第87話 『仕分け2』
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――『布』——
「ここからは一気に進める」
クアルトは次の素材の山へ視線を向けた。
ひときわ大きく、かつなじみ深い素材――『布』。
これはすでに実績がある。
『帆布』だ。
通常は麻だけで作るものだがフエルトを混ぜて作った。
つまり、『複合布』だ。
そのさらに上に進化するとすれば——
『積層布』となる。
それだけだと厚みが出てしまうが、積層したうえで圧縮。
手に入れておいてよかった『松脂』で固めれば?
【『ラミネートクロスゴーレム』の制作に成功しました。】
外見は、ローブのような服の上に、松脂の色が付いた胸当てなどの軽装防具をつけた兵。
実際は、布を巻いたものを服の中に詰め込んだ『ぬいぐるみ』状態。
それでも重量はかなり軽い。
中の丸めた布が衝撃を吸収。
打撃系には滅法強いが、斬撃に弱い。
『布』の適正特性で『魔法防御』が高い。
そんな、『軽騎兵』が10体できた。
馬上でアクロパティックな働きをしてくれそうだ。
——『紙』——
【『ラミネートペーパーゴーレム』の制作に成功しました。】
当然、『紙』でもできるよね。
ラミネートって聞くと、まず紙だし。
ラミネート効果で水にも強くなった。
つまり……
はやりの『段ボールドローン』が10体できた。
偵察、小さな荷物の運搬。
使い勝手がよさそうだ。
火と、……軽すぎて風にも弱そうだけど。
これなら——
――『革』——
【『レザーゴーレム』を作成しました。】
当然に『革』でも作れる。
革装備のしなやかな軽戦士。
弓装備のレンジャーで、接近戦では鞭使い。
そんな感じが似合うかもしれない。
打撃にも、斬撃にもそこそこ強く、そこそこ弱い。
魔法防御も、そこそこだろう。
——『レンガ』——
砕けて、もう形のなくなったモノが大量に積まれていたので、レベルが上がった。
【『ファイアブリックゴーレム』の作製に成功しました。】
耐火煉瓦、である。
『火属性魔法』や『高熱を伴う災害』に対応することになったら、主役だろう。
今のところ、そんな予定はないけども。
形状は同じ。
低身長の兵士が、大盾を構えている。
タンク役として、実に頼もしい。
そうなると——
——『タイル』——
系統としては同じ。
元は土、それを焼いて固めている。
違いは焼の温度、そして釉薬の有無。
土の中に長石を含有、といったところだ。
【『タイルゴーレム』を作成しました。】
タイルを基礎に、釉薬をかけて高温で焼き直す。
素焼きの表面がガラス化し、性質が一段階跳ね上がる。
その結果――
【『グレーズドゴーレム』の作製に成功しました。】
タイルの“上位素材”が『グレーズド』だ。
表面のガラス質が魔力を弾き、反射する。
シルエットは【『ファイアブリックゴーレム』】と同じ。
ガラス質の光沢があって、表面が滑らかだ。
ただし、色味が『茶色』で、少し地味かもしれない。
形も同じ。
低身長で大盾を構える。
レンガと違い、『火』に限定されずに『魔法を反射』するーーらしい。
スキルが『反射』なのだ。
あとで、騎士団詰め所にでも行って、攻撃魔法を撃ち込んでもらおう。
焼き物つながりで——
――『陶器』——
「陶器でゴーレム・・・なら、あれしかないよな」
マイセン陶磁器。
精緻な陶器人形。
白磁の滑らかな肌。
きわめて細かい造形。
【『ポーセリンゴーレム』を製作しました。】
打撃も斬撃も致命的。
ただし、釉薬のおかげか魔法耐性は高い。
そして――
陶器だからの『呼び継ぎ』スキル。
割れた欠片を『呼んで』、『継ぐ』。
山をなすほどあるのなら——
経験値が継がれていく。
レベルが上がって——
「おお!」
低いどよめきが起きた。
一人の女性が立ち上がっている。
花柄の舞踏ドレス。
貴族女性をモチーフにした陶器人形。
刻んだ命令は『汝如意自立思惟』。
汝、思いのままに自立し、深く思え、だ。
ステータスの知性が異常に高かったから、『行ける』と思って――やってしまった。
他は、指示に従って動け、というものになっているから、かなり特別だ。
どうなるかは、『要観察』。
なので、他は10体ずつ作ったが、これだけ1体とした。
——『ガラス(森林)』——
トカゲたちを出し、保存していたダチョウの卵型の塊も出す。
そのうえで、目の前で山になった『酒瓶の亡骸』を見る。
結構な量だ。
再利用はしないのか?
そう思ったら、技術的に難しいらしい。
再利用はできるが、不安定になって使えなくなるとか。
「つまり、遠慮はいらない、と」
リアルには技術的に難しいとしても、『スキル』はある。
『再融解』:もう一度熔かして、焼成し直す。
これも、経験値化が可能ということだ。
そこへ、もう一つ加える。
——『卵殻』——
つまり『カルサイト』(CaCO₃)だ。
『カルサイトゴーレム』のハンプティ・タンプティを経て、『融合』。
結果——
【『スタビライズド・フォレストガラス』の作製に成功しました。】
安定化した森林ガラス。
中の気泡、色の緑、茶色。
何も変わらないが、わずかに強度が安定化する。
ちょっとだけ、色が薄くなり、透明度の出た手のひらサイズのトカゲたちがポケットに入ってくる。
「ゴミ素材だから、魔力消費が少ないのが助かるな」
クアルトは淡々とゴーレムを組み上げていく。
十体、二十体、三十体……。
魔力の消費は驚くほど少なくすんでいる。
「で、と――」




