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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第二部、『帰路』

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第88話 『仕分け3』

1/2

 


 ——『骨』——。


『ハイドロキシアパタイトゴーレム』。


 骨素材は、アパタイト(リン酸カルシウム)として他のゴーレムの補強材に回せる。

 残念ながら上限には達しなかったので、進化には至らなかった。


「……これ、ゴーレム、なの?」

 副ギルド長が、アパタイトゴーレムをしげしげと見つめていた。


 ゴーレムと言われて誰もが思い浮かべる、ごつい巨人。

 それとは全然違う。

 スマートで繊細。

 イメージから外れ過ぎていたのだろう。


 さまざまなゴーレムが次々と生まれ、レベルを上げながら動き始めていた。




「あー、えっと?」

 作り続けていく中、『僕』が戸惑いの声を上げた。


 数が増えすぎて、把握しきれなくなったらしい。

 少し、整理してみようか。




『パーケットゴーレム』の馬車。


 細かく組み込まれた『モザイク』。

 力を左右に散らす『ヘリンボーン』(杉綾)。

 力を一点に集中させる『シェブロン』(山形)。

 ねじれに強いブロックパターン(市松)。


 ――の四台。


 『ジョイナリー』の馬が10頭。


『ウッドゴーレム』の馬も10頭。


 ——がいる。


 『ラミネートクロスゴーレム』×10。

 クリーム色の巻き布性の人型。

 これを、ウッドゴーレムと組み合わせれば、軽騎兵の完成だ。


『レザーゴーレム』×10。

 革の色合いがそのままのしなやかさのある人型。

 これは弓兵にでもすればいい。



 大盾を構えたスパルタ兵的歩兵。


『ファイアブリックゴーレム』×10。

 赤茶色の耐火煉瓦が、人型と大盾を形作っている。


 『グレーズドゴーレム』×10。

 ガラス質の光沢ある表面が美しい人型。

 これもまた、大盾を構えている。


 未だ、何一つ変化させていない既存の騎兵もいた。


『ブラスブロンズゴーレム』(騎士) ×10

 黄金色と赤銅色が混ざり合ったような、どこか儀礼用の鎧を思わせる美しい輝き。


 軽量で、動きが滑らか。

 関節の可動域も広く、騎士というより『軽騎兵』のような印象。


『リクリスタライズ・マーブルゴーレム』(馬) ×10

 白大理石の再結晶化による『生きた彫刻』のような馬。


『シンタードアイアンゴーレム』(騎士) ×10

 焼結鉄の黒灰色に、青銅の筋が走る。

 重厚で、まるで古代の巨兵が蘇ったかのような存在感。


 重量はあるが、安定性が高く、盾役として完璧な構造。


『ブロンズゴーレム』(馬) ×10

 緑青の模様が美しい、古代戦車の馬のような金属馬。


『ラミネートペーパーゴーレム』の段ボールドローン×10。


『ポーセリンゴーレム』。

 陶器。透明感がある艶のある白い肌。

 気品のある貴族女性の姿。

 赤い夜会服姿が艶やかだ。


『スタビライズド・フォレストガラス』

 きれいな緑色が八体。

 茶色が二体。

 10体の手のひらサイズのトカゲたち。


 これが、現状となる。


「うん。大丈夫」

 実際に目の前に並べてみて、クアトルは頷いた。


「続けるよ―」


 ◇


 ——『炭・灰』——


 炭と灰はいずれ嫌でも使う。

 金属ゴーレムを抱えている以上、合金制作に必須素材だからだ。

 単一で使う道もなくはないが、今は保留だ。


 当然、金属もそうなる。

 この世界で“合金”と呼べるのは、せいぜい青銅と真鍮。

 それ以外の金属を混ぜ合わせた素材が、街中に転がっているなんてことはまずない。


 ただ、数は極めて少なく、質も高くない。

 既存の兵たちをほんの少し大きく、より成功にすることしかできなかった。



 だからこそ、炭と灰の価値は跳ね上がる。

 金属加工の未来そのものだ。


 ――『貝殻・角』——


「あと……もしかしてだけど……」

『オレ』は興奮を抑えようと、喉を鳴らしてつばを飲み込んだ。

 倉庫の奥に積まれた山。


 貝殻。

 角。

 蹄。

 どれも“ゴミ”として扱われてきた素材。


 だが――。


「もしかして……できるのか?」

 震えがくる。


 背筋がぞわりと粟立つ。


 貝殻から真珠層を取り出せるなら?

 固めて形にすれば?

 それは『パール』、真珠になる。

 天然ではなく“人工真珠”だが、素材としては十分すぎる。


 角と蹄に、骨由来のリン酸カルシウムを“融合”させれば――

『アイボリー』すなわち象牙だ。

 象牙そのものではない。だが、性質は限りなく近い“人工アイボリー”だ。


 どちらも、この世界では貴族しか持てない高級素材が、目の前の“ゴミの山”から作れてしまう。

 天然と比べて効率が良くなるのか、スキルに影響はあるのか?

 そこはいつか天然物と出くわしたら検証することになるだろう。


 だが――

 今は作れるってだけで十分だ。


「……マジかよ」

 クアルトの手が震えた。

 気づいてしまった自分に慄く。

 素材の価値が、世界の常識が、一瞬でひっくり返る音がした。


「で、できる……」

 クアルトは思わず声を漏らした。


 ゴーレム制作の基礎スキル――

『素材鑑定』『抽出』『融合』。

 その三つを組み合わせれば、本当に作れると分かってしまった。


 もちろん、量は多くない。

 大量生産なんて夢のまた夢だ。


 だが――。


「行ける……これは行ける……!」

 胸の奥が熱くなる。


 宝飾品系の素材に分類されるなら、魔力消費量減少系のスキルが付く可能性がある。

 それは、ゴーレム使いにとって“禁断の領域”だ。


 維持コストが下がる。

 保持数が増える。

 戦力が跳ね上がる。

 作らないという選択肢は、もう存在しなかった。


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