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24,アストレア王国の現状 ラインスター家の影side

暴力描写が若干あります。苦手な方は注意してください。

 俺はアレル王国ラインスター辺境伯領主のゲオ・ラインスター様にお仕えして10年目になる影の1人だ。


 影とは専属騎士とは違う、主に潜入捜査や護衛の補佐などをする役目を持つ人間の総称のことで、アレイ様にもメルレイン様にも2人ずつ影がついている。影は名を隠して隠密行動をするため、俺はここに来た時は既にただの影だった。


 それは他の影達も同じだが、よく影をアストレア王国まで遣いに出すことで影の中では有名なアレイ様は影にコードネームなるものを付けているそうだ。俺の目の前にいるアレイ様の影であるネロもそのうちの1人だ。


 俺達は今、アストレア王国の現状を把握するため王宮の窓に張り付いている。少しだけ空いているので中の会話がよく聞こえる。


 「どういうことだ!何故行方不明の王太子3人が全員アレル王国にいるのだ!それに税収が減っただと⁉︎ふざけるな!税率は変えていない筈だ!」


 怒鳴り散らし、持っていたグラスを床に叩きつけたのはアストレア王国国王。


 「ディア殿下がアレル王国で王宮直属の騎士団で騎士団長を勤めたために軍の指揮が上がり、ディーク殿下はアレイ様の下でガラス細工を学び、ヴィンセント殿下がご婚約者のメルレイン様と孤児院でプロジェクトを立ち上げたことに加えて平民向けに学校ができたので職があっても人が足りないという状態だそうです。そこに待遇改善があったため我が国の人口減少に繋がったようです」


 宰相が冷静に解答すると国王は更に激昂した。


 「王子は何故出て行ったのだ!国外に追いやったのは王女を侮辱したアレイだけだろうが!」


 確かにそうだ。そうだが…ネロを見ると必死に笑いを堪えていた。あの時のことを思い出しているのだろう。


 「彼の言い分はこうです。陛下は国外に出ることを命じられましたが何も持たずにとは仰らなかった。王子は荷物としてアレル王国に連れ去られたと考えるのが妥当です」


 手荷物だと言って王子を連れてきたアレイ様を思い出し、俺の口角は自然に上がった。ネロは我慢しすぎて顔が赤くなっている。気持ちはわからんでもないが。


 「一国の王子を荷物だと⁉︎戦争だ!既に除籍されていようが王位継承権を捨てていようが関係ない!アレルに戦争を仕掛ける!精霊も竜の加護も武力で上回れば良い話だ!早く武装して動ける騎士団は全て動かせ!王命だ!」


 下らないことで王命を使うなんて。今のアストレア王国に馬鹿しかいない。第3王子も王女も、アレイ様を追いやった国王も。


 今すぐにでも帰って伝えるべきかもしれないがもう少しだけ聞いていようと思う。その思いが伝わったのか、ネロも窓に張り付いたまま動かない。

 アレル王国に守護竜がいる時点でこの戦争はアストレア王国の敗北は決まったようなものだ。   


 竜の加護を受けるアレイ様が国のためにアストレア王国を潰して欲しいと願えばきっと従う。

 そんなことは無いと思うが。せいぜい竜の姿で威嚇してくれくらいだろう。


 「し、しかし…竜の加護を武力で上回るのは現実的ではないのでは?アレル王国の誰か有力な者を人質として捕らえ、殿下達を取り戻すのが良いかと思います。アレル王国で人気が高まっていて殿下達を連れ去った張本人であるアレイ様であれば効果はあるはずです。

 幸い彼は虐待によって体を傷つけられています。トラウマを掘り返せばすんなり着いてくるはずです」


 宰相が言うことは最もだと思う。

 メルレイン様も自分のせいでアレイ様が傷つけられたというトラウマは残っているようだが、どれだけ頑張っても評価されず、無能なお荷物として扱われていたのはアレイ様だ。


 メルレイン様が屋根裏部屋に閉じ込められている間はアレイ様が身代わりになって人体実験らしきことをされていたそうだ。女性の体に傷があるのは恥だと言われていることを知っていたからこその行動だろう。


 アストレア王国の狙いはアレイ様のそのトラウマを引き出し恐怖で縛り付けること。


 「ネロ、帰るぞ。旦那様に報告に行く。お前はアレイ様の所に行って元王子の方やメルレイン様を含めて報告しろ」

 「はい」


 珍しく真面目な顔をしたネロと共に俺は帰路に着いた。

 因みにネロが報告した結果、アレイ様は爆笑したらしい。

 「ほら見ろ僕を追い出したのが運の尽きだな!」

 と、到底王族に向けた言葉ではなかった。


 アレル王国に戻って来てからアレイ様は少しずつ平均的な体格になってきたし望めば直属騎士団最強と言われるディア様も呼び出せる。


 何よりいざとなれば1,200度まで溶けたガラスを放ちかねない。勿体ないが命あってこそだ、というのがモットーだから。


 旦那様は「ウチの子はそんな度胸があるのか」と呆れていた。

 何処からともなく現れた守護竜のイオ様も「手を貸そうではないか」と胸を張っていたしこの国は温暖な気候に恵まれなかったが人々には恵まれていると改めて思った。


 旦那様は国王陛下にも報告し、アストレア王国の知らない所で準備は着々と進んでいた。

読んでいただきありがとうございます。

次話投稿は明日になります。

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