11,孤児院専門学校化
まずは整理をしよう。アレル王国は広い。それこそ、そこそこ広いことで有名なアストレア王国をも上回るほどの広さがある。
国の広さの分だけまともな生活が保証されない者も多い。
5歳から働かなければいけない者、そもそも出自を理由に雇ってもらえない者、賃金を横取りされても気付けない者。この国の孤児問題は早めに解決するに越したことはない。
だからまずは試験的にラインスター領で政策を実施し、王太子のクリストフ(通称クリス)の方に報告書を提出すれば良い。
まずはお祖父様が人口流出と共に廃校になった学校を改装した。丁度町の中心部に位置していて大体どこの孤児院からでも登校できるようになっているが保険で特注馬車をそれぞれの孤児院に渡しておく。メルや僕が乗るような馬車ではなく、それなりに地味な色合いで強度を重視した設計。ディークは感動していた。
全ての孤児を孤児院に預けることは人数的に無理そうだったのでとりあえず、問題を起こし、差し押さえとなった貴族の空家(?)をリフォームして孤児院として解放してみた。運営の方はヴィンとメルが主体でやってくれるそう。頼もしい限りだ。
腐っても流石貴族。孤児だけでなく、ひとまずラインスター領のスラム街にいた全員を屋敷に入れることができた。
学校の方はどうしようかと思ったが、孤児院にいる教育係が学校ができると余るということだったので、試験を実施して何人か雇ってみた。
ここでは文字の読み書きや計算の仕方などを教えていく。文字が読めて計算ができるようになれば、働いたときに給料を抜き取られても気付ける。
午前中は年齢別で学年を組み、基礎知識の獲得。午後はラインスター領にある3つの孤児院で働くための実践経験を積む。
今のところ考えているのは6歳以上12歳未満は魔物の羽毛を使った寝具の開発、12歳以上は未だに貴族の間でしか流通しない消耗品の一般化(石鹸など)。20歳からは実践講師や座学講師、就職、希望すれば商人としての知識を学ぶ。
他にも僕とディークしかいないガラス細工を工房で、僕とアナスタシア主体のプリザーブドフラワーについても冬の間の内職にもできるので町の役場を借りて講義の時間をアナスタシア主催で作ってくれるそうだ。アナスタシア曰く、「張り切って働いて過労死したら意味がない」とのこと。
領主のお祖父様が町にアナウンスした際、領民は泣いて喜び一晩中お祭り騒ぎとなった。
その中には祖国で貴族から理不尽に迫害されて流れてきた者もおり、この国は天国ですかと叫んでいた。
残念ながら天国ではありませんが。
確かに平民を良く思わない貴族も多い。アレル王国は統治する者の影響で平民への扱いは比較的良心的な貴族が多いがこれでもかというほど甘やかされて育った令嬢子息、存在そのものが気に食わないという領主もいないわけではない。
馬鹿だと思う。平民が税を納めなければ働いて賃金を得ているわけでもない貴族は生活ができない。歴史にも、平民が反乱を起こし、領主を暗殺する事件が数多く存在するというのに。
平民が一生働いても買えないような服を着て、一生かかっても食べられないような食事をして、一生かかってもできない贅沢極まりない生活をしているなら民の利、この国の利になることをできるようにサポートするのが仕事だ。叔父一家のように金を湯水のように使えばすぐに経済は破綻してしまう。
「レイ師匠、工房ができたって領主様が」
すっかり師匠呼びが板についたディークが僕の部屋に入ってきた。
「わかった。すぐに向かうよ」
僕は二つ返事で了承し、ディークと共に与えられたガラス工房に向かった。
その際、時間を見つけては余ったガラス片で作っていたランプを孤児院専門学校化に僕のサポートとして尽力してくれたお礼代わりにとサプライズしたところ「家宝…!」と叫んでいたので重度のガラス細工教信者なのだろう。
色付きガラスなら尚良しだったが。
ディアとヴィンは「ちょろディーク」などど言っていたが聞かなかったことにしよう。
読んでいただきありがとうございます。
次話投稿は明日になります。




