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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第6話 『試作2』

2/2

 


「——ということなのだが、クアトル。『お披露目会』には出席するか?」


「え?」


 安心して食事に集中していたので父の話を聞き流してしまっていたようだ。

 突然に名前を出されて驚いた。

 だが、最後の一言で何の話かは分かった。



 『お披露目会』。

 『神託』で『適性』を確認した貴族の子女が一堂に会して、自分の『適性』を披露する場のことである。

 力のある貴族で、『子女』も力の強い『適性』である場合は示威。自分たちの強さを見せつける場であり、将来を見据えての『お見合い』の第一段階でもある。

 ここで、自分の家に足りない能力を持つ嫁を、または強い力を持っている婿を探すわけだ。



 この『お披露目会』に出席の可否を聞かれている。

 出ても出なくても、問題ないからだ。


 爵位を継ぐことになる長男や領主候補の次男は貴族との婚姻が決定事項だから絶対だし、三男も絶対とまでは言わないが貴族が相手の方が都合はいい。

 なので兄たちは全員参加しているはずだが、四男となると必要性は薄い。

 もちろん、娘しかいない家への婿入りというのもあるから無意味とは言わないけれど。

 『ゴーレムマスター』では婿の可能性は、たぶんない。


「僕はどっちでもいいよ」


 気楽に答えた。

 『適性』に不満はないし劣等感もない。

 参加する貴族からは馬鹿にされる公算が高いけど、それを気にする性格はしていないのでどうでもいい。


 参加の可否は父の都合で決めていいと丸投げした。

 不利になると思うなら『不参加』でもいいし。不参加にすることで不利と思っていると知られ、弱みを握られるのが嫌だからと敢えて強気に『参加』でもいい。


「わかった。なら、『参加』で進めるぞ?」

「わかりました」




 食事が終わり、各自で部屋へ戻る。

 いつもなら自分もそうするのだが、今回は戻る前にやることがあった。


「アンナ、ちょっといい?」


 メイドの一人を呼び止める。

 はちみつ色の髪をショートボブにした19歳の女の子だ。

 夕食の片付けがあるはずだが、呼ぶと他のメイドとアイコンタクトを交わしてからこちらへ来てくれた。


 一瞬にして何らかの交渉が行われたらしい。


「坊ちゃま、どうなさいましたか?」

「坊ちゃまはやめてっ」


 全力で抗議する。


「『適性』確認もされたし、もうおこちゃまじゃないよっ!」

「くすくす、そうですね」


 笑うなよっ。

 メイドだろうがっ。

 職業倫理というものを持っていないのだろうか?



 困ったものだが、そういうところを気に入って採用したので文句は言えない。

 実は彼女、もともとは別の家のメイドだったのだ。

 メリマルゴール男爵家に限らず、貴族の家では古くから代々仕えている子飼いの使用人がいる。

 執事やメイドを世襲で続けている者たちだ。


 しかし、その者たちだけでは人手が足りなくなることもある。

 そうなると、親しい貴族家同士で使用人の貸し借りが行われるのだ。


 このメリマルゴール男爵家では、四男誕生で人手不足に陥った。

 四男の世話係がいない事態となったのである。

 乳飲み子の間はいいが、3歳を過ぎて動き回るようになると手が足りないというわけだ。


 いくつかの家から借り受けたメイドの中で、最後に残ったのがアンナたちだった。

『クアルト』が気に入って、というのが正確だ。

 『採用した』と言っても過言ではあるまい。


 なので、アンナたちは『四男クアルト付』ということになっている。

 専用の世話係ってこと。

 元が他家の者たちなので、中枢のこととか知られると困るからだ。




「そんなことより、ちょっと聞きたいんだけど?」

「はい」


 ちょっぴり真面目な顔で話を切り出すと、呼応してアンナも顔を引き締めた。

 いつもはクリクリとしている空色の瞳が、微かに細められている。


「シーツとかカーテン、大きな布で廃棄予定のものってないかな?」


 夕食を食べていて思ったのだ。

 『紙』で作れるなら『布』でもいけやしないかと。


「布、ですか? ・・・ああ、先ほどの・・・」


 聞かれていることの内容を理解したアンナが、小さく頷きを繰り返す。

 頭の回転の速い子で大助かりだ。

 突然の問い合わせだし、少し考えれば『適性』絡みだというのはわかるか。


「んー、そうですね。廃棄予定というのはありませんが、近いうちに交換するだろうというものはいくつか思い当たります。何枚必要ですか?」

「10枚だよ」


「それなら、すぐに用意できるでしょう」

「僕の部屋に運んでくれる?」


「大丈夫です」

「なら、よろしくね―」


 手をひらひらさせて、部屋へと戻った。


 さっきの『紙』は15センチ角だった。


 シーツの面積は概ね250×280くらいのはず。


 およそ18倍だ。

 これで『消費魔力』や『ステータスの数値』がどう影響されるかを見てみたい。


「んーと。何にしようかな?」


 考えるのはシーツで作るゴーレムの形状だ。


 材料の特性は?


 布である。

 自立させるのはほぼ不可能だろう。

 とはいえ、何か支えとなる支柱で無理やり立たせるのではゴーレムとして成立しなくなる。


 なら、どうするか。

 これはすぐに答えが出た。


 さっきの『鶴』だ。

 浮かせればいい。


 浮かせるとするなら、デザインは空の生き物か水中の生き物。


「クラゲ、かな」


 思い浮かんだのは、巨大水槽でふわりふわりと漂うクラゲの姿だった。

 前世での地元に、その専門水族館があったものでよく見に行っていたのだ。


 折り紙や画用紙で作ったこともある。


 今回は画用紙で作っていたものにしよう。


 頭が丸くて、足がいっぱいのものだ。

 画用紙をけっこうな数切らないといけないのだが、それがたぶんゴーレムには合う。

 折り紙・・・折って形を作るとなると『布』は難易度が上がりそうだ。


 画用紙式だと、縦長に切って切って、さらに切って、それを縫い合わせていくだけで形にはなる。床に置かれたままだとグデッとした布の塊にしか見えないだろうが、ゴーレムにして浮かせればちゃんとしたものになるはずだ。


 他は・・・。


 幽霊?

 布に目と口を付けて被るだけのものが思い浮かんだ。


 我ながら発想が貧困すぎるっ!


 あ。


 そうそう。

 『鯉のぼり』があるな。


「待てっ!」

 自分に待ったをかける。


 閃いたのだ。

 鹿児島弁の妖怪とかどうだろう?


「いける、いけるぞっ!」


 もしかしたら、飛べちゃうかも!


 布なら、誰でも持っていておかしくないし、切り札になる。



読了・評価。ありがとうございます。


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