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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第二部、『帰路』

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第69話 『新スキル』 

2/2

 

「むしろ砕かれたほうが、再制作するときには強くなるんだよね」


 思わず独り言が漏れた。


 天然石よりも、人工的に焼き固めて作る石材のほうが、密度も強度も自在に調整できる。

 壊されれば壊されるほど、次に作るときの『材料』としては優秀になる。


(経験値も素材も、全部こっちの利益だ)


 逃走前に仕込んでおいた手のひらサイズの小型ゴーレムを取り出す。

 表面の魔紋が淡く脈動し、蓄積された経験値が内部で静かに渦を巻いている。


「……よし。ちゃんと保持してる」


 小さな身体の中に、倒れた仲間たちの戦闘経験が集約されている。

 何度となくレベルアップした上で、だ。

 壊されたゴーレムたちの残骸を見渡しながら、『オレ』は静かに息を吐いた。


「……素材は十分。あとは、こっちの問題だね」


 手のひらサイズの小型ゴーレムが、内部で経験値を脈動させている。

 その光が、以前よりも濃く、重い。


 これを、どう生かすか――


(レベルが上がったのは、こいつだけじゃない)


『オレ』の指先に意識を集中させる。

 以前なら、鉱山の壁から素材を『抽出』するだけで精一杯だった。

 だが今は——


「……『融合』」


 クアルト自身のレベルが上がったことで得られた『新スキル』だ。

 銅片と亜鉛片が、まるで呼吸を合わせるように震え、淡い金色の光を帯び始める。


 金属同士が溶け合い、境界が消え、合金を作っていく。

 銅と亜鉛が、『真鍮』へと変わっていく。


(できる。ちゃんと『混ざって』くれる)


『オレ』は静かに頷いた。


 素材が一体化した瞬間、魔力の流れが滑らかになり、内部構造が自然に組み上がっていく。


「じゃあ、形を……」


 真鍮の塊が伸び、縮み、人型の輪郭を描き始める。


 身長は一六〇センチほど。

 小柄だが、関節はしなやかで、銅の粘りと亜鉛の軽さが絶妙に混ざり合っている。


 胸部の魔核が淡く脈動し、新しい生命が宿る。




【『ブラスゴーレム』の制作に成功しました。】


『汝騎士団形成』。

 騎士団という概念を刻み込む。

 クアルトの命令で、それぞれの役割を果たす存在とする。


「……ブラスゴーレム、完成」


 金色の光沢を帯びたゴーレムが、静かに膝をついて頭を垂れた。

 亜鉛の脆さを、銅の粘りが支える。

 双方の特性により、劣化への抵抗値が上がる。

 結果として耐久度が高まっている。


「金属は、今後どんどん強くできる」

 確信した。


 炉に入れての融解を経ることなく『合金』が作れるのだ。

 できることの幅は格段に広がる。


「は? ……なにこれ、こわ……いや、すご……」

「?!」

 頭上で声がして驚かされた。


 何のことはない。

 セティがすぐ後ろまで来ていたのだ。

 身長差があるせいで頭上に感じただけだ。


「あんた、こんな風に『アレ』作ってたんだ?」

「そうだよ?」


 どうやって作っていたと思っていたのだろうか?

 部品から作って組み立てとか?

 もしそうなら、この一団作るのに何か月かかるか……。


「めちゃくちゃね」

「そうかもね」

 作った個体は『弱い』から絶対に『チート』とはならない。

 だけど、便利なのは確かだし、進化を続けていけば——

 あるいは?


「次行くから、離れてて」

「ぶ―!」


 同じように『石』もランクを上げる。


 素材は揃っている。

 あとは、結晶を組み直すだけだ。


 指先に魔力を集める。


 素材同士を『融合』させ、組み直す。

 金属では溶かして混ぜるだけだった。


 しかし、『石』系列はそれだけでは終わらない。

 新しい結晶構造を作り出す必要がある。


「『再結晶化』」


 その一言とともに、砕けた石片たちが淡く光り、粒子レベルでほどけていく。


 石灰岩の柔らかさ、大理石の緻密さ、ロックの粘り、ストーンの素直な構造、そこらの石の不純物までもが、魔力の流れに沿って再配置される。


 粒子が混ざり、結晶が伸び、境界が消え、新しい『人工マーブル』が生まれていく。


 天然よりも密度が高く、魔力の通りが滑らかで、衝撃にも強い。




【『リクリスタライズ・マーブルゴーレム』の構築に成功しました。】



『合成大理石』。

 天然ではありえなかった、均一な組成構造の大理石だ。


 しっかりと構造が組み直され、滑らかだ。

 光沢も高い。


 惜しむべきは、天然ならではの『誰の意図も含まない模様』がなくなることだろうか。

 均一の模様で良しとするか、こだわってあえて不揃いな模様をつけるか。

 そういう話になる。


 同じ要領で、レンガにも大理石を混ぜる。

 これにより、軽量化して強度も増した『マーブルブリックゴーレム』へと進化できた。


 白くきれいな表面。

 中身が多孔質になって熱への抵抗値が上がる。

 組成が均一化して強度も増したわけだ。


「……さて。これで“隊列”を組み直せる」

『オレ』は静かに笑った。


『僕』は、できあがったゴーレムの周りをぐるぐる回って、

 ときどき「おお……」と感嘆の声を漏らしている。


 まぁ、いいだろう。

 動き回られても、『オレ』の作業に影響は出ない。



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