第4話『考察』
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ゴーレム一号が誕生した。
四本の脚で動き回っている。
言葉での命令は特にいらないようだ。
こちらの思考に沿って動く感じがある。
いまは「とりあえず動いているところが見たい」という思いに応じているらしい。
なかなかに可愛らしい。
動き回る亀ゴーレムを眺めていると、開いたままのウィンドウが目に入った。
『クアルト』自身のステータスだ。
名前:クアルト・デ・メリマルゴール
年齢:7
体力:平均より少し高い
魔力:平均の倍ほど
知力:かなり高い(前世の影響?)
レベル:1
教会の話では、七歳男子の平均は体力4800、魔力2000らしい。
貴族の生活で栄養がいいぶん、少し高めなのだろう。
それにしても、こうして数値で見えるのは便利だ。
前世の知識があるせいか、僕の“知力”が高いせいか、
ステータスがゲームみたいに分かりやすく表示されている気がする。
細かい項目も出せるようだが……正直、意味はよく分からない。
検証班じゃないし、現実でギリギリの戦いなんてしたくない。
なので、深掘りはしないことにした。
それよりも、魔力が少し減っている。
さっき3800あったのが3770になっているから、
ゴーレム一体につき30消費するらしい。
紙はまだあるし、魔力も十分。
なら——作ってみるか。
「紙はまだあるし・・・」
魔力もこの分なら120体作っても余る。
どんどん作ってみることにした。
2号は『ウサギ』。
亀の次だからね・・・。
3号には『リス』。
作ってみてウサギと大差ないことに気が付いた。
4号は3号の反省から『馬』。
パッパカ走って楽しそうだ。
5号に来て初心に立ち返り『鶴』。
折り紙の定番だからね。
・・・って。
「飛ぶんかいっ!」
『鶴』が飛んでいる。
羽ばたいてはいないので、宙に浮いて移動しているというべきだろうか。
さすが魔法、物理法則を簡単に捻じ曲げてしまうようだ。
いや、わかるよ?
折り紙で作った動物が動くのだっておかしいってことくらいは。
だけど・・・そうか。
飛ぶのか。
で、6号は『ツバメ』。
もう一羽飛ばしてみた。
スイスイ飛んでいる。
ならばと、次に折ったのは7号『金魚』だ。
なんと、これは宙を泳ぎ出した。
気をよくして、8号は『ジンベェザメ』。
これも優雅に泳ぐ。
あれ?
それなら『亀』だって泳げるのでは?
そう思ったが泳げなかった。
作ったときに泳ぐイメージをしなかったからだろうか?
リクガメを想定していたからな。
だから、9号は『ウミガメ』。
泳ぐイメージをしつつ折ってみたら、宙に浮いた。
やはり、事前のイメージが重要なのだ。
考えてみれば、『鶴』が床を滑って移動するのと宙を飛ぶのとで、どっちをイメージしやすいかと言えば断然後者なわけだ。
そりゃ、飛ぶよね。
10号は少し毛色を変えて、紙を二枚使って『チューリップ』。
花だ。
うん。まぁ、そーだよね。
移動はできそうにない。
でも、ゆらゆらと揺れることはできている。
なんて言うか・・・『ダンシング・フ〇ワー』?
色が付いていないせいで味気ないが、妙な可愛さはあるな。
次は・・・あれ?
11号が途中で止まった。
ここにきて失敗したようだ。
なぜ?
作ろうとしたのは『傘』だったんだけど・・・。
動くイメージがしづらかったからかな?
動物とは勝手が違う?
「え?」
それならと、わかりやすく三度目の『亀』。
これも失敗した。
「なんで?」
首を傾げたところで気が付いた。
出しっぱなしのウィンドウが赤くなっている。
さっきまで青だったのに。
これって・・・注意喚起?
警報?
胸がひやりとした。
まるで“やってはいけないこと”をしたような感覚。
なにかやらかしたのだろうか?
慌てて覗き込んだ。
すると。
【『制作数制限』:同一種類は10体まで。】
制作数制限。
文字通りに受け取れば『制作できる数には制限があります』ということ。
同一種類というのは、この状況から考えて『ペーパーゴーレム』だと考える。
それぞれ違うモチーフで作っていたのだからそうなるはずだ。
つまり、『材料とする物の種類一つにつき10体までしか作れない』ってことになる。
逆に考えれば、『素材の数×10体のゴーレムを作れる』になる。
もちろん、これにもきっと何らかの制限は出るのだろうが、理論上はそういうことだ。
「材料・・・素材か」
ゴーレムの素材。
『土』、『泥』、『石』、『砂』、『木』、『鉄』・・・。
ちょっと考えるだけでいくつかは思いつくことができる。
手に入れる方法は考えなきゃならないが、何とかなる・・・と思う。
やれそうだ。
『ゴーレム制作』、いいかも。
「さて、と?」
ゴーレムの作り方はなんとなくわかった。
素材を用意して形をデザイン、命令を書込めばいいのだ。
デザインというのはたぶん『構造』をイメージするってことに繋がっている。
命令は使用目的とかかな?
たぶんなんだけど、高度なゴーレムを作ろうとしたときにはきっとネックになることだと思う。
でも、それは『高度な』ゴーレムを作るときに考えればいい。
今はまだ入門編。
基本的な部分を押さえておきたい。
作れることははっきりした。
動かせることもわかった。
だけど、だ。
なにに使えるんだ?
そこのところがまったく分からない。
「?!」
ヒントくらいないのかと、ウィンドウに目を向けて驚いた。
体力と魔力の“上限”が上がっていた。
しかも、使ったはずの魔力がほとんど回復している。
どうやら、作ったゴーレムの数だけ能力が少しずつ底上げされるらしい。
体力は一体につき十、魔力は二十ほど増えている計算だ。
さらに、自然回復に加えて、ゴーレムが空気中の魔素を吸って
魔力を還元してくれている可能性もある。
両方の効果が重なっているのだろう。
地味だけど、確実に強くなっている。
これ……意外とチートなのでは?
いや、だからこその“制作数制限”か。
バランスは取れている……はず。
意外に「使える」・・・よな?
コンコンコン。
一人、手ごたえを感じていると控えめなノック音がした。
この叩き方はメイドだな。
「なにかな?」
何の用かと聞くと、「夕食のお時間です」との答え。
なんと、帰ってから4時間くらい部屋に閉じこもってしまっていたようだ。
「わっ、すぐ行くよっ!」
慌てて身繕いをして、部屋を飛び出した。
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