第41話 『荷車を作る』
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イーアンが協力的である理由は謎となってしまったが、『オレ』的には理由なんてどうでもいい。
手伝ってもらえるのはありがたいから、それでいい。
裏切り?
罠?
それならそれで、『オレ』に人を見る目がないってだけのこと。
メリマルゴール男爵家に迷惑が掛かりさえしなければ、どうなろうと気にしない。
「『銅』と『食料』を盗み出す計画は実行可能ってことでいいんだね?」
重要なのはそれだけだ。
「地下道を通すってことについては、可能ですね」
軽く肯定された。
「そんなに簡単なの? っていうか、時間はどれくらいかかる?」
結構掘る必要があると思うんだけど?
「明日の朝には終わりますよ」
「は?」
ちょっと待て。
「えっと。どこまでの作業が『終わる』んだ?」
主語が抜けているぞ、主語が。
「もちろん、すべてです」
「いやいやいや、そんなわけはないだろう?」
いくらなんでもそれはおかしい。
「坑道は地下で縦横無尽に掘り進んています。すでに総延長は800『』に達しています。そのうちのもっとも町に近いところにまで伸びている坑道は町の郊外から300『』地点にまで伸びているんですよ」
ああ。地下を掘っているんだからそういうこともあるのか。
鉱山とは言うが、山だけとは限らないもんな。
鉱脈が続いていれば、平地の地下だって鉱山だ。
しかし、300メートルか。
かなり近くまで掘ったんだな。
大丈夫か、地盤は?
「さすがに町の地下にまで掘り進むのはまずいと、そこから左右に分かれ、今はこちらに戻るように掘られているところです」
「ああ。さすがに町の下までは掘らないか」
実はスカスカでいつ崩落してもおかしくないとか言われるかと思ったよ。
焦らせてくれる。
「『銅』の貯蔵場所は、そんな坑道の上にあります。食料庫も町と鉱山双方に食料を送る便宜上、鉱山側の町郊外にあります。直線で掘れば、距離はそれほど遠くないのですよ」
そういうことか。
保管場所と食料庫が近いのも当然だ。
食料を運んでくるのは『銅』を買い付けに来る商人。
物資の流通を考えれば、近い方が便利なのだから。
「なら、明日の夜には盗みに入れるわけだ?」
「そうなりますね」
「できれば『盗まれた』ではなく『消えた』感じにしたいんだけど、床にあけた穴をごまかす方法なんてあるかな? 朝までの短時間でだけど」
さすがに無理を言っているか?
「それは・・・私には何とも」
うむ。そうか。
どうするかな?
「鉱山技師の技術者たちに相談してみるといいでしょう」
おっと?
そうか。
イーアンには無理なだけか。
何かしらの技術を持つ者の手助けがあれば、解決策も探せる。
どのみち、すべての地下道が開通すれば、採掘作業をしている者たち全員集めて、話し合いをしなくてはならない。
その時に聞いてみよう。
となれば・・・。
「荷車を作りますっ!」
手を挙げて宣言した。
「荷車、ですか?」
「うむ!」
・・・「うん」でいいところをつい「うむ」とか言ってしまった。
異世界に転生したというのに、毒されているな。
いろいろと。
いや、転生したからこそ、か?
もとい!
頭を振って雑念を払った。
荷車を作るのである。
「イーアンは開通次第『銅』と『食料』の保管庫と、集めた人たちの一時避難場所の設営をお願いしますね」
次の作業を頼んだ。
連れてきただけ、運んだだけではだめだ。
ちゃんと『その後』のことも考えておかなければ。
「わかっています」
大丈夫、と頷いてくれた。
頼もしい。
「よろしくね―」
◇
「さてと」
少し広い空間を選んで製作拠点とした『オレ』は、作業の内容を今一度頭の中でシミュレーションしていく。
実は、設計は済ませてあった。
昼の間に頭の中で案をまとめておき、夜の間に紙に設計図を起してある。
まず考えるべきは『大きさと形』。
・使用環境が坑道内であることに留意する必要がある。
・荷車を引くのは『ゴーレム』である点も重要だ。
・運ぶ物は『銅』ないし『食料』。
これを踏まえ、車幅と車高、そして全長を決定。
坑道内で閊える、曲線で切り返しが必要になる、そんなようなことになっては困るから、それを避けた。
続いて、曳きやすい『引手』を備えさせる。
現状、『オレ』の『ゴーレム』は重装歩兵型、蟹型、馬型の三種類。
それぞれがしっかりと曳ける工夫が必要なのだ。
『重さ』の懸念もある。
『銅』の塊を運ぶ。
相当な重量が予想された。
重くなり過ぎないよう、大きさは考えなくてはならない。
大量に積めたはいいが、途中で落盤して落ちました、では困る。
材料はまだまだ採掘できる『亜鉛』とした。
『石』や『岩』では『銅』の重さで割れかねない。
『亜鉛』が適当だろう。
家を作るときに使った『亜鉛パイプ』を少しだけアレンジして、フレームを作った。
荷台部分は敢えて作らず、車輪も衝撃緩和策を一切考えないで作る。
積むのは『銅』と『食料』。
途中で多少跳ねたところでどうなるものでもない。
曳くのも『ゴーレム』だから摩擦抵抗とか考慮する意味がない。
素材そのままで作って問題ないのだ。
形はオーソドックスに『大八車』だ。
古くからある荷物を運ぶための台車である。
シンプルイズベストってなもんだ。
荷台部分は『岩』を箱状に組んで形にした。
載せたものが振動で落ちることを防ぐ『だけ』のものだ。
軽量化とか耐久度とかは完全無視である。
『銅』と『食料』を保管施設から運び出すためだけのもの、そのあとは分解して再利用するいわば使い捨ての道具。
『オレ』の趣味とか『僕』のこだわりはいらない。
とにかく、数を作る。
「って・・・意外と簡単に作れちゃうもんだね」
整然と並ぶ60台の荷車を眺める。
自分のことながら無茶苦茶だ。
1台につき8分ぐらいで作ったことになる。
「魔力が・・・尽きる」
パタッと仰向けに寝た。
精も根も尽き果てるとは、こういうことかと感じ入る。
息が上がっているし、頭がボーっとしている。
魔力切れ寸前なのだ。
『寸前』で済んでいて、わずかにだが回復しているからいいが無理しすぎた。




