第9話 『実証実験』
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「お?」
ウィンドウにゴーレム個々のデータが現れた。
10体一括展開が可能だったのだ。
『ペーパーゴーレム』だけだと、5×2の10なのでできる。
そして、項目最後の数値が、目まぐるしく動いている。
一撃当てるだけでも経験値を得られることが判明した。
攻撃したという事実だけでよく、ダメージを与えたかどうかも問わないようだ。
岩とかへの攻撃でもよいのではないだろうか?
たぶん、経験値を得ることが出来るだろう。
できるのにはもちろん理由があった。
一度に得られる経験値が『力』の3割なのだ。
『力』。
ゲーム的に表現するなら『STR』。
値が大きければ大きいほど、強い力で攻撃ができる。
重い物を持てる、となる。
では、それがどのくらいかとなるわけだが――
『ペーパーゴーレム』のステータス。
形状の違いに関わらず全て一律だ。
『種族』の統一規格なのだろう。
人間のものと違い『攻撃力』と『生命力』がなくなっていた。
まさに『力』のみの表示となっている。
あと『体力』が『耐力』になっているのと『幸運』もなくなっていた。
まあ、ゴーレムだからね。
耐久力となるし、運なんてものはない。
で、経験値の話に戻ると。
もとの『力』が2なので、5回以上の攻撃で1しか増えない仕様だ。
次のレベルまでは1000の経験値が必要。
つまり5000回以上攻撃しなくてはならない。
これだと、『倒さないと経験値が手に入らない』のではいつまでたってもレベルが上がらないことになる。
攻撃するだけで経験値が溜まるシステムでなければ、バランスがとれないのだ。
壁を殴るだけでも、体は動く。
この『動く』を経験値として考えるのだと思われた。
そもそも、ゴーレムというのは自分では動くはずのないものに、かりそめの『命』またはそれに類するものを与え、『動かす』能力だ。
動かすだけで魔力を消費し、魔力操作をすることになる。
これを『経験』と呼ぶのではないだろうか?
魔力操作の熟練度と考えれば、ダメージを与えずとも『殴る』だけで経験値が溜まる理屈が成り立つ。
『力』の三割というのは、10の力を使った時、その動作をするのに必要な魔力操作が3だとすれば——
「だぁぁぁぁっ、いつまでやってんだよっ!」
おお。
やられっぱなしだった最年少の隊長様が暴れ出した。
経験値稼ぎでちまちま攻撃させていたのがうっとうしかったようだ。
さすが、隊長の役職は伊達でも飾りでもなかったようで、一瞬にして7体が粉砕された。
紙だからね、剣で叩かれちゃひとたまりもない。
一見雑に振り回された剣先が、優雅な曲線を描く
そこに吸い寄せられたかのように、『ペーパーゴーレム』がまるで、プラネタリウムに映し出される星座のように描かれた曲線上に移動。
紙片となって散らされた。
織り込まれていた髪が、空中で開いて、さしずめ雪のようだ。
ふわり、ふわり、と舞ながら落ちている。
無事だったのはポケットに入れっぱなしの『チューリップ』と地面這ってた『亀』、そして紙一重で躱して上空へ逃げた『鶴』だった。
「あ」
驚いた。
ウィンドウが赤くなっている。
メッセージが表示されていた。
【『ペーパーゴーレムのレベルが上がりました。レベル2になり、特技『積層』を習得しました』】
レベルが上がっていた。
なんと、倒されたとき一体につき100の経験値が入ったのだ。
そして、個々に得た経験値は『ペーパーゴーレム』という種族に収束されることが判明した。
何体倒されていようと、倒されたゴーレム個々の経験値が代表一体に集められ、引き継がれるもののようだ。
形状がどんなものであっても、『ペーパーゴーレム』であることは変わらないということだろう。
能力も一律であるし、経験値も共有できるのだ。
それは、『重複する経験』の時には経験値にならない可能性もあるということになるが・・・それは仕方ないだろう。
今回引き継がれたのは『鶴』だった。
経験値が一番多かったからだろうか。
で、ちまちまとした攻撃で得た経験値と合わさって1000を超えたらしい。
そして、レベルが上がった。
特技まで得たようだ。
『積層』。
普通に考えれば、積み重ねるってことだ。
なにを?
積み重ねる……素材か、形か、魔力か。
これは確認しておかないと――。
「あーっと、すみません。つい・・・」
思索にふけっているとエリオットが突然謝ってきた。
「だいじょうぶだよ。やられたらどうなるかも見たかったからちょうどいいくらい」
ゴーレムを叩き壊してしまったことに対しての謝罪だとわかったので、首を振った。
実験をしていたのだし、概ね成功だったと告げる。
事実、大成功だ。
ゴーレムのレベルアップは予想外だったからな。
だけど、朝練はここで終わりだな。




