21,ランプと髪飾り アナスタシアside
今回は前回の誕生日会のアナスタシアsideです。
5月8日は私の誕生日だ。でも家族以外で祝ってもらったことは1度もない。友人も、婚約者もいなかった私は誕生パーティーを開いたところで誰も参加しないとわかっていたし、私自身もそれで良いと思っていた。
でも今日、誕生日の前日にアレル王国に来て初めてできた友人でこの国の王太子であるクリストフ様の婚約者であるリジー様をはじめとする数人が私のためだけに誕生日おめでとうのお茶会を開いてくれた。
初めてのことだった。友人に誕生日を祝ってもらったのは。そこで私はレイ様について友人の1人に聞かれた。
誕生日の前日だし一緒に過ごしているのか、と。
レイ様は朝食の後、ディーク様と一緒に工房の方に行ってしまったため、朝の挨拶程度しかしていないと答えるとリジー様は目を輝かせた。
「クリス様がね、『アレイは美容や服飾に詳しい風の精霊と契約しているし、あっちにいた時にメルレイン嬢の成人式用にドレスを作ったそうだよ』って言っていたから婚約者が誕生日祝いとして公に贈るのは基本的にドレスだしまた手作りしているんじゃない?愛されてるじゃない」
レイ様が私にドレスを手作り…。まだそうと決まった訳でもないのに私の顔は自然に赤くなっていく。なんとか顔の火照りを抑えようとするが、熱は集まるばかりで全く引いてくれない。
凄く恥ずかしい思いをしてそのお茶会は幕を閉じた。
因みに友人からは刺繍入りのハンカチや私好みのぬいぐるみ、リジー様からは可愛らしい装飾の付いたペンを貰った。
誕生日当日にはレイ様の実家、シュノシュワ家、そしてディア様、ディーク様、ヴィンセント様で私の希望通り、細やかな誕生会を開いてもらった。
後日、公の場で誕生パーティーもあるし今日くらいは大丈夫だろう。
そしてやはりリジー様の予想通り、レイ様から贈られたのは淡いオレンジ色の私好みにデザインされたシンプルなAラインドレス。
しかし、予想外のことが1つ。
私は誕生会が終わったら部屋に来て欲しいとレイ様に言われたのだ。
婚約した時に「僕は成人していて君は成人前だ。法律としてはないがなるべく成人するまで過度な接触は極力避けるようにする」と言われていたので何事かと思った。
もっと驚いたのは私以外は何の疑問も持っていないようだったこと。確かに昼寝の時間に膝枕をすることはよくある。でもそれはベッドで寝ると夜まで寝そうだと言っていたレイ様がソファーで寝ようとしていたから私が頼み込んでゲットした役だ。
工房で仮眠をすることもあるし接触の機会はさほど多くない。それなのに皆驚かない。
私にはその理由がわからなかった。
誕生会が終わった後、湯浴みなど全て済ませてレイ様の部屋の扉を叩いた。
「レイ様、アナスタシアです。入ってもよろしいですか?」
私が入室許可を求めると待っていましたとばかりに扉が開き、フワリと柔らかく微笑むレイ様が出てきた。
「どうぞ、入って」
その言葉に従うと質の良いいつもの皮ソファーを勧められる。
「改めて、14歳の誕生日おめでとう、アナ。こうして君の誕生日を祝うことができて本当に嬉しい。公のプレゼントとしてドレスは贈ったけど、これは僕の個人的なプレゼント。市販されていないからこれも手作りになってしまうけど…気に入ってくれると良いな」
可愛らしい箱を手渡され、開けるとレイ様が工房に籠っていた理由がわかった。
「凄い…綺麗…」
中に入っていたのは淡く光を放つランプと赤い薔薇をあしらった髪飾り。
「気に入ってくれたかな?色付きガラスで作ったランプと髪飾りだ」
ソワソワしているレイ様に気に入った、誕生パーティーで着けたいという旨を伝えるとそれは良い笑顔を向けられた。
「うん。是非着けて欲しい。きっとアナに似合う。アナのことを考えて作ったんだ」
凄く恥ずかしい告白をされている気がする。それはレイ様もわかっているようで、頬が赤く染まっている。
「ずっとずっと大切にします」
私がそう言った後暫くはお互いに何も話さず見つめ合っていたが急に恥ずかしくなったのでプレゼント以外の会話をすることもなく私は自室に戻った。
今日はきっと私の人生の中で1番の誕生日だと思う。
読んでいただきありがとうございます。
次話投稿は明日になります。




