『検証』の面白さ♪
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プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
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さてヴィクトールがどうにでもなれ精神で、布団に潜り込んでいた時、屋敷内ではセバスとマルクスが『泥パック』用に人員を選定していました。
その中にガツもいて、とても愉しげなようすで佇んでいます。
他にもテオ、バルト、年配騎士や庭師など、そしてなぜかニコも選ばれていました。
「あ、あの、なぜ選ばれたんでしょうか?」
「……ん!ニコ若者代表、がんば♪」
シクから意味不明な声援を貰います。
そして女性からも同じだけの人数を選出しますが、そこは賢く理由を言って女性たちの間で選出して貰いました。
すると侍女長と数名の侍女、筆頭メイドと、年配メイド数名が参加します。
「ハッキリと安全とわからないと、若い女性には使えないってさ」
「……まあ、それは仕方ございませんね。性別が違うだけでも肌の質が違いますから」
セバスは侍女長の説明に納得し、今いる人員で『検証』をすることにしました。
──屋敷の裏手、庭の緑に覆われた1階の隠しバルコニー。
ここは表からの死角になっており、人目を気にせず試すには絶好の場所です。
「ふむ……ではこれより、『泥パック』の希釈濃度および使用法の検証を開始します」
セバスは穏やかな笑みを浮かべ、泥の入った小鉢を渡していきます。
その後ろでは、金褐色の髪をかきあげて欠伸を噛み殺しているマルクスがいました。
いつもより早起きしたのが原因です。
「……はぁ、仕事は増えるばかりで減ることはなしとか……。とりあえずブルーノに手紙は送ったし、窯職人も手配しただろう。トウモロコシは『木漏れ日商会』に送って片付いて、あぁ……、そういや隣国のスパイを仕立て直したとあったが……、怖いねぇー。クックックッ……」
飄々とした態度をしながら、柔和に見える目を細めて、軽快げに忍び嗤いました。
羽虫のように視界に入り、邪魔でしかなくウザったらしくてたまらない……。
(……この泥を使って、罠を仕掛けるか?)
幸い強酸性の灼熱沼と、この泥が取れる灼熱沼は見分けがつき難いのです。
──どちらの沼地であっても地獄。
知識なき者が生きて帰れる訳がない。
「……まっ、ヴィクトールと要相談か!しかしアイツまた寝やがったな……。最近サボり癖ついてないか?」
羨ましいなぁ……と思いながら現場を観察していると、ニコが不安そうにしていました。
「あ、あの……僕、本当に大丈夫でしょうか……?」
不安そうにたたずむ16歳のニコは、なぜ自分が選ばれたのかわかりません。
セバスは「ええ、ご安心ください」と柔らかく微笑み、お湯で薄めたマイルドな泥湯をニコに渡します。
「男性陣には濃いめのペースト、女性陣やニコ殿にはお湯でかなり薄めた希釈液……これで効果の違いを観察しましょう。女性は男性に比べ繊細な肌ですから」
「ご配慮は感謝いたしますわ、セバスさん」
そこへ背筋を優雅に伸ばした侍女長が、静かな足取りで歩み寄ってきました。
その立ち振る舞いには、屋敷の女性陣を束ねる者としての品格と落ち着きが満ちています。
「ですが、……お湯で薄めるだけでは少し不十分ですわ。そのままでは乾きが早く、肌に突っ張りや不快感を覚えてしまいそうです。……ほら、そこの騎士に少し手伝ってもらって、事前に腕で試してみたのですけれど」
侍女長が静かに目配せをすると、控えさせられていた騎士が進み出で、左右の腕を提示しました。
──その違いは一目瞭然です。
「塗ったまま放置した左腕は泥が乾燥して、粉を吹いた痛々しい肌になりますが、右腕をご覧ください。泥を塗った上から、この油紙をふわりと重ねて『フタ』をしておりますの。こうして湿気を閉じ込め優しく温めれば、乾燥を防ぎつつ成分だけを肌へ浸透させられますわ。……ついでに、壺で保存する際も一番上に油紙をぴったり密着させれば、乾燥もカビも防げますでしょう?」
優雅に微笑みながら完璧な実地データと対案を提示する侍女長に、セバスの眼鏡の奥が小さく光ります。
「……なるほど。『油紙による保湿と密閉』ですか。素晴らしい生活の知恵ですね」
「ふふ、現場の知恵とお言いなさいな。短時間で最善を尽くすのが、私たちの仕事ですから」
セバスが一切の無駄がない手つきで手帳にその知見を書き留めると、侍女長は艶やかな笑みを浮かべました。
「さて……この有用な知恵と検証データの対価としての『お駄賃』ですが……言葉にせずとも、お分かりいただけますわね?」
「ええ、もちろん。女性陣へ優先的に現物をお納めいたします」
「話が早くて助かりますわ」
──優雅にお辞儀を交わす二人。
一見すれば上品なやり取りでありながら、ちゃっかりと自分たちの『極上の美』を確保する女性陣の強かさに、セバスも心地よく首肯するのでした。
「……ということでニコ、女性陣に手伝って貰い、『検証』して下さいね」
「確かにニコさんには、ぜひ『検証』して貰う事柄がございますの」
ニヤリと笑うセバスと侍女長に挟まれたニコは、青ざめた顔で女性たちに連行されます。
それを遠くで見ていたシクは「……ニコ、がんば!」と、少しだけ力の入った声援を送りました。
───その頃、レオンたちは。
朝の光がやわらかく差し込む食堂。
カチャカチャカチャ……。
小さなスプーンが食器に当たる軽い音が、静かな朝の空間に心地よく響いていました。
レオンはしっかりとスプーンを握って、口いっぱいにスープを頬張っています。
アムアムと可愛らしく口を動かすたび、ふんわりとした柔らかい頬がキュッと持ち上がりました。
レオンの前に置かれたスープボールには、食べやすく角切りに切り揃えた野菜と、香ばしく炒められた焦がしベーコンがたっぷり入っています。
スープをすくうたび、コロッとしたベーコンの旨味豊かな香りがふわりと漂いました。
「ウマウマなの! トマトいれたら、もっとウマウマ増大しゅるの!」
目をキラキラと輝かせながら、レオンは自分の閃きをアピールします。
「なるほど! でしたら昼に試してみても?」
白いエプロン姿で立派な髭を蓄えた料理長が、目尻を下げてレオンを見下ろしながら深く頷きました。
「かさまし料理ね! じたんで最高なの♪。……スープの中スカスカなら、お豆さんとか、ちっさいパスタいれるの!」
「……じたん?パスタ?」
聞き慣れない幼子の言葉に、料理長が首をかしげました。
レオンの隣でカトリーヌは微笑み、ナプキンで唇を拭った後、楽しそうに助け船を出します。
「時間、短縮ですわ、料理長。それに小さなパスタとお豆を入れれば、満足感も出ますものね」
「レオンは朝食のスープにトマトを加えて煮込めば、一から作らずとも済むって意味だよ。残り物に豆や小さなパスタを投げ込めば、立派な主食級のスープになるだろう」
向かいに座るアルベルトが料理長にウィンクして、弟の意図をわかり易く説明しました。
「な、なんと……! トマトで味を変えるだけでなく、豆やパスタで食べ応えまで補うと……、これはまた別のスープに変わりましたな!」
料理長は膝を叩き、感心したようにスープへと視線を注ぎました。
頭の中で早くも新しいアレンジの構想が駆け巡っているようです。
「おもちろいの♪」
みんながお話を聞いてくれたことが嬉しくて、レオンは椅子に座ったまま足をパタパタと揺らしながら、ニコニコとご満悦の表情を浮かべています。
「アハハ! 確かに面白い実験ですな。よろしい、本日の昼食は最高の『じたんスープ』をお出ししましょう!」
料理長が楽しそうに笑い、アルベルトとカトリーヌも昼食が楽しみです。
朝日が差し込むテーブルでレオンは、最後の一匙を食べ終えて、満足げにお腹を撫でました。
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