28,結婚式
妄想炸裂回です。
アレル王国に帰って来て2年が経った。僕は20歳、成人したアナが16歳になったタイミングで僕達は結婚式を挙げることになった。
まだ着ている姿は見てはいない。今回、アナのドレスは僕が作っていないからだ。デザインに口出しはしたが試作品の試着くらいしか見ていない。
20歳になって僕は宰相となってしまったが、クリスが気を利かせてくれて地元でも仕事ができるようにと僕の執務室とクリスの執務室を繋げるための魔法陣を置く許可をくれたから前と対して変わらない生活が送れている。
ガラス細工も相変わらず2人だが執務の合間に作っているし、ディークはプロ顔負けのガラス作家として僕と共に世界中から注目を集めることになった。
そんな僕は今、真っ白なタキシードを身に纏い、アナの部屋の近くで待機していた。この後馬車で王都に向かい、式を挙げたら結婚パーティー、ラインスター領に帰ったら手続きなどをしなければならない。
中々に手間のかかる作業だがそれが結婚に関することなのであれば話は別だ。
「アレイ様、アナスタシア様のご用意が整いましたのでどうぞこちらへ」
使用人の1人が呼びに来たので言われるがままにアナの部屋に入った。
「あの…レイ様、私、ちゃんと似合っていますか?」
「うん、凄く…その、綺麗」
柄にもなく真っ赤になってしまった僕は照れくさくて口を押さえた。
「行こうか。皆待ってる」
手を差し出すとアナは恥ずかしそうに手を乗せる。
そして恒例の5時間馬車ゆらゆら。
大切な両親を失った、虐待で一生物の傷を負った、理不尽に婚約破棄をされた。
その時は自分がこんなに幸せになるとは思っていなかった。恐怖が消えたわけじゃない。でもそれは幸せになることを拒否する理由には出来ない。僕はラインスター領で皆に教えられた。
辛い思い出は無くならないけど幸せな思い出があれば耐えられることだと僕は身をもって知っている。
だから、これからは幸せを拒んだりしない。アナのことが好きだと自覚しておきながらどこか一線を引いていた自分を変えたい。今はそう思えるようにもなった。
「レイ様、どうしましたか?」
僕が何も話さないことに気まずさを感じたのか、愛するアナが不思議そうに聞いてきた。
「アナ、僕に恋を教えてくれて、幸せになることはいけないことじゃないって教えてくれてありがとう。僕は本当に感謝しているんだ」
真っ直ぐにアナを見つめてずっと伝えたかったことを口にした。
いつも昼寝の時悪夢に魘されていた僕を起こしてくれて、幸せになるのは罪じゃないと言ってくれた。
そのお陰で幸せを感じる度に悪夢に魘されることも減った。
心からの感謝だった。
「私は思ったことをそのまま伝えただけです。それが少しでもレイ様の役に立てたなら嬉しいです。私もこんなに幸せだと思えるなんて昔なら都合の良い夢なんじゃないかと思うと思います。それでも2年一緒にいて覚めない夢なんて無いです。今日、結婚しますしずっとずっと支え合える夫婦になりたいです」
臆病な自分を受け入れてくれることが嬉しい。
お互いの本心を言い合ったところで馬車が止まった。王都に着いたようだ。
ラインスター家を表す青い扉、シュノシュワ家を表す赤い扉から僕達はそれぞれ入場した。
真ん中に行くに連れてそれは紫がかった色になり、神官の前は白。これから2人でこの白い色を塗り替えるという意味が込められている。
「では、誓いのキスを」
神官の言葉にそれぞれ「誓う」と答えた僕達はその日初めて唇を重ねた。
少し触れるだけのキス。だけど2人とも恋愛経験が皆無だったので初めてにしては上出来だと思う。
一礼して結婚式は幕を閉じた。予想外だったのはイオが乗り込んでいたことくらいだ。イオは僕、アレイ・ラインスターとアナことアナスタシア・ラインスターに祝福を贈った。祝福とは加護とは違うが滅多に与えられるものではない。
おめでとうの歓声とありがとうの歓声が聞こえてくる。
既に結婚をしていたクリスとリジーも結婚祝いを持って来てくれたがクリスが選んだ僕の分だけ禍々しいオーラを放った鏡だった。僕は魔王か何かだと思われているのだろうか。リジーがアナに贈ったのは刺繍のハンカチだというのに。
それでも文句を言わずに額縁に入れて部屋にでも飾ろと思った僕は側から見たら魔王のようにに見えるのかもしれない。
その後の結婚パーティーでは特に問題が起きることもなく、色違いのブローチを贈った。僕の赤はアナに、アナのオレンジが僕の胸に光る。
それが独占欲の表れだと知ったのはクリスに教えられた時だが。
そうだとしたら周りへの牽制効果は抜群だと言えるだろう。
僕はこれからアナと協力しながら宰相として自分達の幸せを作っていく。
読んでいただきありがとうございます。
次話投稿は明日になります。




