29,最初で最後の アナスタシアside
本編終了回です。明日からは番外編という形になります。
アレル王国に来てから2年、私は16歳になった。もう成人、大人として扱われる年齢。
4つ年上のレイ様は20歳になり、有力な宰相候補と言われていた通り、異例の若さ、最年少で宰相になった。
本人は「買収された」と嘆いていたが、家でも工房でも仕事ができるようにクリストフ様がしてくれたと最初の態度からはうって変わり嬉々として仕事に取り組むようになった。
私はプリザーブドフラワーが落ち着いたので弟子も増えたことだしラインスター領の女性に託し、レイ様を補佐するようになった。もともとそれなりに教養はあったし、レイ様が宰相候補となった時から勉強はしていたので割と早くから補佐できるようになったのは良いことだ。
それに、時間が空くとレイ様は工房に連れて行ってくれて私の希望に沿ったオーダーメイドのガラス細工を作ってくれるようになった。馬車と馬の置き物や氷のお城をモチーフにした置き物も、何でも作ってくれた。
「流石ですレイ師匠!」と言うディーク様。軽くあしらうレイ様を見る限り、工房でもいつも通りなのだと安心する。
レイ様は師匠であり自分の崇拝対象なのだとか。
しかも王太子時代から崇拝していたと。第2王子がそんなので良いのか疑問だが次期国王候補だったディーク様は信徒でありながらも勉強はしていたようで、宰相の補佐のことも私に教えてくれた。
私達はもうすぐ結婚式を挙げるが、もう少し前に結婚していたリジー様とお茶会を開いた。大分友人もでき、お茶会も声をかければリジー様をはじめとして誰かしら来てくれるようにもなった。
リジー様はクリストフ様より3つ上で、第一子を授かったとの報告もされ、お茶会は結婚おめでとう会と妊娠おめでとう会になった。
レイ様はこっそり解析魔法を使って性別を知ったようだが私は生まれてくるまで待とうと思う。きっとどんな姿の子供でも2人は重いくらいの愛を向けるのだろうと予想する。
男の子なら、女の子なら、と名前まで決めているみたいだが私達はどうなるのだろう。成人するまで過度な接触を避けると言うほどに気を遣う人なら妊娠も体に負担がかかると20歳まで待つのだろうか。
結婚式当日、私は馬車の中でレイ様に言われた。
「アナ、僕に恋を教えてくれて、幸せになることはいけないことじゃないって教えてくれてありがとう。僕は本当に感謝しているんだ」
真剣な瞳に吸い込まれそうになりながらも自分の意志を伝えるとレイ様はそれは嬉しそうに微笑むのだった。
赤から紫に変わり、最後は白になるカーペットをゆっくりと進み、神官に誓いの言葉を述べる。
「では、誓いのキスを」
レイ様の男性らしいゴツゴツした指が顎にあてられ、人形のように綺麗な顔が近づいてくる。
いつ見ても顔が良いと思うがそんなことはどうだっていい。これが初めてのキスになるからだ。恋愛経験がない私はレイ様の少し紅潮した頬を見るだけで顔に熱が上がってくる。
そんな私を見てニヤリとしたレイ様は触れるだけの優しいキスを唇に落とした。
本当に恋愛初心者なのか疑いたくなる。
皆から歓声を受け、予想外だったらしい守護竜からの祝福などもあったが無事に結婚式を終えることができた。
結婚パーティーもサプライズで用意してくれたという赤いブローチを胸に付けた。相手の瞳の色を身につけさせるのは周りにこの人は自分のものだと周囲に知らしめる効果があるが、恐らく監禁されていたレイ様は知らないだろう。
実際クリストフ様に教えられて初めて知ったようだった。
屋敷に帰ったら自分の部屋とレイ様の部屋が隣あっていてこれは誰の策略だろうと思ったがメルお姉様がやったらしい。とてつもなく恥ずかしいのだが。
やはり子供は私が20歳になってからと言われたが、私達の個人寝室とは別に夫婦の寝室があるので一緒に寝ることになった。私の寿命が縮まないかが唯一の不安要素だ。
その日からは我慢を止めたというレイ様が激甘になった。出かける時はキスを落とすし寝る前は絶対「ぎゅーってしていい?」って聞いてくる。
眉を下げて上目遣いで聞かれると断ることも出来ず、いつもレイ様のペースに持っていかれる。
それを良しする私も相当レイ様が好きらしい。
これから私は色々な人の手も借りながら宰相兼ガラス作家のレイ様をサポートしていくのだろう。
因みに、メルお姉様とヴィンセント様はその半年後に結婚式を挙げた。
読んでいただきありがとうございます。
次話投稿は明日になります。




