第53話 番外編 『ひみつへいき』
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「最長で二年。最短で・・・十日かな」
やることがなくなった今、暇すぎる時間だ。
「ゴーレムづくりはするとして・・・・・・」
当然にそれはする。
せっかくの鉱山、素材も多い。
やらない理由はない。
だけど――
「今だよね!」
ずっと我慢していたことがある。
ゴーレムを作り始めたばかりの頃のことだ。
『鹿児島弁の妖怪とかどうだろう?
「いける、いけるぞっ!」
もしかしたら、飛べちゃうかも!
布なら、誰でも持っていておかしくないし、切り札になる。』
そう考えて作り、ずっと持ち続けていたゴーレムがいる。
持っていただけで、使う機会はついぞなかった、クアルトの『切り札』。
これまでも、一応は使ってみていた。
ただ、目立ってはいなかった。
それと判る形では使って来なかったのだ。
初めは、指導教官の『エリオット・グランツ』との朝練。
最年少の隊長、栗毛でアイスブルーの瞳。
我が家のメイドの七割がファンになっていると噂される、若手のホープ。
彼を地面に転がした時――
『「おおっ?!」
エリオットの目が一瞬だけ大きく見開かれた。
その表情を見るだけで、胸が少しだけスカッとした。
『ツバメ』も飛ばす。
仰け反ったところで『亀』も投入。
空中に意識を誘導して、膝の裏に『ウサギ』と『リス』を突貫。
「膝カックン」させて、胸元に『馬』を特攻。
尻もちをついたのをいいことに『金魚』と『ジンベェザメ』も加えた総攻撃をかけた。』
ここ、レベル1の『紙』で若手ホープを転ばすことはできなかった。
彼を転ばしたのは、足元を這った別のゴーレムだ。
『クロスゴーレム・一反木綿』
細長い『布』。
常には体にまとわせている。
それが、地面すれすれに移動して足をからめとった結果だった。
手のひらサイズの『紙』で転ばせたわけではなかった。
「どぉあぁぁぁぁッ!」
その後は様子見なしのガチな速攻。
そのおかげで、メリマルゴール男爵家騎士団最年少の隊長も、驚いてくれたらしい。
面白いように叩かれてくれた。
他にも――
『「で、こうなったと」
やれやれ、と首を振った。
宿で適当に休んでいたら、十人ほどの賊に襲われて袋詰めされて運ばれたのだ。
部屋の鍵はきっちり掛けておいたのだが、やはり宿側がグルだったようで何の意味もなかった。
「手際が良かったですね」
「あれは慣れてますよ」
「あ、やっぱいるんだね?」
アンナとアーネストだ。』
一緒にさらわれた時のことだ。
間抜けな襲撃者に、『手違いで殺される』なんて嫌だったので、体に巻いて防御していたのだ。
布一枚と言えど、あれば勢いは減らせるからね。
「だけど、だ」
一番やりたかったことができていない。
「僕は飛べるのか、だよ!」
両手を構えて、力を込めた。
クアルト――『僕』――は飛びたかったらしい。
実を言えば『オレ』もだ。
服の下から、体に張り付いていた『布』が遊離する。
大きく広がって、宙へと立ち上がる。
そのまま、ゆっくりと――
「……上がらない?」
腰を中心に確かに引かれている。
だけど、足蜂についたまま。
「いや——浮いてはいる」
足はついているが、ペタッとではない。
土踏まず的隙間ができている。
でも、それだけ。
「これは――あれだな」
ため息が出た。
浮力が足りないのだ。
多分、20キロ前後しかない。
地面から『ちょっと浮く』ことはできても、『浮かび上がる』とか、ましてや『飛ぶ』は不可能ということ。
「くっ…むねん! だよ!」
パタンっと、地面に倒れてじたばたする。
久しぶりの『駄々っ子モード』だ。
ずりずりと地面をこすって動く。
レベルが上がれば『浮く』かもしれん。
ガマンしろ。
大人として宥めるが――
「せっとくりょくなし!」
うん――
『オレ』自身残念なので、これはだめだ。
「ちぇ。ゴーレム作ろうっと」
しばらくじたばたして気が済んだのか、クアルトが立つ。
今ある素材で、ゴーレム編成をするのだ。
「へ―、そうなんですか」
ぎくり――
なぜか。ものすごく低い声が背中を震わせた。
ギギギ、っと振り向くと、アンナがめっちゃ笑顔だ。
「はっ!」
やばっと向き直る。
じたばたした背中がどうなっているか思い至ったのだ。
――遅かったわけだが…
アンナのお小言は二時間続いたのだった。
子爵家の迎えを『鶴』が発見する、二日前の話である。
まぁ、でも――
『オレ』は考える。
布に内包される魔力で“浮かせる”ことはできても、“持ち上げる”には質量が足りない。
でも、それは『一枚』だから。
10枚全部を使えば、浮く。
極小の『気球レベルで』なら。
風で流されるだろうし、『鹿児島弁の妖怪』を思いついた時のイメージ。
ビュンビュン飛ぶ空中戦は不可だとしても。
「気球も…まぁ楽しいさ。きっとな」




