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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第53話 番外編 『ひみつへいき』

3/3

 


「最長で二年。最短で・・・十日かな」

 やることがなくなった今、暇すぎる時間だ。


「ゴーレムづくりはするとして・・・・・・」

 当然にそれはする。


 せっかくの鉱山、素材も多い。

 やらない理由はない。


 だけど――


「今だよね!」

 ずっと我慢していたことがある。


 ゴーレムを作り始めたばかりの頃のことだ。


『鹿児島弁の妖怪とかどうだろう?


「いける、いけるぞっ!」


 もしかしたら、飛べちゃうかも!


 布なら、誰でも持っていておかしくないし、切り札になる。』


 そう考えて作り、ずっと持ち続けていたゴーレムがいる。

 持っていただけで、使う機会はついぞなかった、クアルトの『切り札』。


 これまでも、一応は使ってみていた。

 ただ、目立ってはいなかった。

 それと判る形では使って来なかったのだ。


 初めは、指導教官の『エリオット・グランツ』との朝練。

 最年少の隊長、栗毛でアイスブルーの瞳。

 我が家のメイドの七割がファンになっていると噂される、若手のホープ。


 彼を地面に転がした時――


 『「おおっ?!」

 エリオットの目が一瞬だけ大きく見開かれた。

 その表情を見るだけで、胸が少しだけスカッとした。


 『ツバメ』も飛ばす。


 仰け反ったところで『亀』も投入。


 空中に意識を誘導して、膝の裏に『ウサギ』と『リス』を突貫。


「膝カックン」させて、胸元に『馬』を特攻。


 尻もちをついたのをいいことに『金魚』と『ジンベェザメ』も加えた総攻撃をかけた。』


 ここ、レベル1の『紙』で若手ホープを転ばすことはできなかった。

 彼を転ばしたのは、足元を這った別のゴーレムだ。


 『クロスゴーレム・一反木綿』


 細長い『布』。

 常には体にまとわせている。


 それが、地面すれすれに移動して足をからめとった結果だった。


 手のひらサイズの『紙』で転ばせたわけではなかった。

「どぉあぁぁぁぁッ!」

 その後は様子見なしのガチな速攻。

 そのおかげで、メリマルゴール男爵家騎士団最年少の隊長も、驚いてくれたらしい。

 面白いように叩かれてくれた。


 他にも――


『「で、こうなったと」

 やれやれ、と首を振った。


 宿で適当に休んでいたら、十人ほどの賊に襲われて袋詰めされて運ばれたのだ。

 部屋の鍵はきっちり掛けておいたのだが、やはり宿側がグルだったようで何の意味もなかった。


「手際が良かったですね」

「あれは慣れてますよ」


「あ、やっぱいるんだね?」

 アンナとアーネストだ。』


 一緒にさらわれた時のことだ。

 間抜けな襲撃者に、『手違いで殺される』なんて嫌だったので、体に巻いて防御していたのだ。

 布一枚と言えど、あれば勢いは減らせるからね。


「だけど、だ」

 一番やりたかったことができていない。


「僕は飛べるのか、だよ!」

 両手を構えて、力を込めた。


 クアルト――『僕』――は飛びたかったらしい。

 実を言えば『オレ』もだ。


 服の下から、体に張り付いていた『布』が遊離する。

 大きく広がって、宙へと立ち上がる。


 そのまま、ゆっくりと――


「……上がらない?」

 腰を中心に確かに引かれている。


 だけど、足蜂についたまま。

「いや——浮いてはいる」

 足はついているが、ペタッとではない。


 土踏まず的隙間ができている。

 でも、それだけ。


「これは――あれだな」

 ため息が出た。


 浮力が足りないのだ。

 多分、20キロ前後しかない。


 地面から『ちょっと浮く』ことはできても、『浮かび上がる』とか、ましてや『飛ぶ』は不可能ということ。


「くっ…むねん! だよ!」

 パタンっと、地面に倒れてじたばたする。


 久しぶりの『駄々っ子モード』だ。

 ずりずりと地面をこすって動く。


 レベルが上がれば『浮く』かもしれん。

 ガマンしろ。

 大人として宥めるが――


「せっとくりょくなし!」

 うん――

『オレ』自身残念なので、これはだめだ。


「ちぇ。ゴーレム作ろうっと」

 しばらくじたばたして気が済んだのか、クアルトが立つ。

 今ある素材で、ゴーレム編成をするのだ。


「へ―、そうなんですか」


 ぎくり――


 なぜか。ものすごく低い声が背中を震わせた。

 ギギギ、っと振り向くと、アンナがめっちゃ笑顔だ。


「はっ!」

 やばっと向き直る。


 じたばたした背中がどうなっているか思い至ったのだ。


 ――遅かったわけだが…


 アンナのお小言は二時間続いたのだった。


 子爵家の迎えを『鶴』が発見する、二日前の話である。


 まぁ、でも――


『オレ』は考える。

 布に内包される魔力で“浮かせる”ことはできても、“持ち上げる”には質量が足りない。

 でも、それは『一枚』だから。


 10枚全部を使えば、浮く。

 極小の『気球レベルで』なら。


 風で流されるだろうし、『鹿児島弁の妖怪』を思いついた時のイメージ。

 ビュンビュン飛ぶ空中戦は不可だとしても。


「気球も…まぁ楽しいさ。きっとな」




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