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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第二部、『帰路』

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第89話 『仕分け4』 

2/2

 


「……できてしまった」

 気づけば、倉庫の“ゴミ”が消えていた。


 貝殻。

 骨。

 卵の殻。

 角。

 蹄。


 そして、それらの加工品。

 全部が、跡形もなく消えている。


 代わりにそこに立っていたのは――

『真珠』と『象牙』のゴーレム。


 淡く光を放つ真珠の身体。

 白く滑らかな象牙の外殻。

 どちらも、宝飾品として扱われるはずの素材だ。




【『イミテーション・パールゴーレム』を作成しました。】

【『イミテーション・アイボリーゴーレム』を作成しました。】




『イミテーション・パールゴーレム』。

 文字通り『真珠色』のホヌ(海亀)が、頭上で輪を描いている。

 大きさは人差し指の第一関節程度。

 実に愛らしい。


『イミテーション・アイボリーゴーレム』。

 象牙、だけにゾウガメだ。

 これまた、そのまんまの『アイボリー色』。

 前世で持っていた『マンモスの牙』根付を思い出す。


 そして、予感は当たる。


「……やっぱりだ」

 クアルトは震える指先でステータスを開いた。


 真珠には『拡散』。

 魔力を偏りなく広げ、流れを均一に整えるスキル。


 象牙には『集中』。

 魔力を一点に集め、効率よく束ねる作用。


 どちらも、マスターであるクアルトの魔力操作を“補助”する。

 ——だけではない。

 魔力の流れそのものを、素材側が自動で最適化してくれる。


「……これ、制作精度が跳ね上がるじゃないか」

 魔力を均一に広げる“拡散”。

 魔力を一点に束ねる“集中”。

 相反するはずの二つが、クアルトの魔力操作と噛み合って“循環”を生む。


 今後、ゴーレム制作時の質の向上する――どころではない。

 魔力消費の効率、抽出の安定性、素材融合の成功率――

 すべてが一段階上の領域に入る。


 クアルトは息を呑んだ。


「……やばい。これは本当にやばい」

 真珠と象牙。

 宝飾素材のゴーレムが持つ“対のスキル”。

 それは、魔力制御の基礎式そのものを変える力だった。


 ——『植物』——


 残ったのは、果皮、種、ナッツの殻、花弁、藁……

 植物の一部ばかりだ。


「何かになるのかな」

 正直、あまり使えそうに思えない。


 木材や布のように形を作れるわけでもなく、金属のように強度があるわけでもない。

 ただの“植物のゴミ”。


 そう思いながらも、クアルトーー『僕』——はひとまとめにして『素材鑑定』をかけた。

 淡い光が走り、文字が浮かぶ。


「……『プラントパーツ』ってなんだろ?」

 そんな素材名らしい。


 よくわからない。

『オレ』さんが興味なくすわけだ。

 でも――



【『プラントパーツゴーレム』を作成しました。】



「作れちゃった」


 できたのは海亀。

 丸い甲羅はナッツの殻と果皮の寄せ集め。

 手足は藁と細い枝。

 目の部分には黒い種をはめ込んだ。


「おお。ちゃんと動く」

 重さを感じさせない動きで浮き上がり、クアルトの頭上に静かにとどまっている。


 藁の手足がゆっくり揺れ、甲羅に使ったナッツ殻が淡く光を反射する。

 目に埋め込んだ黒い種が、まるで呼吸するように微かに脈動していた。


 体の大部分は、ナッツの殻がうろこ状にびっしりと貼り付いている。

 乾いた木の殻が重なり合い、光を受けて褐色の鱗のように鈍く輝く。


 背中の甲羅はさらに異質だった。

 特に大きな殻だけを選んで組み合わせた幾何学模様。

 自然のフラクタルのように規則的で、まるで森そのものが描いた魔法陣のように見える。

 しっぽは細い藁を束ねたものが、ふわりと揺れた。


 風に触れれば草の香りが漂う。

 ヒレは果皮の薄片を何層にも重ねたもの。乾いた皮が羽のようにしなり、

 動くたびに柔らかい音を立てる。


 そして、体のあちこちに花びらが咲いていた。

 甲羅の隙間、うろこの間、藁のしっぽの根元にまで、色とりどりの花弁がひらひらと揺れている。


 極めつけは内部だ。

 殻の隙間からわずかに見える影――


 無数の種が、ぎっしりと詰まっている。

 その種が、心臓のように脈動していた。


 そして海亀は、ふわりと浮かび上がり、クアルトの頭上に静かにとどまった。

 植物の破片で作ったはずのゴーレムが、まるで“森の精霊”のように。


 で、スキルはと言えば『育てる』。

 何を育てるのかは謎。


 でもいい。

 今はそれで十分。

 倉庫も片付いたし。



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