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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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レオンの『あっち』は、一筋縄ではない。

いつも応援ありがとうございます!

プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。

でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و

少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

 






 レオンが工房で「やらかして」いる頃、アルベルト一行は彼が向かった「あっち」の領域へ足を踏み入れていました。

 湿地特有の猛烈な蚊に襲われ、苛立ちを隠せないアルベルトの首筋へ、シクが手際よく「ミントアルコール」をプシューと吹き付けています。


「……成敗」


「……レオンの真似か?」


 アルベルトの問いに、シクは無表情のまま、しかし目元をわずかに細めて愉快そうに弧を描いていました。


 ──鬱蒼とした緑の奥地。


 そこは侵入者を拒絶するように沈黙しています。


 地面か、あるいは灼熱の沼地か――……。


 生い茂る草木と薄暗さのせいで、足元の境界は判別がつきません。

 視界の先に、不気味に蠢く大小の奇妙な山の中心部では、胎動を刻むように泥を吹き出していました。

 別の場所では灰色の膜が、ボコッ、ボコッと鈍い音を立て、岩の隙間からはシューシューと蒸気が噴き上げます。

 その熱と湯気が容赦なく肌にまとわりつくのです。


 鼻を突く土臭さと、硫黄臭──。


 息を潜める傍らで沼の粘膜を弾くたびに、中から「何か」が這い出しそうな気配に、言いようのない嫌悪が胸を覆います。

 偽りの大地を踏めば、ズズ…と地獄の底へと引きずり込まれるだろう。


 それはかつて彼らが忌わしき罠に足を取られ、無力に沈んだ苦々しい記憶を、否応なく呼び起こす光景でした。


「うげぇー、まじかよ!!スケールが嫌すぎる!!!」


 心底嫌そうな顔で叫ぶガツと、シクは力なく項を垂れます。


「……帰りたい。ネバネバ……うんざり」


 バルトは淡々と、沼地の危険性や吐き出される毒の有無、そして安全な判断方法……。

 気まぐれに沼地が出現する事を説き、足をつく前に必ず、棒を使って確認する事など、底なしな上に、温度の高さも伝えます。


「とにかく油断大敵!踏み外したら最後、地獄へ一直線です!!」


「……肌に付いた泥は最悪だ。尋常ではない熱さが離れず、まとわりつくんだから」


 バルトとアルベルトの説明に、愕然となる一行へ、容赦なくレオンが言った事を伝えました。


「とにかくレオンは、プシュプシュと言っていた。プシュプシュが、スゴらしい」


 アルベルトは近づけるだけ距離を保ちつつ、レオンの言う『プシュプシュ』を探ります。

 テオたち配合員予定の者たちは、棒を持つ手が震えました。

 しかし自然の作った泥山を眺め、恐る恐る棒で突つくと──。

 見た印象は硬めに見える山ですが、棒が触れた途端、脆く崩れ去ります。

 さらにプシュッと、中から液体を吐き出され、慌てて飛び退のき後退すると、今度は背後の底なし沼に嵌りそうになりました。


「……?うおぉー……ッ!!!」


「えっ?……うわっ!!」


 とにかくやたらと、動かない方が良さそうです。


 レオンがこだわった理由も泥だからでしょうか……。


 しかし目の前にある根源的な恐怖の前に、そんな詮索はどうでもいいのです。


「あのガキ、何考えてんだ!これをどうしろって言うんだよ!!」


 湯気を吸えばヒリつかせ、地面かと思い突くと、沈んで行く棒の先に絶望します。


「……もう、何もかも嫌だ」


 ジャックはブチ切れ喚き散らかし、ガウリは泣きそうな顔で同意します。


「……やっぱりな。嫌な予感したんだよ。まったく天才ってのは、変人ばかりだな」


 光景を眺めながらガツは首の後ろをかき、王都にいる天才(ゼロン)の顔が思い浮かぶ──。

 その言葉に、配合員予定者たちはどこか腑に落ちたような顔をしました。

 その様子にガツが「どうした?」と尋ねると、テオは黄昏たように、ボコボコと弾ける泥沼を見て答えます。


「ゼロンさんとレオン様、類友ですよね。『トラップ・プリンス』なレオン様はたぶん、泥より罠の精度を上げたいだけかもしれません」


 どこか疲れ果てたような配合員予定者たち……。

 そんな周囲をそっちのけで、シクは青ざめた顔で辺りを見渡します。


「レオン様の言うキラキラは、……どこ?」


 目的を達成しようと、気持ちを奮い立たせるシクと、疲弊していく仲間たちの様子に、アルベルトは気まずそう顔を浮かべ、申し訳なさげに切り出しました。


「すまん。罠の配置にレオンは関係ない。……落とし穴を掘った時に考えたんだ。これほど理想的な落とし穴()はないと……。だから無意識にモデルにしたんだと思う。……それは俺だけじゃない」


 アルベルトの無邪気な、容赦のない告白に、彼らは深いため息をつくしかありません。


 ──レオンはただ純粋に、泥そのものにこだわっていた。


 そして自分たちを追い詰めているこの沼地こそが、「忌々しい罠」のモデルで、今、目の前に広がっているという事です。


「……知りたくなかった」


 テオがポツリと呟き、他の者たちも呆然と立ち尽くします。


 ──バシィィィン─……!!!


 バルトが思わずアルベルトの頭を思いっきり叩き、現場の空気がほんの一瞬だけ引き戻すことができました。


「……痛っ! なんだよ、バルト!」


「……バカ者が! 今それを明かしてどうするのです! 彼らの精神を追い詰めてどうする気ですか!」


 バルトの呆れ返った叱責と、アルベルトのどこか呑気な謝罪に、もはや恐怖通り越して乾いた笑いを漏らすしかありません。


「……シク、坊の言う『キラキラ』はカタチじゃねぇ。だが、……とりあえず泥を採取しよう。どこかいい所はなかったか?」


 未だウロウロと歩き回り、『キラキラ』を探しているシクに、ガツは聞きました。

 顔色が悪い癖に、目的を忠実に実行しようとするシクは、足元を用心しながらあちこちと移動しているのです。


「……泥山がたくさんある辺り、ボコボコ勢いない、周りの泥山から取り易い、……はず?」


 コテッと首を傾げ、一瞬眉間に皺を作ったシクに、ガツは訝しげな眼差しを送ります。


 バルトはシクが示した場所を思い浮かべ、だいぶ昔の古参の沼地であり、噴出も少ない落ち着ついた所だと思い出しました。


「……なるほど、あちらの泥山であれば、足場も落ち着いてますし、不意の噴出もありません。シク、よく見つけましたね」


 バルトは少し表情を和らげ、シクの判断に感心したように頷きます。


「ですが、油断は禁物です。見た目が落ち着いても、中身は同じです。高温であることはもちろん、あの泥を素手で触るなど言語道断です。少しでも肌に触れれば、ただでは済みませんよ」


 バルトの警告に、テオたちはゴクリと唾を呑み込み、慎重に木製のスコップや採取用の桶を構え直しました。

 シクが先頭で足場を確認しつつ、前に進みます。

 比較的落ち着いた場所とはいえ、相変わらず似た光景が広がっていました。



 やはり生い茂る緑と、鈍く光る黒茶けた泥の大地です。

 足元には特有の泥沼が絶えずボコッ、ボコッと重い音を立てて泡を弾き、その表面では灰色の膜が気まぐれに破れています。

 岩の隙間からはシューシューと音を立て、熱い蒸気が噴き出し、あたり一帯に立ち込める土臭さと硫黄臭が肌をヒリつかせました。

 頭上を覆う薄暗い木々の隙間からは直射日光が遮られ、緩くと立ち上る湯気が湿った空気と混ざり、ジメジメとした独特の静寂と緊張感をもたらします。


 テオは流れる汗を手で拭いながら、疑わしげな目を向けました。


「……シクさん。さほど変わった様には見えませんが?」


「期待した俺がバカだった。……帰りたい」


 ガウリは小さく悪態をつき、口元を引き攣らせます。

 バルトはそんな彼らの様子を横目で一瞥して、静かに警戒して顔を引き締めました。







読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しくネタになることも♪

誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)

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― 新着の感想 ―
取りあえず泥パックの効能に女性陣の目は光り輝くだろうけどね。
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