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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第43話 『孔雀』

1/2

 

「・・・・・・」

 返ってきたのは沈黙だった。

 その沈黙が、妙に重い。


 あれ?

 説明分かりにくい?


「コホン」

 わかりやすく咳払いをして、鉱夫代表が真剣な目を向けてくる。


「それを聞くなら、まず段取りを説明してもらわねぇとな」

「ああ、なにするかわかんなきゃ答えようがないか」

 そりゃそうだ。


「食料庫と銅鉱石の保管庫の下に地下道を繋げた、あと数メートル掘れば繋がる。

 運び出すための荷車他も用意できてる。


 問題は、これだと地下へ運び去ったことを隠せない。

 これをわからなくしたい。


 その策を思い付かないかなって」


 一気に言うと、鉱夫代表は呆れ顔になった。


「そんなもん。運び出したあとで元通り埋めときゃいいだけだろ」

「いや、だけって」

 そんな簡単に言われても。


「こちとら穴掘りの専門家だぜ? 穴開けるのも、開けた穴塞ぐのもやってみせらぁ」

「へ?」

 え?

 穴掘りとか穴埋めってそんな簡単なことだっけ?


「え? 自在なの?」

「その程度ならな。穴掘りと穴埋めは俺たちの飯の種だ。任せときな」

 自在であるらしい。


 どうやって?

 いや、そうじゃない。

 できるっていうなら、あとは信じるか信じないかだけだ。


 そして、この場合信じるというか、それを前提に進める以外の選択肢はない。

 うまくいかなかったときの対応は頭に置いておかなければならないだろうが、それだけのこと。


 そういうことなら——。


「決行は二日後とするってことでいい?」

「問題ねぇよ」

「いつでも」

「好きにしてくれ」

「いいと思うわ」

 全代表の許可が下りた。

 作戦の決行日時と方法が完全に定まった。



「ああ、そうだ。一つ忘れてたぜ」

 元居た坑道に帰るってところで鉱夫代表が振り返った。

 なにかあっただろうか?


「この坑道内で見つかる鉱石についてだ」

 疑問が顔に出たのか、より詳しい内容が告げられた。


「ああ」

 それか!

 イーアンに聞いたが思い当たらないと言われていたんだった。

 専門家に聞いてみてくれていたらしい。


孔雀石(マラカイト)珪孔雀石(クリソコラ)なら見つかるはずだぜ」

 孔雀石?


「確か宝石の一種だっけ?」

「色がかなりいい感じの緑と青で、そうだな。宝石としても使われるな」

 やっぱり。


「その二つなら、西側の坑道で見つかるはずだ」

「量もある?」

「安定して掘り続ける量はない。が、個人が手にするには十分すぎるだけはあるだろうさ」

 いまいちピンとこないが、たぶん『金』よりは多いだろう。

 充分だ。


「あと、銅鉱石の保管庫になら藍銅鉱(アズライト)赤銅鉱(キューブライト)もある。この二つは手間さえかけりゃ銅にできるからな。質は一段か二段下がるんだが」

「あ、なるほど」

 銅鉱石の酸化したものだ。

 そりゃあるよな。


「その情報は助かります!」

 いや、マジで。


「ふん。助かるのはこっちじゃわい。使われ続けるだけの生活から抜け出させてもらえるんじゃからな。ま、お互いさまってことにしようか」

「あー、ですね」

 お互い、できることで相手の役に立つ。

 それでいい。

 借りだの恩だの言い出すと面倒だ。




「急がねば!」

 オレはハッキリとウキウキしていた。


 仮にも『宝石』が手に入るのだ。

 これを喜ばずにいられようか?


 急ぐ理由はもう一つある。

 『二日後』に決行と決まったが、実質は一日半しかない。


 今日中に手に入れて、半日休む。

 その後半日かけて準備をするわけだ。

 猶予があまりない。



「この辺りで採れるはずです」

 案内してくれたのはもちろんイーアンだ。


 西側の坑道、その一つだ。

 見た感じは他と何も変わらないように見えている。

 しかし・・・。


 壁の奥に、深い緑がちらりと覗く点がある。

 まるで岩肌に埋まった孔雀の羽のように。


「少し緑色っぽいかな?」

 緑青ではないが、それに似た色がちらほら見えている。

 その辺りに手を添えて、『材質鑑定』。


「おお。あるね」

 確かに、存在が確認できる。


「・・・なんで、これは取らないんだろう?」

 一応、これも酸化銅だ。

 銅を取ろうと思えば取れると思うんだけど?


「手間と経費を考えると、割に合わないからですよ」

 聞くと、身もふたもない答えが返ってきた。

 効率よく銅を取り出す技術がないらしい。


「そういうことか」

 オレの『材質鑑定』と『成形』が、実はチートだったことが判明した。

 薄々気づいていたけどね。


 なんにせよ、そこにあることは確認できた。

 あとは可能なだけ不純物を取り除いて抽出、成形して固まりにするだけだ。


 【マラカイト・ゴーレムを制作しました】


 ステータスは攻撃も防御も低い。

 耐久力も低かった。

 戦力としては考えられない。


 大きさも手の平に乗るくらいのを作るので精いっぱいだ。

 10個までは作れるから、10個作るとしてだけどね。

 それよりも・・・


 スキルに『還元』があった。

 なにを?


 疑問の答えは『魔力』だ。

 魔力操作を行うと、どうしても余剰が出る。

 これは体外に放出され消えてしまうのだが、これを吸収。

 体内へ戻す作用があるのだ。


 『金』と『銀』。

 貴金属の『節制』に続く、宝石の『還元』。


 これで、またしても、魔力消費を減らすことができる。

 となると、もう一つ。


 【クリソコラ・ゴーレムを制作しました】


 珪孔雀石も同様だ。

 これで、またしてもゴーレムの維持可能数が上がる。

 ありがたい。


 貴金属は“節制”。

 宝石は“還元”。

 どうやら素材ごとに魔力との相性が違うらしい。

 世界の仕組みが、少しずつ見えてくる。


 形状は・・・『沢蟹』と『ヤモリ』とした。


 小さくも、美しい。

 新たな仲間の誕生である。



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