第29話 【キメラの弱点】
俺はキメラのライオンの方の右目に当たるように、剣を振り、見事命中した。だが、剣が触れる瞬間、キメラは瞬きをしたため、大してダメージを与えられず、そのまま地面にうまく着地した。
兵士達は俺に続き、キメラの足を攻撃している。しかし、キメラは痛がるどころか、HPがほぼ減っていない。つまり、一撃で王子を倒す攻撃力、そして、この防御力。唯一の弱点は身体が大きすぎて、スピードが遅すぎることか。
「ん?あれは...」
俺の目線の先には、恵美の後ろで立ち尽くしているツバキがいた。
「ツバキ、どうした?」
「ごめん...。」
ツバキは同じ仲間でも1歳年下だ。やっぱり最初からこんなにデカイボスを相手にしたら流石にビビるか...。
「ツバキ、パーティ加入を俺にしてくれ。」
「う、うん。」
ツバキは素早くメニューを開き、パーティの加入のコマンドをカナタに送った。それを人差し指でタップする。
「よし!」
「カナタ!もうそろそろMPが尽きて、足止めできなくなりそうなんだけど!」
兵士達は魔力が尽きたのか、全員が攻撃にまわっていた。例え消費MP半減、威力1000倍とはいえこの大きさのモンスター相手だと、もうそろそろが限界だろう
「あぁ!すぐ行く!ツバキはこの中でも3番目に強い。俺に続いて攻撃すれば【キメラ】だって倒せるさ。もしツバキが負けそうになったら、俺が守ってみせる。」
「カナタ...。うん。私、頑張ってみるよ。」
その言葉を聞くと、【キメラ】に向かって走り出す。
「そこの兵士A・B!しゃがんでくれ!」
「「はいっ!」」
背後からのその大声に反射するかのように、2人はしゃがみこむ。それを踏み台にして、俺は再び奴の双頭の片方、ライオンの方の左目に向かって跳んだ。そして、剣を両手で構え、思いきり眼球に突き刺した。
「グゥワアアアアアアア!?」
その喘ぐ声がキーンと頭にきて思わず左手で耳を塞ぐ。とても痛かったらしく、【キメラ】は思い切り頭を揺らし出した。大きな瞳に刺されてある光剣をしっかりと握り、それが収まるまで落ちないように耐えた。
「危なかった…な…。」
すーはーと小さな深呼吸をして息を整える。俺はニヤリと笑い息を吸い込み──
「みんな、さがれ!」
少しキメラの足元でざわめきつつ、兵士達と恵美、ツバキは壁付近までさがっていく。
「超電磁砲!」
と言うと雷剣がバチバチと鳴り響きながら発光し、超電磁砲が放たれた。それは【キメラ】の頭部を貫通すると同時に、爆発の反動で俺もまた壁に吹き飛ばされた。轟音がなり、壁にクレーターを作り、地面に落ちて倒れこんだ。
「空っ!」
「カナタ!」
心配そうに2人の少女らは駆け寄ってきて、俺の身体を揺すっている。
「そうだ、ヒールしないと!」
俺は、恵美の差し出す右手を掴んだ。
「カナタ、即死級の攻撃には直接手を当てないとあまり回復が...」
「...回復しなくていい。恵美、お前はこのまま攻撃をしてくれ。MPが尽きたならアイテムを使えばいい。ツバキも恵美の援護を頼む。俺のことなら心配するな...。HPが残ってる時点で自動で回復できるスキルをつけてるからな...。ゲホッ、ゲホッ。」
これは現実でいうところの全身の骨が砕けてる感じかな。全く身体が動かない...。こういう怪我とか痛みはHPを回復すれば大体治る。少し時間がたてば治るだろう見たところさっきの攻撃でゲージ1本削れたかな。残りゲージは2本。やはり、あの硬い皮に覆われていない目はあいつの弱点らしいな。...あれ?ゲージが分裂している...のか?いや、キメラがライオンと黒い山羊に分裂している...だと?!




