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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第4話『考察』

2/2

 


 ゴーレム一号が誕生した。


 四本の脚で動き回っている。

 言葉での命令は特にいらないようだ。

 こちらの思考に沿って動く感じがある。

 いまは「とりあえず動いているところが見たい」という思いに応じているらしい。


 なかなかに可愛らしい。

  動き回る亀ゴーレムを眺めていると、開いたままのウィンドウが目に入った。

 『クアルト』自身のステータスだ。


 名前:クアルト・デ・メリマルゴール

 年齢:7

 体力:平均より少し高い

 魔力:平均の倍ほど

 知力:かなり高い(前世の影響?)

 レベル:1


 教会の話では、七歳男子の平均は体力4800、魔力2000らしい。

 貴族の生活で栄養がいいぶん、少し高めなのだろう。


 それにしても、こうして数値で見えるのは便利だ。

 前世の知識があるせいか、僕の“知力”が高いせいか、

 ステータスがゲームみたいに分かりやすく表示されている気がする。


 細かい項目も出せるようだが……正直、意味はよく分からない。

 検証班じゃないし、現実でギリギリの戦いなんてしたくない。

 なので、深掘りはしないことにした。


 それよりも、魔力が少し減っている。

 さっき3800あったのが3770になっているから、

 ゴーレム一体につき30消費するらしい。


 紙はまだあるし、魔力も十分。

 なら——作ってみるか。


「紙はまだあるし・・・」


 魔力もこの分なら120体作っても余る。

 どんどん作ってみることにした。


 2号は『ウサギ』。

 亀の次だからね・・・。


 3号には『リス』。

 作ってみてウサギと大差ないことに気が付いた。


 4号は3号の反省から『馬』。

 パッパカ走って楽しそうだ。


 5号に来て初心に立ち返り『鶴』。

 折り紙の定番だからね。


 ・・・って。


「飛ぶんかいっ!」


 『鶴』が飛んでいる。

 羽ばたいてはいないので、宙に浮いて移動しているというべきだろうか。

 さすが魔法、物理法則を簡単に捻じ曲げてしまうようだ。


 いや、わかるよ?

 折り紙で作った動物が動くのだっておかしいってことくらいは。

 だけど・・・そうか。

 飛ぶのか。


 で、6号は『ツバメ』。

 もう一羽飛ばしてみた。

 スイスイ飛んでいる。


 ならばと、次に折ったのは7号『金魚』だ。

 なんと、これは宙を泳ぎ出した。


 気をよくして、8号は『ジンベェザメ』。

 これも優雅に泳ぐ。


 あれ?

 それなら『亀』だって泳げるのでは?


 そう思ったが泳げなかった。

 作ったときに泳ぐイメージをしなかったからだろうか?

 リクガメを想定していたからな。


 だから、9号は『ウミガメ』。

 泳ぐイメージをしつつ折ってみたら、宙に浮いた。

 やはり、事前のイメージが重要なのだ。


 考えてみれば、『鶴』が床を滑って移動するのと宙を飛ぶのとで、どっちをイメージしやすいかと言えば断然後者なわけだ。

 そりゃ、飛ぶよね。


 10号は少し毛色を変えて、紙を二枚使って『チューリップ』。

 花だ。


 うん。まぁ、そーだよね。

 移動はできそうにない。

 でも、ゆらゆらと揺れることはできている。

 なんて言うか・・・『ダンシング・フ〇ワー』?


 色が付いていないせいで味気ないが、妙な可愛さはあるな。



 次は・・・あれ?


 11号が途中で止まった。

 ここにきて失敗したようだ。

 なぜ?


 作ろうとしたのは『傘』だったんだけど・・・。

 動くイメージがしづらかったからかな?

 動物とは勝手が違う?


「え?」


 それならと、わかりやすく三度目の『亀』。

 これも失敗した。


「なんで?」


 首を傾げたところで気が付いた。

 出しっぱなしのウィンドウが赤くなっている。

 さっきまで青だったのに。


 これって・・・注意喚起?

 警報?


 胸がひやりとした。

 まるで“やってはいけないこと”をしたような感覚。


 なにかやらかしたのだろうか?


 慌てて覗き込んだ。

 すると。



 【『制作数制限』:同一種類は10体まで。】



 制作数制限。

 文字通りに受け取れば『制作できる数には制限があります』ということ。

 同一種類というのは、この状況から考えて『ペーパーゴーレム』だと考える。

 それぞれ違うモチーフで作っていたのだからそうなるはずだ。


 つまり、『材料とする物の種類一つにつき10体までしか作れない』ってことになる。

 逆に考えれば、『素材の数×10体のゴーレムを作れる』になる。

 もちろん、これにもきっと何らかの制限は出るのだろうが、理論上はそういうことだ。


「材料・・・素材か」


 ゴーレムの素材。

 『土』、『泥』、『石』、『砂』、『木』、『鉄』・・・。


 ちょっと考えるだけでいくつかは思いつくことができる。

 手に入れる方法は考えなきゃならないが、何とかなる・・・と思う。


 やれそうだ。


 『ゴーレム制作』、いいかも。




「さて、と?」


 ゴーレムの作り方はなんとなくわかった。

 素材を用意して形をデザイン、命令を書込めばいいのだ。

 デザインというのはたぶん『構造』をイメージするってことに繋がっている。

 命令は使用目的とかかな?


 たぶんなんだけど、高度なゴーレムを作ろうとしたときにはきっとネックになることだと思う。

 でも、それは『高度な』ゴーレムを作るときに考えればいい。


 今はまだ入門編。

 基本的な部分を押さえておきたい。


 作れることははっきりした。


 動かせることもわかった。

 だけど、だ。


 なにに使えるんだ?


 そこのところがまったく分からない。


「?!」


 ヒントくらいないのかと、ウィンドウに目を向けて驚いた。


 体力と魔力の“上限”が上がっていた。

 しかも、使ったはずの魔力がほとんど回復している。


 どうやら、作ったゴーレムの数だけ能力が少しずつ底上げされるらしい。

 体力は一体につき十、魔力は二十ほど増えている計算だ。


 さらに、自然回復に加えて、ゴーレムが空気中の魔素を吸って

 魔力を還元してくれている可能性もある。

 両方の効果が重なっているのだろう。


 地味だけど、確実に強くなっている。

 これ……意外とチートなのでは?


 いや、だからこその“制作数制限”か。

 バランスは取れている……はず。


 意外に「使える」・・・よな?





 コンコンコン。

 一人、手ごたえを感じていると控えめなノック音がした。

 この叩き方はメイドだな。


「なにかな?」


 何の用かと聞くと、「夕食のお時間です」との答え。

 なんと、帰ってから4時間くらい部屋に閉じこもってしまっていたようだ。


「わっ、すぐ行くよっ!」


 慌てて身繕いをして、部屋を飛び出した。



読了・評価。ありがとうございます。


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