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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第二部、『帰路』

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第57話 『赤い兵士』 

2/2



「うーむ。迫力あるな」

 目の前に巨人が座り込んでいる。

 積まれていたレンガの形——一部が盛り上がり、なだらかに低くなる――のまま、何というか、俗にいう『体育座り』をしているボディビルダー、そんな雰囲気だ。


 全体的にはちゃんと巨人だ。

『成型』はそこまで魔力を消耗しなかったのだ。


 消費が激しかったのは『命令を刻み込む』ところ。

 いわば『命を吹き込む時』ということだ。

 それは激しくもなる。


「惜しいな……」

 せっかくの巨人だ。

 壊すのは気が引けた。


「できるかな?」

『ゴーレム制作』を発動。


 塊の『中』で、ゴーレムを作る。

 目に頼らず、スキルの感覚とイメージだけ。



【『ブリックゴーレム』を製作しました。】




 体育座りの尻のあたりが円形に盛り上がり、一体出てくる。

 90センチはある大盾を構えた兵士だ。

 身長は170くらいで250くらいの槍も持たせる。


 一言で言えば『スパルタ兵』だ。

 正式には、違う名前があるだろうけど、イメージは『スパルタ』になるよね。


 なぜ『スパルタ兵』かというと、素材がレンガだからだ。

 煉瓦製の盾を使って、熱や火を防いでほしい。

 衝撃に弱いから、スパルタ兵みたいに槍の突きあいでもしたら脆く崩れるだろうけど。


『ジンクゴーレム』の時には、武器と本体は別々に作らないといけなかったけど——

 今は、一度に作れる。


 本体の人体を作り出す流れでそのまま円形盾、槍も作る。

 命令を刻み終えると、兵士が盾と槍をつかんで動き出した。


 刻んだ命令は『汝兵士我指揮者』だ。


 最初の兵士に続いて、続々と10人が出てくる。

 座る巨人を背にビシッと整列してくれた。


 ムラがあるせいか、黒っぽかったり、赤さも暗かったり明るかったり。

 なんか、妙な個性が出ている。

 盾と槍はそのあたりを意図して、茶色と黒にしている。


 暗赤色の少し小柄な兵士たちの誕生となる。

 うん、人間にはならないね。

 あとで、マントでも着せよう。


 ちなみに、『クアルトのステータス』は『体力』が少し上がっていた。


 そして、巨人の中には空洞ができる。

 デザイン性抜群の物置だね。

 処理仕切れないゴミでも入れておけばいい。


「よし。片付けを加速させるよ―」

 あとは『僕』に任せる。


 残っているのは、家具とか腐敗し始めた廃材だ。

 まともなゴーレムにはならない。

 遊びでいい。


「紙だよねー」

 腰に手を当て、張り切る『僕』。

 目の前には紙の束が山積みだ。


「魔法技術の進歩に伴って、紙の大量生産が可能になってますからね」

 アーネストが、紙の束をめくりながら言う。


「市民生活に流れているものは、ずいぶんと質にばらつきがありますけど」

 無駄に厚いかと思えば、薄すぎて触れるだけで裂ける。

 そういうものも混ざっていた。


「紙は紙だよー」

 元気に言って、『ペーパーゴーレム』を制作。

『積層』を連続的に使っていく。


 ゲーム的に言えば、『素材合成』ということになる。

 手に入った大量の低レベル素材を経験値に変換していく作業だ。


 あとは古着なども、『布』として同じことをすることになる。

 それで、大部分は消費できるはずだ。


 残るのは鉄――というか酸化鉄――混じりの家具や解体端材ぐらいか。

 鍛冶屋にそっぽ向かれる劣悪な鉄と腐った木材……。

 これは使えないかもな。


 保管場所を作れてよかった。

 放り込むのは、『ブリックゴーレム』にお任せしよう。


 ・

 ・

 ・


 ほどなく、建物周辺はすっきり片付いた。

 殺風景だが、広さはある庭。

 そこにどっしりと座り込む巨人の物置。

 ちょっぴり異様さはあるが——


「これで、住めるよね!?」

 クアルト――『僕』——の言うとおりだ。


 建物に入って、室内を見回す。

 短期間の居住には耐えるだろう。


「ほこりがひどかったですけどね」

 口元を覆っていた布を外しながら、アンナが言った。


 中も相当にひどかったらしい。

 犯罪者が根城にしていたのなら、そんなものか。

 定期的に掃除していた…なんてちょっと考えられない。


 フォレストガラスのトカゲたちも帰ってきている。

 発見はなしだ。

 数枚の銅貨以外は。


「あと、夕食も用意しました。干し魚ばかりですけどね」

 干し魚?


「領都で買ってたやつ?」

「ええ。転売する暇がなかったですから」

 さすがのアンナも、あの騒ぎの中では動ききれなかったようだ。

 いや、それを言うなら『いつの間にか荷物を取り戻していた』ことに驚くべきなのか。


 それで気が付く。

 部屋のあちらこちらに、見覚えのある雑貨が見えるのだ。

 アンナが持ち込んだものを並べているらしい。


 一見、手ぶらだが、実は相当な量を持ち歩いているものと思う。

 変なところで有能さを見せつけてくれる。


 ともかく、今夜の宿を確保した。


 ◇ペクン◇


「どういうことだ?」

 馬車の御者台から、イーアンは問いを落とした。

 内心焦っているが、言葉も態度も、平静を崩していない。


「こっちが聞きたいよ。かなり上の方から指示が出てるってのはわかるんだか」

 騎士団の隊士が、辟易した顔で答えた。

 町から出ようとする馬車を停車させては、同じ問答を繰り返している。


「指示ってのは?」

「町から出る者は引き止め、入ろうとする者は追い返せってさ」

 理由は不明、と両手を上げる。


「そうか」

 これは、何を言ってもダメだな。

 イーアンはあきらめた。

 予定では、とっくに王都についていないといけないのだが、これはどうにもならない。


「クアルトなら、何とかするだろ」

 空を見上げ、息を吐いた。



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