流のプロです。
「今回の件で痛感しました。私一人では守りきれない。情報は常に後手に回り、レオン様も常に危険と隣り合わせでした。なにより……カトリーヌ様だけでは、……レオン様の『やらかし』には足りません」
ブルーノは一度言葉を切ると、確信に満ちた絶望的な言葉を吐きました。
「……レオン様は今後、さらに大きなことを必ずやらかす。間違いありません。……実際、その種はすでに撒かれています」
その言葉が発せられた瞬間、ヴィクトール、セバス、マルクスの視線は、吸い寄せられるようにブルーノの膝へと注がれます。
トウガラシの熱を放ち、桜の皮の弾力で補強され、三歳児の手当によって「全盛期の機動力」を手に入れてしまったこの最強隠密は、物理的にも精神的にもいろいろ改造された動かぬ証拠です。
(((……やる!レオンは絶対にまたやらかす)))
みんな心で同じ言葉を唱え、そっと目を逸らしました。
もはや石鹸がどうとか、大司教がどうとかいう次元の話ではないのです。
レオンは世界の物理法則やパワーバランスを、文字通り子供の遊びで塗り替えてしまうでしょう。
「……いいだろう。ブルーノ、お前にその連中を預けるように訴状しよう」
ヴィクトールが重い溜息と共に、仕方なく許可を出しました。
「レオンが世界をひっくり返す前に、お前たちが先回りして受け止めろ。……あの子が何かしたとしても隠せ!とにかく、……あの子の安全が第一だ」
三歳児のやらかしを隠蔽し、事後処理するためだけの特務組織が、期せずして誕生させる事になりました。
マルクスは運ばれたサンドイッチを、なかば強引に口へ放り込みます。
咀嚼するたびに胃がキュウとなりますが、何か腹に入れなければ、次に飛び出す「やらかしの報告」で、本当に胃壁に穴が開きかねないと生存本能が働いたのです。
そんなマルクスを、ヴィクトールは恨めしげに睨みつけます。
「……閣下、そんな目で見ないでくださいよ。俺だって必死なんです。……セバス、お茶、もう少し熱いのを!」
「かしこまりました。……皆様、どうぞ一息ついてください」
セバスが手際よく温かいハーブティーを淹れ直し、香りが殺伐とした執務室に、束の間の安らぎを与えます。
しかしマルクスの口から出た言葉は、安らぎとは程遠い「提案」という名の押し付けでした。
「……なぁ、ブルーノ。さっきの教会の件と、今後の『影の部隊』の再編……まとめてお前に丸投げしていいか? 見ろよ……。閣下もあんな感じで死に体だし、俺は領地でどうにかしなきゃならない」
マルクスは紅茶の湯気の向こう側で、静かに佇むブルーノを見据えました。
「教会の強欲な連中、泥石鹸を好き勝手しようとする輩を、全部まとめて『プロの目』で片付けてくれ。……レオン様の『やらかし』を一番近くで体感して、あろうことかメンテナンスまで受けたお前なら、奴らの度肝を抜けるだろ?」
ヴィクトールは死に体と呼ばれたことにも反論せず、ただ小さく肯定とも諦めとも取れる態度です。
ブルーノはしばし沈黙し、自分の右脚――今もじんわりと「アチアチ」が骨を癒し、桜の皮が筋肉をサポートしている不思議な感覚に意識を向けました。
「……承知いたしました。教会の不届き者も、利権に群がる者たちも、……レオン様を曇らせる汚れは、私の部隊で拭い去ります」
ブルーノの声は、……一段と冷たさを帯びていました。
「……よし、決まりだ。……セバス、ブルーノに全権を与えろ。予算も、人員も、そして……レオンが万が一何かした際の、最優先回収、決定権、まあ、必要事項全てだ」
ヴィクトールの言葉で、三歳児の無邪気な『やらかし』を、世界のパワーバランスが混乱する前に、『誤魔化し』て『片付ける』ためだけの特殊任務です。
マルクスがサンドイッチを飲み込み、少しだけ明るい声を出しました。
「閣下、良かったじゃないか。あとの問題は『配合の再現』だけだろ? 厄介な連中の掃除はブルーノが引き受けてくれるんだし」
マルクスはニヤリと笑い、ヴィクトールの顔を覗き込みますが、当主は力なく首を横に振るばかりです。
その絶望の深さを代弁するように、セバスが淹れたての茶を差し出しながら、静かに補足しました。
「マルクス様。残念ながらまだ『ブルーノの膝』という時限爆弾が残っております。……ただ黙っていれば、あるいは『奇跡的に自己治癒した』と言い張れば、誤魔化しが利くのではないかと……、私は思うのですが?」
セバスが伺うようにヴィクトールを見ると、侯爵はもはや隠し通す気力も尽きたように、ひどく疲弊した顔で口を開きました。
「……ブルーノの古傷の深さは、騎士団長が誰よりも熟知している。あいつはこの前屋敷に来た際、真っ先に聞いてきた。『あのブルーノの脚は、元のように動かぬはずだが?』とな」
騎士団長——実力主義の塊であり、ブルーノの全盛期を知る男。その彼が今のブルーノを見れば、それを自然治癒にするには不自然です。
マルクスは胡乱げな顔で、壁際に立つブルーノをジロリと睨みつけます。
「おい、ブルーノ。お前ほどの隠密なら、騎士団長の前でくらい『古傷が痛むフリ』をして誤魔化せただろ? なんで完治したような動きを見せちまったんだよ!」
問い詰められたブルーノは、視線をわずかに下げ、しかし揺るぎない声で答えました。
「……レオン様が、心配されますので」
「は?」
「レオン様が私の脚を見て、『アチアチ、きいた?』と、あの純粋な瞳で問われます。……その主君の前で嘘の痛みを演じるなど、私にできるはずもありません。レオン様には、ご自分の手当が成功したと喜んでほしいです」
あまりにも真っ直ぐで、不器用な忠心……。
マルクスは天を仰ぎ、ヴィクトールは再び机に突っ伏しました。
「忠義の塊」が、三歳児の「純粋な期待」に応えようとした結果、……国家レベルの武力が証拠として目撃されたのです。
「……詰んだな。騎士団長が食いつくぞ。あいつ、間違いなく『その原因を教えろ!』って軍を挙げて押し寄せてくるぞ」
マルクスの呟きに、セバスが静かに頷きます。
「左様でございますね。……さて、旦那様。……次は騎士団長への『言い訳』という名のミッションです。新たに三文芝居の脚本を書かねばなりませんが……気力は残っておりますか?」
ヴィクトールの返事は、深すぎる溜息でした。
(エレーナ……、程々の自由て、なんだろうな?)
そんな父親の悩みに押し潰れそうなヴィクトールを知らず、レオンは今ものほほんと自由に過ごしています。
「……ソレあなポイッよ。で、フタする」
レオンは庭に掘られた穴を見ながら言います。
慌ただしく片付けをしていた使用人が、手を止めて不思議そうに聞き返します。
「……フタ、ですか?」
ニコが目をシュパシュパさせ涙をこぼしながら、レオンにゴーグルを被せました。
「あっちこっちの煙で、目が痛いですよね。滲みますか?レオン坊っちゃま」
近所迷惑になっているかもしれません。
ニコが部屋戻ろうと促しますが、レオンは使用人と話しています。
使用人はそれを聞いてニヤリと笑い、レオンもニンマリと笑い返します。
そんなレオンを、ニコは連れて行きました。
使用人はフタするために、さっそく仲間を集めに行きます。
「さすが小さな賢者、面白いことを考えるな」
これでご近所迷惑にも、自分たちの目とノドの被害も抑えられるでしょう。
それに先程の指示……、楽しみです。
とりあえず坊ちゃまに、言われたことから取り掛かるとしますか♪
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
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