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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第52話 『第一部・エピローグ』

2/3

 


「……行ったか」

 足音が聞こえなくなったところで、王弟は息を吐いた。

 少しだけ表情が緩む。


「約束をとりつけた手腕は見事でしたが、何をお考えなのですか?」

 壁の花――彫像のように立っていた『だけ』のメイドが口を開いた。


 使用人の言葉ではない。

 メイドの『温度』でもない。

 どこか、『教師』か『姉』の言葉、そして温度だった。


「“お披露目会”だ」


 その言葉に、メイドは瞬きをした。


「……お披露目会ですか?」


「そう。彼も参加することになっていることは確認した」


 メイドは軽く曲げた人差し指を顎にあてて頷いた。

 年齢から見て、まさにその時期だと合点がいったのだ。


 一年の終わり、数か月後に王都で行われる“子供たちの顔見せ”だ。

 貴族たちの社交行事。


 王弟は、声を落とした。


「今回のお披露目会には、末の王女も参加する」


「ああ……」

 それか、とメイドは息を吐いた。


 王弟の声は淡々としていたが、その奥にある緊張は隠しきれていなかった。


「『オートヒール』ですね」

「そうだ。そこにいるだけで、周囲のけがや病気を癒す存在だ」


「影響の大きいスキルです」

 言葉が重々しい。

 王弟が静かに頷く。


「軍事的価値は計り知れない。そして、不老不死を夢見る者にとっては、リスクを承知で手に入れたくなる存在だ」


 王弟は、静かに続けた。


「その王女が、大人の護衛が入りにくい“子供が主役”の場に出る。お披露目会は、最も無防備になる機会だ」


 王弟は、クアルトの目を思い返す。


「そこで誘拐を企む者がいるという噂がある。しかも、一つではない。複数だ」

「それで、『子供の護衛』をと?」

 そうだ、と王弟はうなずいた。


 そして――


「君の『知り合いたち』の援護も期待できるしな」


 王弟が『王族』の笑みを浮かべてみせる。

 瞳から『温度』が消えている。


「……お見事です」

 目を閉じ、メイドは息を吐いた。


 王弟は窓の外を見つめる。

「間に合うといいが……」

 その声は、誰にも届かない。


(おじい様たちは、どこまで動くのか……)

 メイドの視線が、どこか遠くを見つめていた。


(違うか……『王女』のために動いてくれるか、『あの少年』のため『だけ』に動くのか、ね)

 多分、後者なのだろうし、『気づかれない程度に』なのだろうけれど。


 クアルト……彼は、何をなすのか?


 王家の役に立つのか、あるいは……?


(私が、おじいさまと対立する未来もあり得るか?)


 ともかく、王弟が――王国が――動き始めた。



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