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異能境界  作者: zip
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3/12

星を描く先生

ついに転校初日!

零爾を迎えるのは、研究施設のような怪しい校舎と……ちょっとイケメンすぎる担任の先生?


転校初日。

零爾は、先を歩く重条 朔哉の背中を追いかけながら、静まり返った廊下を歩いていた。

「まず教員室に行くぞ」

「教員室?」

「ああ。担任と顔合わせしてもらう。ついでに今日の流れも説明してもらうから」

「担任って、どんな人なんだ?」

「会えば分かる」

重条はそれだけ吐き捨てると、淡々と歩を進めていく。

廊下には、普通の高校では見かけることのない設備がいくつも並んでいた。

何かの測定器らしき機械や、やけに頑丈そうな金属製の扉。

窓の外を見下ろせば、異様に広いグラウンドが広がっている。

「……学校っていうより研究施設みたいだな」

「まあ、ここにいる奴らが普通じゃないからな」

朔哉が足を止めずに振り返る。

「異能力者を集めてる学校なんだ。普通の学校とは違うだろ」

「……それもそうか」

零爾は自分に寄り添う狼の頭にそそっと触れながら、呟くように答えた。

しばらく歩くと、廊下の突き当たりに一つの重厚な扉が見えた。

「ここだ」

十条が扉の前で足を止め、軽くノックを鳴らす。

「失礼します」

扉を開けて中へ入ると、奥から男の爽やかな声が響いた。

「お、朔哉か」

零爾も朔哉の後に続いて教員室へ足を踏み入れ、中を見回す。

部屋の奥から、一人の男がこちらへ視線を向けていた。

「……君が転校生?」

長身で整った顔立ち。

教師というより、どこか芸能人のような華やかな雰囲気を纏った男だった。

男は椅子から立ち上がると、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。

「狼谷 零爾くんだね?」

「あ、はい」

「初めまして」

男は柔らかく自然な笑顔を浮かべた。

「赤星輝聖(あかほしこうせい)。君の担任だ」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」

零爾が差し出された手を握り返した、その瞬間だった。

赤星の瞳が、ほんの一瞬だけ鋭く細められる。

「……へえ」

「?」

「いや、なんでもない」

赤星はすぐにいつもの気さくな笑顔へと戻った。

「緊張してる?」

「まあ……少し」

「そりゃそうだよな。いきなりこんな学校に転校させられたんだ。慣れろって言われても無理だろ」

そう言って赤星は軽やかに笑う。

思っていたよりもずっと話しやすい人物の登場に、零爾は胸をなでおろした。

「赤星先生、今日の予定は?」

手持ち無沙汰そうに立っていた十条が尋ねる。

「ああ。まず零爾を教室に連れていって、みんなに紹介する。その後は簡単な説明をして――」

赤星はそこで一度言葉を切り、零爾の顔を覗き込んだ。

「まあ、最初は普通に学校生活を送ってもらえばいい」

「普通に……ですか?」

「そう」

赤星は頷いた。

「ここは異能力者の学校だけど、別に毎日戦うわけじゃないからね」

「……戦うこともあるんですか?」

「そりゃあるさ」

さらりと告げられた言葉に零爾が気おされていると、赤星は自分の前髪を軽くかき上げ、どこか遠くを見るような目で微笑んだ。

「異能力なんてものを持って生まれてきた以上、そういう『星の下』にいるってことだからね。自分の身を守る方法くらいは覚えた方がいい」

その言葉に、零爾は昨日の出来事を思い出した。

自分の中に目覚めた未知の力。

まだ何も分かっていないそれを、この学校では当然の前提として扱っている。

「……分かりました」

「よし」

赤星は満足そうに頷いた。

「じゃあ、行こうか。みんなのところへ案内する」

三人で教員室を後にし、静かな廊下を進む。

同じ学年の生徒は、あと三人。これからその全員と時間を共にすることになる。

押し寄せる緊張を隠せない零爾に、前を歩く赤星が肩越しに笑いかけた。

「大丈夫だって。最初のうちは、俺がいる」

その言葉に、零爾の緊張が少しだけ解けた。

赤星の後ろを歩きながら、この時の零爾はまだ知らなかった。

この気さくな教師が――

この世界でも数少ない、特別な異能力者の一人だということを。

(第3話・完)

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