表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第二部、『帰路』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/124

第72話 『麻』 

1/2

 


 朝の光が、ゆっくりと馬車隊を照らし始める。

 真鍮の騎士は金色に、大理石の馬は淡い青白さに、木の馬車は深い茶色に、ピッカウは柔らかな緑に染まる。


 そんな馬車列を横目に見ながら、クアルトは町の中心へと向かった。

 町の特産品だけに、町ぐるみで織物加工がおこなわれている。

 工場は、町の中心にあった。


 近づくにつれ、空気が振動を運んできた。

 トントン、カタン……トン、カタタッ。

 そんな織機の音が、壁越しに響いてくる。


 扉を開けると、乾いた草の香りと、ほんのり甘い麻油の匂いが一気に押し寄せた。

 中では、職人たちが手際よく織機を動かし、糸を梳く音がサササッと重なっている。


 まさに『麻』の町。

 アンナが小声でつぶやく。


「……すごい。朝からこんなに活気があるんですね」


 クアルトは頷き、工場の責任者らしき中年の男に声をかけた。


「すみません。麻の端材を少し分けてもらえませんか」


 男は手を止め、クアルト見て、目を丸くした。


「……こんなところに子供が・・・って、いや、なんでもねぇ」

 追い払おうとした手が、レーデルフィーヌの視線を受けて揉み手に変わる。


 ただの子供じゃないと察しがついたらしい。

 ・・・というか、察しがつくような『何か』をしたのだろう。

 クアルト――『僕』—-が知ることはないが。


「麻の端材なんて、ただのごみだが……何に使うんだ?」


 当然の疑問。

 クアルトは淡々と答える。


「牧草のゴーレムを強化したいんです。麻の繊維は強い。融合すれば、草よりも耐久性のある素材になる」


 男は一瞬ぽかんとしたが、すぐに苦笑した。

「ああ、ゴーレムか」と。

 いろんなものに形を与える能力であることは知っている。

 今や、廃れてしまった『適性』であることも。


「……草と麻を混ぜてゴーレムを作るなんて、 聞いたこともねぇが……まあ、好きにしな」


『ああ。子供のおもちゃか』。

 そんな顔で、工場の責任者が気楽に応じてくれた。

 工場の隅に積まれた袋を指さしている。


 中には、紡ぎ損じの短繊維。


 糸の切れ端。


 ほつれた束。


 麻のダスト


 そういったものが、ぎっしり詰まっているようだ。


「毎日山ほど出るんだ。持っていくなら好きなだけ持っていきな。どうせ処分に困ってたところだ」


「それはよかったです。ありがとうございます」

 アンナが嬉しそうに目を輝かせる。

 主の求めていたものが大量に手に入る。

 明るい声で反応するのは使用人の義務だ。


「ありがとうございます!」

 クアルトも軽く頭を下げた。


「助かります。……これで、ピッカウを進化させられるかもしれない」


 後ろで聞いていたピッカウが、草の身体をふるりと揺らした。

 まるで、『自分の番が来た』とでも言いたげに。

 生きてはいない、生きてはいないが『汝家畜是模倣』と刻んである。

 知性というわけではないが、認識力はあるのだ。


「というわけで、やるよー!」


 麻の端材の詰まった袋をいくつか運び出してみた。

 袋を開け、ピッカウを一頭向かわせる。


「……じゃ、いくよ。『融合!』」


 ゴーレム制作スキル『融合』が発動した瞬間、ピッカウの身体がふわりと揺れた。

 まるで牧草を食むように、袋の中身が吸い上げられていく。


 短い麻繊維が、ほつれた糸の束が、粉のような麻ダストまでもが、細い光の筋となってピッカウの口元へ吸い込まれていく。


 そのたびに、枯草色だったピッカウの体表に変化が生じた。

 最初は、淡い生成り色の『筋』が一本、背中に走る。


 次に、その筋が枝分かれするように広がり、草の緑と麻の生成りが混ざり合っていく。

 繊維が締まり、絡み、編まれるようにして形を変えていく。


 まるで、『草布』が生き物の形を取っていくようだった。

 ピッカウの身体が、ほんのりと温かい光を帯び始める。


 アンナが息を呑む。


「……色が、変わっていく……」


 クアルトは静かに頷いた。


「麻の繊維が混ざって、構造が再構成されてる。草より強くて、木よりしなやかな素材になるはずだよ」


 ピッカウは、自分の身体の変化を確かめるように、ゆっくりと首を振った。

 その動きに合わせて、体表の繊維がさらりと揺れ、淡い緑と生成りの混ざった新しい色が光を返す。

 進化の途中とはいえ、すでに『ただの牧草ゴーレム』ではなくなっていた。




【『メドウファイバーゴーレム』の作製に成功しました。】



『メドウファイバーゴーレム』。

『草原繊維』を集めて作られたゴーレムということになる。

 これは、軽量でしなやか、かつ耐久性の高い“構造材”にもなるということだ


 その特徴は——


『スキル』。

 集合編成アセンブル


 複数の草原繊維ゴーレムが集まると、互いの繊維を籠編み・縄編み・茅葺き構造のように組み合わせる。

 それを聞いた瞬間、『オレ』の胸が高鳴り、

『僕』は「すごい!」と素直に声を上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ