第10話 『朝飯前』
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始まりが遅かったこともあったし、なにより他にやることができたので『朝練』は早々に切り上げた。
自室に戻って体を軽く拭いて着替える。
あとは朝食まで待ちの時間だ。
もちろん、ボケーっと待つつもりはない。
『積層』の意味を確認しなくてはならないし、『ステータス』の変化も見ておきたかった。
「んーと?」
耐力と魔力は若干上がっている。
10%と2%。
数値で見ればわずかな違いだが、上がるってことが分かっただけで十分満足だ。
・・・あれ?
変わってなくない?
もしや、ステータスは変わらないままなのか?
不安になったが、そうではなかった。
LV:2
EXP(経験値):0/5000
強化ポイント:5
「ゲームかよ……いや、ありがたいけど!」
強化ポイントなるものが出現していた。
この仕組みは覚えがある。
期待に胸を膨らませて、操作してみると・・・。
「おお。やっぱりかっ!」
予想通り。
ステータスの数値に強化ポイントを振り分けて加算することができた。
今回で言えば、『知力』に2、『素早さ』に2、『器用』に1を加算したのだ。
『攻撃力』とかに加算することも考えたが、材質は『紙』だ。
上げたところで、限界があるだろう。
ならば、特徴を生かすのが大事だし、何よりも命令を確実に把握する知力が欲しい。
そのうえで『器用』に、『素早く』動いてもらうことを考えた。
これがベストだと思う。
そして、最後。
特技『積層』についてだ。
これについても、ある程度は帰り道に考察してある。
字面からして、積み重ねて層をなす能力だ。
ならば。
残っている『亀』と『チューリップ』を出して、『鶴』に特技『積層』を使わせた。
結果は予想通りだ。
『亀』と『チューリップ』が消えて、『鶴』の経験値が40増えた。
キャラを合成しての強化が可能ということだと理解できる。
もしかしてと、試した『布』の『クロスゴーレム』は『積層』できなかったから、同じ『材質』同士でないとダメなのだろうと思えるが。
1体で20。
数値は低いものの魔力消費30で自分の経験値を増やしつつ、作り出したゴーレムで既存のゴーレムを強化できるわけだから、かなりお得なシステムと言える。
「これは……やりようによっては、とんでもないことになるぞ」
このシステムはかなりおいしい。
まぁ、基本的な問題をどうクリアするかによるけれど…。
それはさておき——
「えっと」
まずは、『ペーパーゴーレム』を9体、新たに作り直した。
自分の基礎能力が減ってしまうからというのもあるし、Lv2で作った場合の変化も見たかったからだ。
形状は、すべて『鶴』にした。
『紙』のゴーレムに地面を走らせてもあまり面白くはないからだ。
雨でも降ってぬかるんでいたら、一発でダメになる。
雨に関しては『鶴』でも似たようなものだが、宙を移動できるなら降ってさえいなければ行動可能だ。
そして、空中での運用をするのなら『亀』よりも『鶴』だろう。
Lv2で統一してみたが、ステータスに変化はなかった。
コンマいくつかの差が出てはいるのかもしれないが、これは確認できないようだ。
「それはいいんだけど・・・」
ウ―ム。
部屋の2割くらいを占領している者たちを見つめて唸ってしまう。
ちなみに、ベッドも2割、本棚も2割を占め、残りの四割は机と動線となっている。
つまり、部屋の5分の1が、彼等によって占拠されている状況なのだ。
クラゲ・・・もとい!
『クロスゴーレム』たちのことだ。
どうしたものか。
正直、大きさと『布』の特性から屋外へ出して連れ歩くのは現実的ではない。
かと言って部屋に浮かべているだけでは経験値も得られないし、何の役にも立たない。
クアルトの『抵抗値』を上げることでしか貢献できない。
これでは面白くない。
「えーい。やってしまえっ!」
考えるのが面倒になったクアルトは、迷いを振り切るがごとく机にのせていたナイフを手に取ると、軽く駆けだして・・・振り下ろした。
ナイフが向かう先はもちろん、『クロスゴーレム』たちだ。
一体を除いてすべて切り裂いてしまう。
当然のごとく、ゴーレムではなくなり、ただの布切れと化す。
「ああ。うん、だよね。わかっていたよ」
ステータスウィンドゥを開いてみて、がっくりと肩を落とした。
予想はしていても、実際に目の当たりにするのはツラい。
倒されたわけだが、経験値が1ポイントたりとも増えていなかった。
マスターたるクアルトの自作自演では増えないということだ。
敵、とまで言わなくとも『身内』以外の攻撃で倒れないといけないらしい。
たぶんだが、魔物にわざと倒されるように突っ込むカミカゼアタックも無駄になるのだと思う。
当然に『倒した』クアルトにも経験値は入っていない。
だが、製作の経験値は普通に入った。
たった今切り裂いた布で、もう一度9体作り直したのだ。
形と大きさは変えて。
縫ったのをバラバラにしたので、形は尺取虫のような長細いものとなっている。
かなり小さくなったので、維持魔力も小さくなり、みるみる魔力が回復していく。
魔力消費によるクアルト自身への経験値が増加したうえで、これなら悪くない。
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