ヴィクトールの崩壊と、お宝の予感。
いつも応援ありがとうございます!
プライベートがバタついているので、しばらく更新が遅く不定期になります。
でもレオンくんたちのお話は大切に書いていきます٩(。•ω•。)و
少しお待たせしてしまうかもしれませんが、のほほんとお待ちいただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
今頃レオンはのほほんとアルベルトとバルトを振り回して、あちこちと探索をしている事でしょう。
アルベルトだけなら心配ですが、バルトも一緒にいるのです。
それにガツとシクが来たことで、ヴィクトールの中で確かな余裕が生まれました。
ヴィクトールは、ガツから渡された特許申請書の署名欄に目を落とします。
そこには、───信じ難い出来事が存在していました。
「……はっ?」
喉から絞り出たのは、あまりに間の抜けた切迫した声でした。
彼は反射的に横に控えていたセバスに書類を押し付けます。
セバスは突然の出来事に、反応が遅れ書類を落としました。
「はぁ……」
呆れたように溜息をついて、落ちた書類を拾おうとしたセバスは動きを止めます。
彼は眼鏡の位置を直しながら、震える手でその書類を拾い上げました。
『代表者:ガイム・イグレシアス』
その横に押された、紛れもない「あの」英雄の紋章である蝋印──。
その事実にセバスの瞳が見開かれ、顔から血の気が引いていきます。
「……これは、閣下。……この刻印、間違いなく……ガイム・イグレシアスのモノです!」
ヴィクトールは椅子から弾き飛ばされるように立ち上がりました。
かつて皇太子時代のアルフレッド陛下と共に参列した、あの厳粛な追悼式。
ガイムの功績を称え、亡き英雄に祈りを捧げた冬の日の光景がフラッシュバックします。
「おい、ガツ! どういうことだ? なぜここに、ガイムの名があるんだ……? 私はアルフレッド陛下と共に、墓の前で祈ったのだぞ!」
──憧憬していた英雄が「生きて」いるという混乱と畏怖。
ヴィクトールの声は激しく震えていました。
今までガイムの戦術を手本にしていたヴィクトールにとって、この書類はまさに神が目の前に降臨したかのようなものです。
ガツはカップをソーサーに戻すと、ソファに深く背を預け、腕を組んで皮肉げに嗤いました。
「──墓か? ああ、あそこに眠っているのは、国が勝手に『死んだこと』にした英雄という名の張りぼてだよ、旦那」
ガツは嘲笑うような態度で、平然と言い放ちます。
「国が国葬までして葬儀をするってことは、ガイムという英雄の功績を、抑制力として利用したいからだろう。未だに亡霊のようにへばりついて、気持ちわりぃ……。だからさァ、この特許にその抑制力を拝借すれば便利だろ? あの刻印がありゃ、誰も文句を言わずに受理する。あの英雄様も、可愛いチビっ子を守護できて、万々歳ってわけよ!」
なんでもないことのようにゲラゲラと嗤い、すまし顔で再びコーヒーを啜るガツに、ヴィクトールは言いようのない怒りと戦慄を覚えました。
一方でセバスはコーヒーのおかわりを、ヴィクトールの前に置き、これまた呑気にチビりチビりとミント水を飲むシクに、「おかわりはいかがでしょう」と尋ねたのです。
──セバスは、もういろいろと悟って開き直りました。
(……これほどの抑止力があれば、レオン様の『やらかし』は、伝説級として処理できますね……。恐ろしい手腕ですが、結果オーライです。えぇ、ようございましたとも……)
戦慄しながらも、即座に実用面でのメリットを計算したのです。
──その頃レオンは、トコトコお山を登っていました。
──屋敷の裏山へと続く、少し険しい獣道。
手入れされた庭園から一歩外へ出ると、そこはもうヴァリエール領特有の岩肌が所々に見せ始めます。
バルトは背負った荷物から地図を取り出し、険しい表情で進むべき道を探り、アルベルトはレオンのすぐ後ろに寄り添い、常に見守るように歩いていました。
「バルト、ここ地面が色があかよ」
レオンは立ち止まり、小枝で地面をつつきます。
バルトは地図と周囲の岩石を見比べ、レオンの膝の高さまで屈んで丁寧に答えました。
「鋭いですね、レオン様。あそこは鉄分を多く含んだ岩盤が露出しています。この先の湯が吹き出る所へと続きますね。非常に硬く、同時に常に温かな熱がある性質です」
「ふうん……。ねえ、バルト。あの『シュー』っていう音、お湯がふき出るの?もっと近くで見たいなぁ」
「残念ながら、あれは地下の毒が噴き出す音です。地面に毒の濃度が溜まるので、レオン様には危険ですよ。この道に沿って歩けば、安全に音を聞ける高台に出ますから、そこでいいですか?」
バルトの返答は、教育係らしくどこまでも論理的で丁寧です。
しかし、レオンはまだその先を諦めていないようで、じっと音に耳を澄ませています。
その横で、アルベルトは黙って二人のやり取りを見守っていました。
こだわるレオンの背中を見つめて、違和感が胸に広がります。
(……まだ、諦めてない)
普通の子供なら、あの『シュー』という音に恐怖を感じ、独特な匂いと光景に引き下がるはずです。
それなのにレオンは恐怖よりも、常にその『モクモク』の場所を探り、その周辺の地形の探究心で頭がいっぱいなのです。
アルベルトは一度足を止め、レオンの手を優しく握りました。
「レオン、少し休憩しようか。……兄ちゃんと、少しお話しないか?」
レオンは不思議そうな顔をして振り返ります。
アルベルトはレオンの視線に合わせて屈み込み、その小さな頬をそっと撫でました。
「なぁ、レオン。どうしてそんなに『モクモク』や『シュー』にこだわるんだ? 兄ちゃんはレオンが、危ない場所に行くのが怖いんだ」
アルベルトの問いかけに、レオンは一瞬きょとんとして、それから遠くから聞こえる『シュー』の方向を見つめます。
その横顔は、三歳児のものとは思えないほど静かで、どこか温かい希望に満ちていました。
「だって、そこにお宝眠ってるの。 ……ボク、自分で見つけて、にいちゃやみんなを『おいで』って呼ぶんだ♪」
アルベルトは驚きます。
ただの『たんけん』のつもりが、レオンは「みんなと一緒の場所」をつくるという、秘密基地だったのです。
「……そっか。レオンはそのお宝をみつけて、みんなに見せたいのか?」
アルベルトは少しだけ好奇心を刺激され、レオンを抱き上げました。
「うん、ボク、がんばるの!」
目をキラキラにして、指差します。
「わかった。なら、兄ちゃんが全力でサポートするよ。バルトの地図を見ながら、レオンが探すお宝の場所まで、安全に連れて行ってあげるからな!」
レオンは「やったぁ!」と嬉しそうにアルベルトの首に抱きつきました。
たぶんレオンは、そのお宝が見つかるまで諦めません。
ならばさっさとみつけて、終わらせてしまえと、アルベルトは思ったのです。
アルベルトに抱えられたレオンは、高い視点から山肌を見下ろせるようになり、さらに好奇心を爆発させます。
「にいちゃ、あっち! もっとあっちに、ガチガチ石あるの。あそこ、きっとお宝あるの!」
レオンが指差した先は、バルトの地図によれば「急勾配の岩壁」であり、危険な場所でした。
しかしレオンの直感は確信に満ちています。
それに……。
「バルト、あそこの石の並び……少し変じゃないか?」
アルベルトが尋ねると、バルトは手に持っていた地図をクルクルと素早く巻き、筒状にしました。それを片目に当て、岩壁の特定のポイントを凝視します。
(……確かに、あの場所だけ、周囲の植生が微妙に違う)
地図の筒を通して一点を覗き込むと、そこから立ち上る「陽炎のような揺らぎ」がはっきりと見えました。
バルトは地図を戻し、震える手でその場所を書き込みます。
「……レオン様、驚きました。あそこは、地熱が極端に高い場所です。ただの岩場ではありません」
レオンは得意げに胸を張りました。
「にいちゃ、バルトがびっくりした! やっぱりあそこ、お宝なの!」
バルトは確認の為もう一度覗き込むと、表情を硬くしました。
「……アルベルト様、やはり危険地帯には変わりありません。あれは近づいてならない場所です」
彼はアルベルトの前に一歩踏み出し、レオンを諭すように説明します。
「岩肌が赤茶けています。つまり濃度の高いモノが、常にあちらから湧き出ている証拠です。……ただレオン様のような小さい方が近づけば、数分で意識を失う『死の溜まり場』があるでしょう」
それを聞いたレオンは不思議そうに、「でも、そこにお宝があるのよ?」と小首を傾げました。
「にいちゃ、ボク平気よ?」
アルベルトを見てレオンは言いますが、アルベルト自身冷や汗を流し青ざめました。
───レオンが「お宝」と感じているすぐそばに、目に見えない毒が満ちている……。
「レオン、いいか。お宝があるのは分かった。だが、あそこは『兄ちゃんでも息ができなくなる場所』だ。……お宝はそこにあるけど、今は近づけない。だから今度は、別の入り口を探さないか?」
アルベルトは、慎重に言葉を選びながら話すと、レオンは納得し頷きます。
ですがそのきらきらな瞳からは、探究心が消えたわけではないと、物語っていました。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
たくさんのブクマやポイント嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)
とても励みになり、がんばろうと思いです。
メールもとても嬉しくネタになることも♪
誤字脱字報告ありがとうございます。(о´∀`о)




