海の香りと、小さなお買い物♪
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プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
シーエッグの市場を踏み入れると、一般の客と混ざり、異国風の装束を纏った商人たちや船乗りがいて、小腹を満たす為に屋台の前に並んでいます。
屋台には見たこともない魚の干物や、スパイスをふりかけた串焼きがあり、炭火焼きの匂いとエキゾチックな香りが町中に立ち込めていました。
工房を後にしたレオンはその匂いに釣られ、お腹の虫がクウ…と鳴ります。
「昼の鐘もだいぶ前に鳴ったから、腹が減っても仕方ない時間だな。レオン待たせたな」
ヴィクトールが申し訳なさげに言うと、レオンはニッコリと笑い、屋台の並ぶ市場を指さしました。
──あちらから、すこぶる美味そうな匂いが漂い、誘惑するのです。
午後の陽射しが海面をキラキラと照らす中、市場は肉と魚介のジュージューと焼けた匂いと、商人の威勢の良い声で活気づいています。
「とうさま、あの網のところ、見て!」
昼過ぎになっても、屋台の炭火は赤々と燃え盛り、店主が手際よく魚を網に並べていました。
串に刺されたイワシの表面から、じわじわと脂が滴り落ちて、香ばしい匂いが食欲をそそります。
「じゅるり……。ウマウマみっけ!」
レオンは駆け出し、シュパッと並びました。
そんなレオンを笑いながら、ヴィクトールも一緒に列に並びます。
マルクスはギョッとして慌てて止めますが、二人は並んでいることも楽しそうです。
突然、領主の登場に領民たちも驚き、慌て先頭を譲ろうとしました。
しかしレオンは「順番よ」と言って動かず、網に並ぶ魚介類を眺めています。
店主や周りの者たちは困り果て領主を見ると、ヴィクトールは微笑みながら言いました。
「皆の者、気遣いに感謝する。だがこれも我が子の楽しみなのだ」
領民はレオンのヨダレを垂らさんばかりに、ジィ───ッと食材を眺め並ぶ姿に、領民たちは仕方なく納得します。
その日ヴァリエール侯爵が、市場の屋台に並ぶという珍しい光景に驚きました。
しかしその隣で、小さな子供が手を繋ぎ楽しげな様子を見て、店主たちは笑いながら大きな味見を差し出します。
おかげでマルクスは、周りの根回しでとても忙しく動いていたのです。
「とうさま、おいしいね。ボク、ウマウマいっぱい食べれて、しあわせなの♪」
「……そっか、幸せか。それはよかった。また来よう、レオン」
「あい!ボク、おしごと、がんばる!」
ヴィクトールはレオンの小さな手に、貰った追加のイカ焼きを手渡すと、レオンは笑いながらお腹を撫でます。
潮風と、炭火で焼かれた香ばしい魚介類の匂いに、レオンは最高のごちそうを堪能できたのでした。
ヴィクトールは目を細めて見守る中、レオンが次に駆け寄ったのは、異国で作られた鮮やかな色彩の布地です。
色とりどりのシルクや、複雑な模様が織り込まれたベルベット、そして鮮やかな柄で通気性の良い柔らかな布地……。
「わあ、お空の色と、お花の色だ!」
布の端を小さな手で握りしめ、自分と色合わせをして、ヴィクトールに「ボク、かっこいい?」と首を傾げて尋ねました。
無骨で洒落っ気のないヴィクトールと騎士たちは、その問いに無言になります。
レオンの当てた柄が、骸骨だったからです。
◇◇〖レオン視点〗◇◇
ぽってりな温かみのある木製皿に、ニコが美味しそうにお菓子を食べる姿が浮かぶ。
これニコのおみやげに、バッチリなの!
異国の海で採れたピカピカに輝く髪飾り。
赤のサンゴは実のようで、貝殻のツヤツヤはお花できれいだなぁ……。
不揃いなつぶつぶ真珠が囲って、オシャレなの!
ねえさまの柔らかい波のような髪に飾ったら、似合いそう♪
黒髪に白と赤は素敵に似合うよね!
やっぱり派手な布、何かに使えそうだなぁ。
触り心地が気持ちいいの。
ボク、この生地でお洋服したいなぁ。
あつい日に涼しいし、かっこいいの。
このサイケな?柄、にいちゃみたい。
えっ!ガツにも合う?
この黒っぽい葉っぱ、ブルーノ?えっ?シクにも……?
◇◇◇
「……とうさま、ボク、この布と、あれとそれと、これ、ほしい!」
レオンは何に使うのかわからないまま、心の欲求に従いました。
ヴィクトールはレオンの手が、次々とお土産で溢れていくのを、頼もしそうに眺めていました。
「買いすぎではないか?」と口では言いつつも、レオンが「みんなの分!」と弾む声で言うと、ヴィクトールもまた、騎士たちへ荷物を預け、市場をゆっくりと見て回るのです。
港町ならではの、見たこともない大きな魚や、不思議な形をした干物がありました。
普段には並ばないゴツゴツした魚の干物を指差して、レオンは「これ、おいちー?食べたら、強い?」と騎士たちに質問します。
ヴィクトールは、もの珍しそうに干物を眺める息子の姿を見て、財布の紐を緩めたのでした。
「……気に入ったか? ……帰ったらその干物を食べてみるか?」
するとレオンは「これ、ゴツゴツしてるの!ボク、食べて、マッチョになるの」と、胸を張り自信満々に宣言します。
それを聞いた騎士の一人が、「ブハッ……!」と吹き出し、慌てて両手で口を塞ぎました。
あどけない3歳幼児が発した「マッチョ」は似合わなすぎて、周囲にいた騎士たちは肩を震わせます。
「……マ、マッチョ、ですか?」
マルクスは顔を引き攣らせて聞くと、「しょうよ。ボク、強くなるの」と、レオンはフフンと、鼻で笑いました。
それは先程ヴィクトールが見せた姿を彷彿とさせ、どうやらレオンは真似をしているようです。
騎士たちは歯を食いしばり、腹筋に力を入れて耐えました。
「レ、レオン様。それはまた、……ひ、非常に、頼もしい目標ですね。えぇ……、そうですか……」
マルクスはレオンをまともに見れず俯きます。
ヴィクトールはそんな可愛い真似をする息子を見下ろしました。
ふっと鼻で笑うと、屈んでレオンの小さな頭を大雑把にぐしゃぐしゃと撫でます。
「そうか。それを食えば、お前は我が領地一番の屈強な男になれるかもしれん。……店主、この一番ゴツい奴を包んでくれ」
ヴィクトールが銀貨を放り投げると、レオンは「やったぁ! ガォーさんに見せるの!」と、自分の身長ほどもあるゴツい干物を受け取り、満面の笑みを浮かべます。
そのレオンの姿に、マルクスを始めとする騎士たちは堪えていた笑いがついに決壊し、大爆笑が巻き起こりました。
帰り道のガォー船の中、レオンは干物を大事に抱えながら、頬を膨らませ怒ります。
大人たちはそんなレオンを、なだめ透かし、構いながら、岬へと向かうのでした。
岬の桟橋に戻ると、「ガォー船」の到着を待っていたかのように、カトリーヌが騎士たちと一緒に立っていました。
「レオン、待ってたわ!」
船が桟橋に横付けされるやいなや、カトリーヌが駆け寄り、タラップを降りてきたレオンをぎゅっと抱きしめます。
レオンも嬉しそうに抱きつき、「ただいま!」と元気よく声を弾ませました。
ヴィクトールは愛息を迎えに来たカトリーヌの姿を見て、わずかに眉を上げます。
「……カトリーヌ。なぜここにいる。屋敷で留守番をしているはずではなかったか?」
ヴィクトールが怪訝そうに問うと、カトリーヌはふふんと得意げに微笑んで答えました。
「だってお留守番ばかりじゃ退屈だもの。それに、レオンと一緒にモノレールへ、私も乗りたかったのよ!お父様と乗ると、スピード遅くなるわ」
その理由に、ヴィクトールは肩をすくめて苦笑します。
レオンは見上げて、「あのねぇ、お土産があるの!」と、出島で買った貝殻の髪飾りを取り出そうとモゾモゾし始めました。
帰り道のモノレールでは、ガォー船での冒険を終えたレオンと、ワクワクした表情のカトリーヌが乗り込みます。
ヴィクトールは呆れた様子で見送りました。
モノレールがガタゴトと重たげに音を響かせ、海辺から山頂へ向かってゆっくりと登っていきます。
洞窟拠点の騎士たちが、手を振るレオンに振り返し、カトリーヌがぴったりとレオンを抱き寄せました。
下から振動を感じながら、木々の合間に実るざくろを見つけます。
丸くて硬そうな突き出した形の実が、重げにユラユラ木を揺らしていました。
「……ねえさま。あれ、なあに?」
レオンが小さな指差すと、カトリーヌは「どれどれ?」と身を乗り出し眺めます。
モノレールがガタゴトと高度を上げるにつれて、煌めく青い海と、見張り台の風車が見えてきます。
海側の斜面にできた果樹園には、チラホラと騎士たちが、木々をチェックしながら歩いていました。
「あれはね、甘くて酸っぱいジュエルみたいな実よ」
心地よい揺れと今日一日を思い出しながら、モノレールは終点へと、ゆっくり確実に近づいていくのでした。
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