それぞれのゴールに向かって!
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
バルトが木製のスコップで泥山の表面を軽く突き、固い手応えと崩しやすい絶妙な感触が返ってきました。
「……硬さが手頃ですね。この表面の乾いた層を薄く剥ぐように、奥にある状態の良い泥を桶へ移しましょう。そうすれば不純物や葉などありません」
テオや配合員予定の者たちも自分の木製スコップを握りしめ、緊張した面持ちでそれぞれ狙いを定めた泥山へと近づき作業します。
硫黄の臭いが立ち込める沼地の中で、一行は慎重に作業を進めていました。
「おい、そこを踏むな。足場が怪しいぞ」
ガツが低く声を張り上げ、木製のスコップを地面に突き刺して踏み固めながら周囲を警戒します。
その隣で、ジャックは慎重に足場を選んで泥山のふもとへと近づきました。
「……ここなら、不純物も少なそうだ」
周囲にあるのは木々ではなく岩ばかり、手際よく慎重に木製スコップを動かして、表面の乾いた層を剥ぎ取ります。
その下からねっとりした良質な泥を、用意した木桶へ入れ蓋をしました。
作業が一段落したジャックは、休息を取るように身体を起こし、大量に流れた汗を拭い取ります。
「……あぁあぢぃ。湯気は臭いしまとわりつくしで、マジ勘弁だぜ」
ジャックはブチブチ文句言いながら、気晴らしに周囲のゴツゴツとした岩肌に視線を走らせました。
「……ん?……待てよ」
ジャックは記憶の片隅に何か引っかかり、もう一度周囲を観察します。
取り囲む赤茶けた岩に、見え隠れする白っぽい岩肌──……。
かつての日々で得た知識と、様々な土地を渡り歩いた中で、彼の記憶がカチリと噛み合い導き出されました。
「この周辺の岩、これって……石灰岩じゃねぇのか? 確か、こういう岩質の土地じゃ、強い水を緩やかにするとか……」
ジャックの呟きに、バルトも「ほう」と目を見張ります。
「……もしここが、可能性だが石灰岩地帯なら、この泥は火傷はするが、爛れるようなものじゃねぇ。……なあ、ついでに泥の性質を、じっくり調べてみねぇか?」
突然湧いたように出てきた可能性に、ガツやテオたちも「確かに、その方がいいな」「少しでも朗報はありがたい」と大きく頷きました。
作業を早々に終えて男たちは、それぞれが重みのある木桶を抱え、早足で沼地を後にします。
──決して沼地が嫌で逃げた訳ではなく、泥を調べるため終了したのです。
蒸気と硫黄の臭いが立ち込める沼地を後にし、一行は昼過ぎに屋敷へと戻ってきました。
服についた泥の洗浄をした後、男たちは用意された広大な浴場へと足を踏み入れます。
高い天井から柔らかな陽光が差し込む浴場は、湯船には惜しみなく湯がたっぷりと張られて贅沢です。
沼地での極限の緊張感と、肌にべとつく汗や泥臭さ、とにかく嫌なものを全て洗い流すように、皆は次々と身体を流し、湯船に身を沈めていきました。
「……至福」
シクが濁りのない透明な湯に肩まで浸かり、気だるげに大きく息を吐き出します。
隣ではガツが腕を湯船の縁に預け、目を閉じて静かに疲労を癒やしていました。
テオたちも緊張の糸が切れたのか、心地よさげに湯に溶け込むように身体を預け──。
広々とした湯船の中で、荒々しい地獄の空気が嘘のように遠のいていきます。
「それにしても、あの泥の正体がどう転ぶかだな……」
湯の波紋を眺めながら、ジャックがぽつりと呟きました。
「ああ……。だが、ここで英気を養わなければ、明日の屋敷での検査も乗り切れんさ」
ガツがタオルで顔を拭いながら、穏やかな笑みを浮かべて湯船の縁に腰掛けます。
命がけの採取行をどうにか無事に終えた男たちは、束の間の静寂と温もりに身を委ね、それぞれの思いを巡らせながら、湯の心地よさを噛み締めていました。
レオンたちが帰ってきた頃、ガツとシクはバルコニーの椅子に深く腰掛け、心地よい風に吹かれながらのんびりと涼んでいます。
「ふう、やれやれだぜ……」
ガツが冷えた杯を傾けながら、遠くの空を眺める横で、シクはだらりと寝そべり寛いでいました。
一方、テオやジャックをはじめとする配合予定員たちは寮館へと戻り、それぞれ宛てがわれた部屋で、疲れを癒やしているでしょう。
屋敷に戻ってきたレオンとカトリーヌの、「見て!ゴツゴツよ!」「レオンからお土産もらったの♪」と跳ねる声が響きます。
使用人たちは出迎えながら、屋敷が賑やか活気づくのを実感しました。
夕食時の大食堂では、温かなランプの光に包まれ、和やかな賑わいを見せています。
上座にはヴィクトール侯爵が静かに腰を下ろし、その傍らには側近のマルクスが控えていて、テーブルの反対側にはアルベルト、カトリーヌ、目を輝かせるレオンが座りました。
さらに客人のガツとシクも同席しています。
そしてテーブルの真ん中にどっしりと鎮座していたのは――無骨な姿の焼き魚でした。
「マッチョになるんだぜぇ」と言いたげな強面の見た目をしています。
しかし以外にも、じゅうしゅうに脂の乗った、極上の匂いがふわりと食堂いっぱいに広がります。
「ふわぁー、ゴツゴツさん美味しそう!」
レオンはじっと見つめ、期待に満ちた声を出しました。
ガツやシクたちも、過酷な任務のあとのご馳走を前に、思わず喉を鳴らします。
「ホッケだな」
ガツが低い声を漏らし、ゴツゴツとした無骨な干物に釘付けです。
その言葉にレオンも「ほっけ……?」と、小首をかしげ、目をパチパチさせました。
「これはまた見事な……!」
荒波に揉まれた無骨なホッケから、香ばしい湯気がふわりと立ち上がります。
アルベルトが感心したように目を細め、カトリーヌも「香ばしくて、とても美味しそうですわね」と優しく微笑みました。
「レオンはこれを食べて、マッチョになるそうだ。レオンの願いを叶えねばな♪」
ヴィクトールが笑いながら告げると、レオンは「うん、筋肉大事よ!」と得意げに胸を張り、小さな両腕にグッと力を込めて見せるのです。
アルベルトは思わず吹き出し、カトリーヌは「まぁ、頼もしいことですこと」と上品に口元を隠しました。
隣に座るガツは「はっ、いい心掛けだぜ」と豪快に笑い、シクは目を丸くします。
レオンの無邪気な一言とご馳走を囲み、一段と和やかな笑顔と笑い声に包まれました。
そして食事の後、レオンの『あっち』について報告をします。
テーブルの上には、採取した泥が小瓶の中にありました。
「――ほう、あの沼地にそんな場所が!」
ヴィクトールが興味深そうに視線を落とし、レオンは首を傾げて不思議そうにしています。
バルトは周囲の石灰岩により中和の可能性を考え、成分を検査する説明を進むにつれて、レオンの瞳が次第に大きくなり、ぱぁっと輝き出しました。
「にぃちゃ達、お宝はっけんなの!」
両手をぱっと広げ、全身で喜びを表現します。
その無邪気な歓声にアルベルトやカトリーヌは、驚きながらも微笑ましそうに頬を緩めました。
「……『キラキラ』だった?」
その歓声にシクが不思議そうに尋ねると、レオンは勢いよく頷き、満面の笑みを咲かせます。
「うん!奇跡のキラキラよ!」
その弾けるような無邪気な言葉を聞いた瞬間、シクは「……任務完了した」とホッとしたように呟き、俯き加減に微笑みました。
「レオン、奇跡のキラキラとはなんだ?」
ヴィクトールが不思議そうに尋ねると、レオンは「お肌ツルツルになるの!」といいました。
それを聞いたヴィクトールは、「泥石鹸でもツルピカだが?」と言うと、「ちがうの!こんなが、こーなになるのよ!」と、小さな輪を大きな輪に変えて説明する、レオン。
アルベルトは眉間に皺を寄せ、「もしや、シワがなくなるとか、あるのか?」と呟きます。
それを聞いたカトリーヌは「それは女性陣にとって、奇跡の泥ですわね」と興味深そうに頷きました。
「ハハハッ、そいつは面白れぇ! なら俺もその『ツルピカ』とやらを試そうか?俺の男っぷりも上がるだろうよ!」
ガツは泥パックに効果に興味を持ち、やった後どうなるか、想像するだけで笑いが止まりません。
強面の屈強なおっさんが、お肌のケアに意気込むというギャップに、あちこちから笑い声が上がりました。
シクも自分の肌をコッソリと眺め、コテッと首を傾げて考えた後、ひっそりと気合いをいれます。
夕食後の和やかな空気の中、レオンは小瓶に詰めた例の沼の泥を、ヴィクトールへと差し出しました。
「お父様、これどうぞ!」
「い、いや、……確認してからだな……」
わずかに引き気味のヴィクトールに対し、レオンは力強く胸を張ります。
「大丈夫なの!とうさま、お肌つよいから!」
(――だから、その変な信頼はなんなんだ!)
心の中で盛大にツッコミを入れつつ、息子のピュアすぎる圧倒的な圧力と、周囲の好奇の目に耐えかねて、ヴィクトールはついに折れました。
ただし危険性を確認してからの条件つきで───。
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