こだわりの湯と、極上のひととき
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
アルベルトは「腰まで浸かれる深さがいい」と、石を積み上げ始めました。
それを見たガツとシクは、「なるほど……」と頷き二手に分かれ、自分の湯処を作るために探索します。
その光景を見ていたヴィクトールはバルトを振り返り、コツを聞きました。
そして躊躇なく靴を脱ぎ捨て裸足になると、腕を捲り川に手を入れます。
その隣にいたカトリーヌもまた、当たり前のように靴を脱ぎ捨て、真っ白な足を晒しました。
ヴィクトールとバルトは、その大胆な行動に目を見開くと、彼女は悪戯っぽく笑います。
「あら、父様。私、まだ10歳よ! まだまだ冒険してもいい年頃ですわ!」
カトリーヌは待ちきれないとばかりに駆け出し、ザブザブと足を踏み入れました。
ただ藻の付いた石が滑り易く、バランスを崩す、カトリーヌ……。
「おっと……!」
ヴィクトールは慌てて手を伸ばし、カトリーヌの背中をしっかりと支えます。
「助かりましたわ。父様」
「……まったく、気をつけなさい」
胸を撫でおろしたヴィクトールは、そのまま娘の手を引き、一緒に石積みを始めるのでした。
一方、その喧騒から離れた場所では、レオンとニコが二人並んで平らな岩盤に身を預け、ポカポカと「岩盤浴」を堪能しています。
「ニコ、にいちゃたち、頑張ってるねぇ」
「ええ、レオン坊ちゃま。……あちらは賑やかですねぇ」
二人はのほほんと眺め、笑い合うのです。
そして皆、それぞれのこだわりに照らした『湯処』は──。
アルベルトとシクは共同で、腰までゆったりと浸かれる「腰湯」を完成させました。
アルベルトは、連なる平らな石を背もたれにして足を伸ばし、その隣にいるシクももたれたまま、川のせせらぎに耳を澄ませ、静かに目を閉じ身を委ねています。
「フゥ……景色を見ながら、湯船に浸かる。最高だなぁ」
「……ここ、熱すぎず、冷たすぎず。……最高の温度。いつまでも入っていられそう……」
その少し下流では、ガツが浅瀬の緩やかな傾斜を利用し、仰向けに寝そべり寛いでいました。
頭を乗せるのにちょうど良い、滑らかな窪みのある石を見つけた為、彼の湯処スタイルが決まったのです。
「……ヌルさ加減がちょうどいい。……たまには、こんな休息も悪くねぇ」
数え切れぬほど、戦を駆け抜けた傷だらけ身体を川の中へ、ゆったりと胸から足先まで預け沈めます。
久しぶりに空を見上げ、雲がゆっくりと流れるのを、ガツは静かに眺めていました。
「ニコ、にいちゃたち、腰までヌクヌクしてるねぇ」
「……そう、ですねぇ。……はふぅ」
ニコは岩盤から伝わる心地よい熱に目を細め、レオンの傍らでのほほんと過ごしています。
一方、川の浅瀬には、ヴィクトール、カトリーヌ、バルトによる「足湯エリア」が出来ていました。
「父様、私の使った石をごらんなって! この石、とても素敵な色ですわ。こちらなんてまん丸で可愛いの。色合いの似た石を敷き詰めて、丸石を堰止めに使ってみましたの♪」
カトリーヌのこだわりが詰まった『足湯』が完成したようです。
その横でヴィクトールは慎重に石を動かしながら、ちらりと娘の『足湯』を覗き込みました。
「あぁ、なかなかお洒落じゃないか。フム……、負けてはいられんな」
ヴィクトールは娘の工夫に感心しつつ、自分の『足湯』にも闘志を燃やします。
程よい太さの石を組み、膝あたりまで浸かれるように、底を深めに掘り下げました。
おかげで二人のものより、湯温は少し熱めです。
その隣でバルトは石に腰掛け、『足湯』でまったりと浸ります。
「……ああ、本当に見事な効能です。じんわりとした刺激が心地いい……」
バルトは足先を交互に動かしながら、不思議な温泉を存分に楽しんでいました。
「みんな、あったか〜い?」
レオンが無邪気に声をかけると、それぞれの場所から「ああ、最高だ」「極楽ですね」と、穏やかな返事が返ってきます。
小魚が泳ぐ清流の冷たさと、足元から込み上げる大地の温もり……。
侯爵家の一行にとって、今日という日が、何物にも代えがたい「お宝」の時間となっていました。
さて、レオンは料理監修というお仕事を、今日は任されていました。
ヴィクトールたちが湯処を作成している間、ささっとひと仕事を終え、のほほんしたいと思うレオンです。
幸い本邸にいる使用人と料理人たちは、ほとんどが地元民!
つまり危険な場所を理解しているので、安全に出来て助かります。
実際、レオンたちが寛ぐ場所から少し奥へ進むと、そこは様相が一変するのです。
川辺の穏やかな空気とは異なり、地面から「シューシュー」と力強い音を立て、白い湯気がモクモクと立ち上っていました。
ただその周辺は開けていることで、周りに影響はなく、草木も生え鳥たちも寛いでいます。
ニコや料理人たちは、その湯気が噴き出すエリアから、離れていながら地熱が伝わる場所へ向かいました。
石をどかして地面を掘り進めると、足元で感じるよりも力強く、食材を包み込むに適した熱が、底から湯気を伴い伝わってきます。
「これくらいの深さでお願いします。このあたりなら、豚肉も野菜も最高の状態に仕上ります」
「……なるほど、肌がヒリつく熱さだ」
ニコが示した場所に料理人たちは鉄鍋を埋め、他の場所も同様に掘って鉄鍋を埋めると、鍋の中で旨味が溶け合う時間まで、後はのんびり待つのです。
「みんなのほほん、ヌクヌクよ」
ニコに抱かれたレオンが笑いながら言うと、料理人と使用人たちも、思い思いに行動を開始します。
レオンは昨日見つけた『一番』で、遠くに見える湯気を眺めながら、ポカポカと背中を温めていました。
「あっちの湯気、とっても高いねぇ」
「ほんとですね。あそこが熱源場所なんでしょうか?ただ行かなくても、こうして熱を頂けてありがたいです。レオン坊ちゃま、ここは便利な場所ですね」
レオンはニコの言葉に頷き、「楽ちん、最高♪」と呟いて、大地の温もりをポカポカと堪能するのです。
離れた場所から「熱源」の力強い音と、自分たちの過ごす「憩いの場」の穏やかな温度……。
その絶妙な距離感のおかげで侯爵家一行は、最高の温かさにのんびり包まれ、心地よい贅沢な時間を過ごしました。
やがて時が満ち、鍋を掘り起こす時間が近づくと、風に乗って甘く香ばしい匂いが漂い、料理人たちがいよいよ動き出します。
「レオン坊ちゃま、そろそろ良さそうですよ」
使用人たちも準備を整え始め、食卓を彩り出す様を、遠目で見ている一行は期待が高まるばかりです。
「みんな~、ウマウマ、できたぁ♪」
レオンが声を上げると、次々と地熱の厨房から料理が運ばれました。
レオンは喜んで、ぴょんぴょんと跳びながら、両手を振って教えます。
「ごはんだよ───……♪」
みんなが席につき、使用人たちは料理を運びました。
テーブルの上には、自然の恵みを最大限に引き出した三つの逸品です。
1品目:温泉卵のシーザーサラダ、カリカリベーコン添え
地熱で絶妙に火を通した卵を割ると、とろりとあふれ出す濃密な黄身と、なめらかな白身がぷるるんと主張します。
新鮮な葉野菜の上に乗せ、石の上で香ばしく焼き上げたベーコンを贅沢に散らしました。
カリカリのベーコンの塩気と混ざり合い、野菜を引き立てます。
2品目:豚バラと彩り野菜の「魚バーム」蒸し焼き
キャベツ、玉ねぎ、人参を敷き詰め、薄切りの豚バラ肉を重ねた鉄鍋。
地熱による蒸し焼きは、まさに魔法の調理法でした。
味の決め手である「魚バーム」の、香草の清々しい香りとニンニクの食欲をそそる匂いが、川風に乗って広がります。
地熱でじっくりと蒸された豚バラは箸で切れるほど柔らかく、底に溜まったスープには、野菜の甘みと肉の旨味が完璧に溶け込んでいました。
3品目:トウモロコシの地熱蒸しパン
鉄鍋の蓋を開けると、地熱特有の優しい蒸気とともに、トウモロコシの芳醇で素朴な甘い香りが周囲を包みます。
使用人が鍋底に敷いた笹の葉を指先でつまみ、黄金色のパンを丸ごと持ち上げると、緑と黄色の見事なコントラストに皆から「おお……!」と感嘆の声が上がりました。
「わぁ……スゴい! ふわふわ!」
レオンの声に、料理人たちと使用人たちは、ようやく緊張を解けて笑い合います。
ふんわりもっちりと蒸し上がった生地をちぎれば、笹の清々しい香りが鼻を抜け、噛むほどにトウモロコシの優しい甘みが立ち上りました。
その光景に、ヴィクトールは目を細め、アルベルトやガツは「これはたまらん」と笑みをこぼします。
「この蕩ける卵、絶品ですわ。……さあニコ、どや顔でお代わりを持ってきなさい!」
カトリーヌの茶目っ気たっぷりの言葉に、全員から笑いが起こります。
ニコは顔を赤らめながらも、先ほどヴィクトールに背中を押された自信を覗かせ、「……承知いたしました。今すぐ二皿目をご用意します」と、柔かに応えました。
「ウマウマ、最高!ふわふわ、だいしゅき♪」
レオンはコーン蒸しパンを頬張り、声を上げます。
大自然の熱を味方につけたこの美食の宴は、侯爵家の一行にとって、何物にも代えがたい至福の時間となったのでした。
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