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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第二部、『帰路』

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第56話 『掃除』 

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「中までは、ごみもなさそうです。掃除しますね」

 瓦礫の山越しに、建物を見やったアンナが軽く宣言して入っていく。

 普通に使用人服でありながら、危なげなく抜けていった。


「さて、『オレ』は、こっちだな」

 足元を見て、意味もなく袖をまくった。


 とりあえず、一番邪魔というか歩くのに厄介なガラス片だ。

 ほとんどが緑色、少し茶色も混じっていて気泡が多い。

 かすかにアルコール臭がするから、安酒の瓶といったところか。


「『ゴーレム制作』!」


 魔力を放出。

 金色の光が一筆書きで五芒星を描いていく。


 揺れも弛みもない星型が、地面の上数センチに広がった。

 ゆっくりではあるが、線は正確だ。



【『森林ガラス』を確認】



 ステータスウィンドウに、素材名が出た。

 よくわからないが、字面から考えるに森の中のモノで作れるような安物のガラスだろう。


「え―っと……」

 ガラスで作るゴーレム?

 ガラスのオブジェ系しか思いつかない。


「トカゲにしよう」

 あまり強度もありそうにない。

 小さめにまとめるのがいいだろう。


 刻み込む命令は『汝調査任務受領』。


【『フォレストガラスゴーレム』を製作しました。】


「できたね」

 半透明の緑色の小さなトカゲが、光を反射してきらりと揺れた。


『能力』は特にない。

 紙や布のように、レベルが上がらないと出ない仕様かもしれない。


 手のひらサイズのものを10体作る。

 内二体は茶色だ。


 それだけでは余るので、余ったかガラスは一つにまとめた。

 イメージした形状はダチョウの卵だ。

『ゴーレム制作』のスキルで純度を上げたうえで、『成型』してある。


 10体のトカゲが、袖口から服の中に入ってくる。

 ヒンヤリとした感触がするする動く。

 くすぐったいような、妙な心地よさがあった。


 何をさせるというのでもないが、ゴーレムを作ると必ずある『基礎ステータス』の上乗せはある。

『フォレストガラスゴーレム』では『素早さ』が上がっていた。


 ゴミだからか制作魔力は極少。

 それで『クアルト』の素早さが上がる。

 お得すぎるね。


「とりあえず、家の中の細かいとこの異常感知よろしくね」

 服の中のトカゲたちに伝える。

 トカゲたちが一斉に家の中へ消えていく。




「で、続きっと」

 トカゲたちを見送り、周囲を見渡す。


 目につくのは木材だ。

 ただし、まともとは言い難い。


 雨に濡れて腐っているか、まともそうかもと思うと赤く錆びた釘が付いている。

 どれも引っ掻き回したらしき形跡が見て取れた。

 まともな木材は、持ち去られて後なのだ。

 薪にでも使ったのだろう。


 あとはレンガ。

 割れたものや欠けたものだ。


 それが――


「なんで?」

 クアルトが——『オレ』と『僕』が同時に首をひねった。


 レンガが固まりで置いてある。

 バラバラのレンガが積まれているのではなく、モルタルで固まっているのだ。


 もともと、レンガは『捨てない』ものだ。

 割れていても、欠けていても、モルタルさえあれば何かに使える。

 それが、こんなにあるのもおかしいが、なんでこんな変な感じに固められている?


「壁修復の練習跡ですよ」

 首を傾げたまま眺めていると、アーネストが帰ってきた。


「練習?」

「ここが、警備隊管轄なのは空き家というのもありますが、犯罪者集団のアジトだったからだそうでしてね。その犯罪ってのが地下納骨堂の盗掘だったってわけです」


 地下納骨堂。

 石の空間を作り、遺体を収める。

 そのための施設だ。


 地域によっては副葬品も納める風習がある。

 裕福な人が多い王都なら、その風習もあるだろう。


 つまり、地下を掘って副葬品を回収。

 撤退する際に何事もなかったかのように補修する。

 これの練習をしていた跡だと。


「犯人グループはすでに捕まっているそうですよ」

「ああ、そうなんだ」

 だから、おざなりな保管になっていたのだ。

 犯人が捕まっていなければ現場保存が徹底されていただろうけど。


「なら、これは壊してしまっていいんだね!」

 謎が解けてすっきりしたクアルト――『僕』が『ゴーレム制作』を発動した。


 ゴーレムらしい巨人を作りたいらしい。

 塊をすべて人型にしようとしている。

 まぁ、好きにさせるけどね。


「あっ?!」

 手を伸ばした姿勢のまま、クアルト――『僕』が声を上げた。

 目の前が暗くなる。


『あっ……!』

 僕の声が途切れた。


「クアルト様?!」

 アーネストの慌てたような声。


「だ、大丈夫。ちょっと間違えただけ」

 頭を振って『オレ』が答える。

 びっくりしたらしい『僕』は引っ込んでしまった。


 やはり、大きくて密度が高いと魔力の消費がでかい。

 魔力を使い果たしそうになって、気を失いかけたのだ。


 ……予想していなかったわけではない。

 ただ、『オレ』ではそこまで無理ができない。


 四十男の記憶を持っていては無意識にブレーキをかけてしまう。

 だから、『僕』がムチャしそうになっているとわかっていて止めなかった。

 ある意味、チャンスだったから。


(ふむ。こうなるのか)


 まだ、少しくらくらする。

 ただ、完成はさせなかったので、魔力消費はそんなに多くない。

 失敗すると、大部分の魔力は戻るようだ。


 で——



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